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書き出し

Enhancing nitrogen-fixing capacity of plant-soil system in rice paddy field with low fertility

岡本, 卓哲 名古屋大学

2023.05.25

概要



報告番号

















Enhancing nitrogen-fixing capacity of plant-soil system in
rice paddy field with low fertility
論文題目




貧 栄 養 土 壌 水 田 に お け る イ ネ・土 壌 の 窒 素 固 定 能 の 増 強
岡本 卓哲

論 文 内 容 の 要 旨
第1章

研究の背景
水田は肥沃度の維 持能 力が高く、その一因と して空気中の窒素 分子 を植物の栄

養 源 と な る ア ン モ ニ ア に 細 菌 が 変 換 す る「 生 物 学 的 窒 素 固 定 (以 下 、窒 素 固 定 )」能 力
の高さが挙げられる。貧栄養土壌かつ窒素肥料の施肥が不十分であるイネ生産現場で
は特に窒素固定の有効な活用が期待される。水田におけるイネ栽培系ではイネ体内、
根圏および土壌中に生息する窒素固定細菌による寄与があるとされ、これらを総合的
に向上することが効果的と考えられる。窒素固定は多くのエネルギーを消費し、炭素
源を多量に必要とすることから体内および土壌では炭素源の種類や量が窒素固定能に
影 響 す る こ と が 想 定 さ れ る 。こ れ ま で に イ ネ の 体 内 で は 茎 部 で 窒 素 固 定 能 が 高 い こ と 、
また品種間で体内の窒素固定能に変異があることが報告されているがその要因や原因
遺伝子には不明が多い。イネの茎における窒素固定は糖蓄積に応じて高まる可能性が
あるが、窒素固定の主体となる菌叢や、茎の中の部位は依然不明である。また窒素固
定はリンを必要としニトロゲナーゼ酵素はモリブデンや鉄を含有しているため、これ
らの要素が窒素固定能に影響することも知られる。水田土壌の窒素固定では、リン肥
料や有機物、鉄等の金属含有資材の施用が窒素固定能を増強するとの報告もあるが、
熱帯土壌を含む幅広い土壌での検証はされていない。
これらの背景をう けて 本研究では、イネ体内 については茎にお ける 窒素固定に
着目し、その品種間差異やメカニズムを炭素利用および窒素固定細菌叢の組成から明
らかにしようとした。窒素固定能の基質の違いと菌叢の関係を明らかにすることを目
指 し た 。 さ ら に 、 窒 素 固 定 能 力 の 高 い Oryza glaberrima の 染 色 体 断 片 置 換 系 統 群
( CSSLs)を 利 用 し 、高 い 窒 素 固 定 能 力 に 関 与 す る 遺 伝 子 領 域 の 同 定 を 試 み た 。ま た 、
土壌については金属元素を含む鋳造副産物を水田土壌に施用した際の窒素固定の向上
効 果 を 評 価 し た 。最 後 に 、肥 沃 度 の 低 い 水 田 の 代 表 例 と し て 、マ ダ ガ ス カ ル に 着 目 し 、
マダガスカルの実用品種の窒素固定能の評価を行うとともに、炭素源とリンを含む現

地で入手可能な堆肥について施用した場合の窒素固定の促進効果を評価しその要因を
解析した。
第2章

イネ茎部の窒素固定の菌叢解析と炭素源の関係
茎 部 の 窒 素 固 定 部 位 を 明 ら か に す る た め 出 穂 期 の イ ネ の 茎 の 基 部 を ¹⁵N₂ガ ス に

暴 露 し 、 微 細 部 位 ご と の ¹⁵N 量 を 解 析 し た 。 そ の 結 果 、 不 伸 長 茎 部 の 外 側 が 窒 素 固 定
の高い部位として機能していることが明らかになった。さらに、不伸長茎部の外側に
は 、 メ タ ン を 利 用 す る メ タ ン 酸 化 細 菌 と 、 Paraburkholderia sp.等 の 糖 を 利 用 す る 細 菌
が多く存在したことから、窒素固定はこれらの細菌がメタンと糖を消費しながら行わ
れ て い た と 考 え ら れ た 。 一 方 で 次 い で 活 性 の 高 か っ た 葉 鞘 で は 、 Paraburkholderia sp.

や Sagittula sp.が 主 体 で あ り 、主 に 糖 類 を 基 質 と す る こ と が 推 察 さ れ た 。こ れ ら の 結 果
より部位により主体となる菌叢やその基質が異なる可能性を示した。
第3章

茎部窒素固定能の品種間差異と遺伝要因
イネの茎の窒素固定活性と糖濃度が異なる品種間の窒素固定細菌叢を調べた

と こ ろ 、 多 く の 菌 叢 は 品 種 間 で 共 通 で あ り 、 Paraburkholderia sp.や Bradyrhizobium sp.
が 主 体 で あ る こ と が わ か っ た 。一 方 で 、窒 素 固 定 活 性 の 高 か っ た O. glaberrima の CG14
で は Kosakonia sp.が 特 異 的 に 高 い 傾 向 が あ る な ど 、 品 種 に 特 有 の 菌 叢 が 存 在 す る こ と
も 示 さ れ た 。 ま た 窒 素 固 定 活 性 に 関 与 す る QTL を 明 ら か に す る た め に O. sativa を 遺
伝 的 背 景 と し 、O. glaberrima 由 来 の 染 色 体 断 片 を 持 つ 2 種 類 の CSSLs を 栽 培 し 、茎 の
窒 素 固 定 活 性 を 評 価 し た 。そ の 結 果 O. sativa 親 品 種 よ り も 高 い 活 性 を 持 つ 系 統 が 存 在
し た 。そ れ ら の 系 統 に お け る O. glaberrima 由 来 の 染 色 体 断 片 置 換 位 置 は 第 2 、6 、7 、
8 、 1 1 、 1 2 染 色 体 の 一 部 に そ れ ぞ れ 存 在 し 、O. glaberrima の 窒 素 固 定 能 の 高 さ は
複数の遺伝要因により制御されている可能性が示された。
第4章

水田土壌の窒素固定に及ぼす鋳造副産物の影響
水田土壌において、鋳 物工程から産出さ れる 5種類の副産物を 日本 の3地点の

水田土壌に施用した場合の窒素固定能への影響を土壌培養実験によってアセチレン還
元 能 (ARA) お よ び

15N

法によって評価した。好気・光所条件と嫌気・暗所条件下の

2条件で評価を行った結果、1種類の資材が好気・光所条件下でセルロースとともに
施用することで窒素固定能の促進効果を示した。この資材は鉄を多く含み、またモリ
ブデンも含むことからこれらの要素が好気・光所条件における窒素固定の促進に関与
する可能性が示唆された。
第5章

マダガスカルの水田栽培系の窒素固定における現地品種と堆肥の効果の評価
貧 栄 養 土 壌 が 優 占 す る マ ダ ガ ス カ ル で 広 く 普 及 し て い る イ ネ 品 種 X265 を 圃 場

栽 培 し 、 生 育 期 間 中 の 窒 素 固 定 活 性 を ARA で 評 価 し た 。 栽 培 期 間 の 総 窒 素 固 定 量 を
ARA の 積 算 値 か ら 推 定 し た と こ ろ 、 X265 は 日 本 の 品 種 北 陸 193 号 よ り も 4 倍 程 度 高

く、低肥沃度の環境に適応している可能性を示すとともに高活性イネ品種の育種素材
として有望であることが明らかになった。また、マダガスカルの中央高地 4 地点の水
田 土 壌 を 用 い て 牛 糞 、 稲 藁 、 ブ サ カ 草 ( Aristida sp.) お よ び 土 壌 を 主 原 料 と し て 生 産
された堆肥や炭素源およびリンの窒素固定能の向上効果を評価した。表層を模した好
気・光所条件と下層を模した嫌気・暗所条件下で土壌培養実験を行った。その結果、
表層条件では炭素とリンが、下層条件では炭素が窒素固定の律速になること、また堆
肥の施用により窒素固定能が促進される可能性が示唆された。一方で、今回土壌培養
の期間ではこの堆肥は十分に分解されていないことも明らかになったため、今後、堆
肥の分解特性などからより効果的に窒素固定を向上できる堆肥の作出法と施用法の確
立が必要と考えられた。
第6章

総合考察・結論
イ ネ 体 内 の 窒 素 固 定 能 を 高 め る 方 法 と し て 、 マ ダ ガ ス カ ル の 現 地 品 種 X265 の

よ う な 茎 の 窒 素 固 定 力 が 高 い 品 種 を 栽 培 す る こ と や 、O. glaberrima 由 来 の 窒 素 固 定 に
関 わ る QTL を 活 用 し た 品 種 開 発 が 考 え ら れ た 。ま た 、茎 部 や 根 部 に 異 な る 菌 叢 が 窒 素
固定に寄与していることから、根におけるメタン酸化細菌や茎における糖利用性窒素
固定細菌を同時に強化することが有効であると考えられる。
鉄を多く含む鋳物工程の副産物は窒素固定に効果がある可能性が示唆された。
実用に際しては、マダガスカルのような遊離酸化鉄を多く含み鉄過剰障害の可能性の
ある土壌を含めて多様な土壌で土壌特性にあった資材の利用が求められる 。また炭素
源やリンの窒素固定能の促進効果を生かす栽培技術が有用であることも示唆された。
本研究の結果をもとに茎など体内の窒素固定量の高い品種や窒素固定を促進できる堆
肥が開発されれば、肥沃度の低い水田での窒素固定量が増加し、コメ収量の増加や農
家の栄養改善につながることが期待される。
結論として、本研究によって、イネの茎の窒素固定は不伸長茎部の外側が高い
こ と 、そ こ で は メ タ ン と 糖 を 利 用 す る 細 菌 が 窒 素 を 固 定 し て い る と 示 唆 さ れ た 。ま た 、
イネ品種間の菌叢解析により品種固有の菌叢がある一方で、多くの細菌の品種間での
共 通 性 を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 O. glaberrima が O.sativa の 窒 素 固 定 能 の 向 上 に 有 効
と思われる染色体部位を同定した。水田土壌の窒素固定能に関しては、鋳造過程副産
物が好気・明所条件下で窒素固定を促進することが明らかとなった。またマダガスカ
ル で は 、 現 地 品 種 の X265 は 窒 素 固 定 能 が 高 く 、 現 地 の 貧 栄 養 水 田 土 壌 で は 堆 肥 の 施
用が窒素固定を促進することを示した。これらの結果は今後、貧栄養水田土壌におい
て、イネと土壌の窒素固定を同時に評価する必要性とそれらの向上の方向性を示唆す
るものである。

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