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大学・研究所にある論文を検索できる 「性におけるワンストップ・ヘルスケア・スペシャリストとしての助産師の活躍の可能性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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性におけるワンストップ・ヘルスケア・スペシャリストとしての助産師の活躍の可能性

常田, 裕子 大阪大学

2020.09.25

概要

【背景・目的】
日本は少子超高齢社会であり、一億総活躍時代を迎えて一生をいかに健康に過ごすかは国民の大きな関心事で ある。健康日本21など国民運動計画が提唱される一方で、ヘルス・リテラシーは低く、健康に過ごすための情報の入手や評価が十分にできているとは言い難い。助産師は、妊娠・出産という女性のライフイベントでの実践を主としながらも、家族・パートナーを含む支援、様々な世代の性・生殖に関する健康に関する幅広い支援・活躍が期待され、この領域におけるヘルス・リテラシーの向上に大きく貢献できると考える。しかしながら助産師の約85%は病院・診療所に就業するなど偏在し、助産師の社会的認知は十分とは言えない。

本論文では、【研究1】高リスク型ヒトパピローマウィルス(HR-HPV)の感染と性行動との関係を明らかにする研究と【研究2】助産師の職業継続・社会活動における助産師自身のキャリア拠り所(キャリア・アンカー)に関する研究を行い、最後に助産師の社会的活躍の場の拡大について考察した(倫理審査番号:15050-2, 280702,16-30)。

【研究1:咽頭部における高リスク型ヒトパピローマウイルス(HR-HPV)感染と性行動との関係性の探索)】
高リスク型ヒトパピローマウィルス(HR-HPV)の感染は、子宮頸がん、中咽頭がん等の原因となり、疫学研究報告も諸外国では多く、咽頭部HPV 感染の影響要因として性行動様式が詳細に指摘されている。しかし日本では性行動の社会調査自体が難しい現状にある。本研究は、HR-HPV感染の問題意識が一般よりも高いと思われる日本人医療職を対象に、咽頭部HR-HPV感染と性行動の関係性を明らかにすることを目的に、2016年1月~2017年1月に研究協力施設3か所で研究参加に同意を得られた協力者に対し、うがいによる検体採取及び自記式質問紙調査を行った。研究協力者は医療職437名(男性236名、女性171名)、低リスク型HPV感染、性行動未経験等を除外する405名(男性234名女性171名)を分析対象とし、平均年齢は35.2±8.2歳である。咽頭部HR-HPV感染率は4.7%(95%信頼区間:CI:3.0-7.2)であり、男性7.3%(95%CI:4.6-11.3)女性1.1%(95%CI:0.3-4.2)と男性が有意に多かった(p=0.0042)。初回性交年齢は、感染者18.4±1.3歳、非感染者19.7±3.0歳と有意に低かった(p=0.0003)。

今までの性行動をもった人数による感染割合の比較では、様々な有意な関係があり、特に膣性交・口腔性交の人数によるパターンに特徴がみられた。膣性交と口腔性交共に6人以上は12.5%、5人以下は1.7%と有意に多かった(p<0.0001)。また、口腔性交をもった人数が膣性交より多い群では13.7%であり、他2群(ほぼ同じ4.0%、膣性交が多い2.0%)より有意に多かった(p=0.0042)。更に咽頭部HR-HPV感染への寄与を多変量解析で検討した結果では、喫煙(オッズ比「以下OR」8.33, 95%CI: 1.02-68.88)、膣性交・口腔性交人数共に6名より多い(OR:8.87, 95%CI:2.69-29.22)、口腔性交が膣性交より多い群(OR:3.90, 95%CI:1.26-12.00)等であった。今回対象とした人数は医療職対象としては我が国最大規模であり、一般よりも医学知識を持っている集団と考えられるが、うがいによるHPV感染状況の把握や咽頭部HPV感染と性行動との関係性に関する啓発の必要性が示唆された。

【研究2:キャリアの拠り所(キャリア・アンカー:CA)の視点からみた助産師のキャリア選択・マネジメント行動の検討】
キャリアの選択・継続において、仕事の内容と同等以上に重要とされるのがどのような価値観を持ち働くか(CA)と言われている。助産師は以前から開業できる数少ない看護系職種である。本研究では2017年1~3月に分娩取り扱い病院、助産院および教育機関の助産師を対象に自記式質問紙による横断的研究を行った。質問紙配布は88施設619枚、研究参加者262名(回収率42.3%)の内、CAに関する回答不備等を除く238名(有効回答率90.8%)を分析対象とした。所属は、病院177名(74.4%)、教育機関29名(12.2%)、助産院31名(13.0%)であり、CAは生活様式(LS)83名(34.9%)、専門・職能的コンピテンス(TF)39名(16.4%)、保障・安定(SE)32名(13.4%)、奉仕・社会的貢献(SV)25名(10.5%)、自律・独立(AU)と起業家的創造性 (EC)は各12名(5.0%)、純粋な挑戦(CH)10名(4.2%)、経営管理 (GM)1名、2種混合20名、3種混合4名という結果であった。

CAとキャリア選択やキャリアマネジメント行動には、様々な有意な関係がみられた。自分の意志による性教育等を含む院外活動(28.6%)は有意差があり(p=0.0029)、SEは有意に少なく(p=0.0093)、SV(p=0.0069)とCH(p=0.0278)は有意に多かった。また学会員(30.7%)も有意差があり(p=0.0018)、LSは有意に少なく(p=0.0069)、EC(p=0.0051)、CH(p=0.0357)は有意に多かった。また各CAで転職事由や転職した職場に違いが見られ、例えばSVは病院から助産院へのキャリア・チェンジ事由や大学院進学事由の転職が多く、開業助産師も多かった。一方、生活と仕事の最大限のバランスを求めるLSでは留学・国際協力活動や実践事由の転職は有意に多く、キャリア・チェンジ事由、特に病院・助産院間の転職は有意に少なかった。今回、LSは経験年数6~20年目が全LSの 66.3%を占め、既婚子どもありが有意に多かったこともこの回答に繋がったと考えられる。ライフコースにおける CAの変化(集約)が助産師においてどのように観察されるかは今後の研究課題と考える。看護系職種におけるCAの検討においてすべてのCAを検討するフルスケール解析報告は少なく、本報告は助産師を対象とした特色だけでなく、解析方法や看護職におけるCAの捉え方についても新たな提案ができたと考える。

【総括】
医療職における高リスク型ヒトパピローマウイルス(HR-HPV)感染と性行動の関係を我が国で初めて大規模調査により明らかにし、その啓発の必要性を示した。また離職が問題となる看護職において、CAの観点からキャリア選択とキャリアマネジメントをフルスケールで検討し、そのパターンを明らかにした。

これらの結果から、助産師は安全な性行動の社会的ファシリテータとして活躍できる可能性、自らのキャリア・アンカーを活かす形でより社会的に活躍できる可能性を示したと考える。

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