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大学・研究所にある論文を検索できる 「Soil nitrogen dynamics affected by fine roots of a canopy tree species in a northern hardwood forest in eastern Hokkaido, Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Soil nitrogen dynamics affected by fine roots of a canopy tree species in a northern hardwood forest in eastern Hokkaido, Japan

Nakayama, Masataka 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23946

2022.03.23

概要

窒素は多くの森林生態系において一次生産を制限する要因である。森林土壌に蓄積する窒素の多くは植物が直接利用できない高分子量の有機態窒素であるが、微生物による分解・無機化を経て、低分子量の有機態窒素や無機態窒素へと変換されことで植物に吸収される。植物は細根の周囲の土壌(根圏)の微生物に根滲出物と呼ばれる炭素化合物を供給し、微生物の群集構造を変化させたり、微生物の量や活性を高めたりすることで、有機物の分解・無機化を促進することが知られている(根圏効果)。しかし、根圏効果の駆動要因である根滲出物の研究は、主に草本や稚樹で行われることが多く、林冠木の根滲出物に関する知見は限られている。さらに根滲出物に関する研究は、光合成が盛んな夏季の生育期に行われることが多く、植物の活性が低い冬季の研究は限られる。気候変動下で、特に冬季の気候変動の影響が強く受ける北方広葉樹林の持続可能な管理に向けて、林冠木の細根と土壌窒素動態の関係性を冬季も含めて解明することが重要である。

第一章では、既往研究の整理し、森林生態系における細根と土壌窒素動態の関係性を解明するためには、森林を構成する主要な林冠木において(1)根圏効果を駆動する要因である根滲出物の動態に与える要因を明らかにし、(2)冬季も含めた根圏効果の季節性を明らかにしたうえで、(3)細根による窒素吸収と窒素循環促進効果のバランスを明らかにする必要性を指摘し、本研究の目的を設定した。

第二章では、本研究における調査地である北海道東部の北方広葉樹林の概要を整理し、また調査地で優占する対象樹種ミズナラ(Quercus crispula Blume)に関する情報を整理した。

第三章では、ミズナラ林冠木の根滲出物の量の季節性とその量に影響する要因の解明を行った。その結果、ミズナラの根滲出物量は明確な季節性を示さない一方で、日々の変動が大きいこと、さらに日射量が根滲出物量に強く影響することが明らかとなった。また、落葉後も一定量の根滲出物の放出がみられた。このことから、落葉後も根から炭素が一定量供給されるため、冬季も根の周りでは微生物の量が多く、活動が活発であり、分解・無機化が促進されることが示唆された。

第四章では、ミズナラ林冠木の根圏効果および細根と土壌窒素動態の関係性を落葉後の休眠期も含めて明らかにするために、初冬、初春および盛夏に根圏・非根圏土壌を採取し、微生物群集の解析と土壌酵素活性の測定を行った。その結果、真菌の量は季節を問わず根圏で多く、盛夏は菌根菌、初冬や初春は菌根菌以外の真菌が多くみられた。また、細菌の量は根圏・非根圏で有意な差はみられないが、富栄養性の細菌が季節を問わず根圏で多いことが明らかとなった。さらに土壌窒素動態に関連する酵素活性は季節を問わず根圏で高かった。土壌中の可給態窒素量は初冬や初春では根圏で多かったが、盛夏では根圏・非根圏の有意な差はみられなかった。これは盛夏にはミズナラによる可給態窒素の吸収が多い一方で、落葉後である初冬や初春では吸収が低下するためであると考えられた。これらのことから、ミズナラ林冠木の細根は、根圏効果によって季節を問わず微生物群集に影響を及ぼし窒素循環を促進するが、可給態窒素プールに対しては窒素吸収量とのバランスにより、冬季はプールサイズを増大させ、夏季は縮小させる方向で影響していることが示唆された。

第五章では、第四章で明らかにした細根と土壌窒素動態の現地での実態を1年単位で評価するために、野外における生きた根を用いた現地土壌培養法を開発し、また森林の窒素内部循環における窒素収支から林冠木の窒素吸収量を推定する方法を組み合わせて評価した。さらに現地土壌培養では培養終了時の土壌中の無機態窒素現存量および根圏・非根圏の細胞外酵素活性を測定した。その結果、細根による年間の窒素吸収の推定値は、根圏効果によって促進された窒素の無機化量よりやや多いかほぼ同等であると推定された。また、土壌中の可溶態の有機態窒素量も細根の有無で差はみられなかった。つまり、細根による根圏効果によって無機化が促進されるものの、無機化された窒素は速やかに樹木に吸収され、見かけ上、細根は土壌の可給態窒素の現存量や流亡量に影響しないということが示唆された。

第六章では、第三~五章の結果に基づき、1年単位および各季節におけるミズナラの細根と土壌窒素動態の関係性について、総合的に考察を行った。第三章および第四章の結果から、落葉後でも、ミズナラは地下部への炭素投資によって根圏の窒素循環を促進していることが示唆された。一方で、細根の吸収と窒素循環促進のバランスにより、冬季と夏季ではミズナラの細根が可給態窒素量に与える影響が異なることが示唆された。しかし、第五章の結果から、土壌窒素量への影響の季節的な違いにもかかわらず、吸収と分解・無機化促進効果は1年間というタイムスケールでは絶妙なバランスでつり合いが取れていることが示唆された。地球温暖化による植物の成長期の長期化が報告されているが、本研究の結果から、北方広葉樹林で成長期が長期化することで林冠木の窒素吸収が増加し、現在の吸収と分解・無機化促進のバランスが崩れ、植物間の窒素獲得競争にも影響を及ぼすことが示唆された。

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