リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「タバコ特化代謝産物を介した植物細菌叢相互作用に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

タバコ特化代謝産物を介した植物細菌叢相互作用に関する研究

島﨑, 智久 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23530

2021.09.24

概要

植物の根には、多種多様な根圏細菌からなる植物根細菌叢が形成される。根細菌叢は、植物の生育促進や生物的および非生物的ストレスの緩和など、宿主植物の健全な生育において重要な役割を担う。植物根細菌叢を形成する細菌種の構成は、上位分類ではどの植物種においても高く保存されている一方、下位分類では植物種ごとに異なることから、個々の植物種が進化の過程で自身の生育に適した根細菌叢を形成してきたと考えられる。近年、特定の植物種が生産する代謝物(植物特化代謝産物;代謝 物)が、根細菌叢の形成に影響することが明らかになりつつあるが、これら特化代謝産物に対する細菌の応答や、植物種と根細菌叢との相互作用に関与する細菌遺伝子に関しては依然多くが未解明である。さらに、単一植物種において生産される複数の特化代謝産物が、その種特異的な根細菌叢の形成にどのように関与するかについても明らかではない。本研究では、ナス科植物のタバコ (Nicotiana tabacum) が生産する2つの特化代謝産物 (サントパインおよびニコチン) に着目し、これら代謝物を介したタバコと根細菌叢との相互作用を明らかにすることを目的とした。

1. サントパインおよびニコチンによりタバコ根圏に誘引される細菌種を明らかにするため、これらの化合物をそれぞれ添加した土壌、および代謝物非添加土壌で生育したタバコの根内生菌の比較細菌叢解析を行った。その結果、全ての処理区に共通して増加する唯一の細菌属として、放線菌目に属するArthrobacter属細菌を見出した。そこで、タバコ根およびサントパインまたはニコチンを添加した土壌からArthrobacter属細菌を単離し、16S rRNA遺伝子による系統解析を行ったところ、これら化合物を添加した土壌には多系統のArthrobacter属細菌が生息する一方、タバコ根においては単一系統のArthrobacter属細菌が独占的に生息することを明らかにした。このことから、タバコ根に特徴的なArthrobacter属細菌は単一の植物特化代謝産物ではなく、植物因子の関与も含め、より複合的な要因によりタバコ根に定着することが示唆された。

2. タバコ–Arthrobacter属細菌相互作用に関与する細菌遺伝子を明らかにするため、タバコ根および代謝物添加土壌より単離した細菌株の中から、系統関係および単離環境を考慮して20菌株を選択し、それらの全ゲノム解析を行った。これらに公共データベースから取得したArthrobacter属細菌のゲノム情報を加え、合計99菌株からなる pan-genomeを構築して比較ゲノム解析を行ったところ、Arthrobacter属細菌が3つの亜系統に分化していることが明らかとなった。中でも亜系統AおよびBは、植物内生菌に特徴的な機能遺伝子を多く有していたことから、植物内環境への適応がArthrobacter属細菌の系統分化に影響を与えたと推察された。サントパインまたはニコチン分解に関わる遺伝子群の有無を調べたところ、サントパイン分解遺伝子は亜系統Aに属する細菌株において広く保存されていた一方、ニコチン分解遺伝子は、ニコチンまたはその類縁体が存在する環境下から単離された細菌株においてのみ同定された。このことから、ニコチン分解遺伝子はニコチン存在下において水平伝播することが示唆された。また、タバコ根由来の単離菌株は、サントパインおよびニコチンの分解遺伝子をどちらも有したことから、植物環境への適応に関与する遺伝子群に加え、宿主植物が生産する特化代謝産物のArthrobacter属細菌による代謝能が、本属細菌のタバコ根への定着性に寄与することが強く示唆された。

3. Arthrobacter属細菌のタバコ根への定着に対するサントパインとニコチンの複合的効果を明らかにするため、両化合物の土壌への共添加実験を行った。細菌叢解析においては、単一化合物の添加と同様に Arthrobacter属細菌の増加が認められた。また、単離されたArthrobacter属細菌の多くはタバコ根由来の単離菌と系統的に近縁であったことから、両化合物が複合的に作用することで、タバコ根に特異的な Arthrobacter属系統がタバコ根に誘引されることが示唆された。各単離菌株のサントパインおよびニコチンの分解能を調べたところ、全ての菌株において両化合物の分解遺伝子の存在と分解活性が一致した。また、亜系統Aに属する細菌株に広く保存されているサントパイン分解遺伝子に対し、タバコ根への定着に直接的に寄与すると考えられるニコチン分解遺伝子の欠損変異株を作出した。欠損変異株を用いた競合試験では、野生菌株と比較して変異株においてタバコ根への定着性が有意に低下した。以上のことから、Arthrobacter属細菌におけるサイトパインやニコチンといったタバコ特化代謝産物の代謝能が、本属細菌のタバコ根への定着性に関与することが示された。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る