低アレルゲン性リン酸化抗原による経口免疫寛容誘導機構の解明
概要
研究成果の概要(和文):
本研究では、より安全で有効性の高い経口免疫寛容誘導剤の開発を目指し、低アレルゲン性リン酸化抗原の免疫寛容誘導機構を解明することを目的とした。その結果、蕎麦主要抗原Fag e 2のリン酸化は腸管免疫系における樹状細胞のTLR9の活性化を介してIL-6の産生増加、さらにはTfh由来IL-21の産生増加によりIgA産生が増強されることが示唆された。一方、アレルゲンへのリン酸化はエピトープ部位のマスキングによりIgE結合能が低下し、マスト細胞の脱顆粒反応を抑制させるが、リン酸修飾が少ないペプチド断片では完全な反応抑制にまで至らないことが示唆された。
研究成果の学術的意義や社会的意義
アレルギー疾患に対する治療は未だ確立されていない。近年「食べて治す」という免疫寛容誘導を利用した経口減感作療法が注目されているが、アレルギー原因物質(アレルゲン)を摂取させる方法であるため、アナフィラキシー等の重篤な副反応の誘発リスクがあり、標準的治療法とは成り得ていない。本研究では、ソバ主要アレルゲンのアレルギー性はリン酸化により低減化し、ソバアレルギーモデルマウスに一定期間摂取させたところ、アレルギー反応を効果的に抑制させることを明らかにした。本研究で得られた知見はより安全で有効性の高い経口免疫寛容誘導剤の開発に貢献することが期待される。
研究成果の概要(英文):
The purpose of this study was to elucidate the action mechanism underlying the induction of immune tolerance by phosphorylated antigen with hypoallergenicity. Our results suggest that the phosphorylation of Fag e 2, major buckwheat allergen, resulted in the increment of IL-6 production by activating TLR9 of dendritic cells and the enhancement of IgA production via the increased IL-21 derived from Tfh. On the other hand, the phosphorylation might induce the suppression of degranulation in mast cells owing to the decreased IgE-binding ability via masking of epitope sites; however, it suggests that the degranulation was not completely suppressed by a low degree of phosphorylation.
キーワード: 免疫寛容 アレルギー 分子修飾 リン酸化