新潟県における地域農業構造の類型化と時系列変化の考察―2000年と2015年の比較―
概要
日本の農業構造は2000年に入り,戦後農業を支えてきた世代の高齢化や労働力不足による農業の脆弱化が見られる.特に稲作などの土地利用型農業における高齢化は深刻であり,労働力が衰退してきている.その一方で,2007年から始まった品目横断的経営安定対策へ対応すべく農地集積や集落営農の設立が進んだ.これまでなかなか進まなかった規模拡大が,高齢化による担い手不足や政策対応などにより進みつつある(安藤光義(2012)).このように日本の農業は2000年から現在にかけて大きな変化が見られる.
しかしながら,農業の構造変動は地域によって差が非常に大きく,実態把握には対象地域ごとの分析が必要であり,実際に数多くの分析がなされてきた.農業構造の把握には個々の統計データを用いた分析や,統計データを多変量解析法により分析する方法がある.これまで全国や地域単位での構造分析は多くなされてきたが,県段階での詳細な分析は多く見られない.近年においては,電子媒体による統計データの供給が普及したため,膨大なデータの処理が可能となり,市町村単位のみならず旧市町村や集落単位での分析も比較的容易にできるようになった.日本の地形は海岸部の平野部から山間地まで多様であり,平野部と中山間地域では農業構造が大きく異なる.本稿では,農業地域類型における都市的地域と平地農業地域を平野部と定義し,同類型の中間農業地域と山間農業地域を中山間地域と定義する.市町村単位での構造分析では,同一市町村内において平野部と中山間地域が混在している場合が多く,市町村の特徴を把握するには旧市町村単位での分析が有効である.本研究では,コメの大生産地であり土地利用型農業が盛んで大規模農業も進んできている新潟県を対象に分析を行った.