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新規老化関連microRNAであるmiR-3140-3pは悪性胸膜中皮腫を抑制する

山本 佑樹 広島大学

2020.03.23

概要

新規⽼化関連 microRNA である miR-3140-3p は悪性胸膜中⽪腫を抑制する

平成 28 年度⼊学 細胞分⼦⽣物学研究室 ⼭本 佑樹
主指導教員 ⽥原 栄俊
【研究背景】

正常細胞は、⼀定回数細胞分裂を繰り返すと不可逆的に増殖を停⽌し、細胞⽼化を引き起こす
[L.,Hayflick et al. Exptl. Cell Res.,(1961)]。また、がん遺伝⼦ Ras などの活性化に代表される過剰なストレ
スも、細胞に不可逆的な増殖停⽌を引き起こすことが分かっている [Serrano, S. et al Cell, (1997)]。このた
め、細胞⽼化は正常細胞が持つがん化に対する防御機構の⼀つとして考えられている。我々は細胞⽼化の誘
導因⼦として、マイクロ RNA (miRNA) に注⽬し研究を⾏なっている。miRNA は、ゲノムから転写され
る small non-coding RNA で、ヒトでは約 3000 種類同定されている。1 種類の miRNA は 100 種類以
上の遺伝⼦を標的とし、標的 mRNA の分解や翻訳抑制を介してタンパク質の発現を負に制御する。そのた
め、miRNA の発現変動は、細胞増殖や細胞死、細胞⽼化など様々な⽣命現象に関わる。⼀部の miRNA
は細胞⽼化に伴い発現量が増加することが知られており、このような miRNA を⽼化関連 miRNA
(Senescence-Associated microRNA; SA-miRNA) と呼ぶ。また、⼀部の SA-miRNA の発現量はがん細胞で
減少していることが知られており、我々は SA-miRNA の発現量を補充することで、がん細胞の⽼化プログ
ラムを再起動させ、腫瘍を抑制しようと考えている。これまでの研究により、miR-22 を SA-miRNA とし
て同定しており、CDK6 や SIRT1 の発現抑制を介して乳がん・⼦宮頸がん細胞に抗腫瘍効果を⽰すこと
を報告している。
【研究⽬的】

本研究では、がん幹細胞や抗がん剤耐性がん細胞など多様ながん細胞に増殖抑制効果を⽰す SA-miRNA
を同定することを⽬的とする。さらに、同定した SA-miRNA から臨床応⽤可能な核酸医薬シーズを⾒出
し、その腫瘍抑制メカニズムについて明らかにする。最終的に、SA-miRNA を抗腫瘍核酸医薬としてがん
治療へと臨床応⽤することを⽬指す。
【研究⽅法】

1. 細胞⽼化を評価する機能的スクリーニング系を構築する。
2. 2028 種類からなる miRNA library を正常線維芽細胞にトランスフェクションし、構築したスクリー
ニング系を⽤いて、細胞⽼化の表現型を⽰す SA-miRNA を網羅的に同定する。
3. がん細胞の⽣存率を指標にスクリーニングを⾏い、強い増殖を抑制する SA-miRNA を同定する。
4. 同定した SA-miRNA について、in vivo での腫瘍抑制効果の評価、標的遺伝⼦の解析を⾏う。
【実験結果】
1. 強い増殖抑制効果を⽰す SA-miRNA の同定

細胞⽼化の表現型である細胞の増殖停⽌と扁平肥⼤化を細胞数と細胞の⼤きさにより評価する、新たな⽼
化スクリーニング系を構築した。このスクリーニング系を⽤いて、以前当研究室で報告した miR-22 より
も強く⽼化表現型を⽰した miRNA を SA-miRNA 候補として 579 種類同定した。次にこれら SAmiRNA 候補について、細胞⽼化マーカーとして広く⽤いられる SA-β-ガラクトシーゼ活性を評価し、349
種類の SA-miRNA を同定した。続いて、これら 349 種類の SA-miRNA ががん細胞に与える影響を検討
するため、7 種のがん細胞株を⽤いて細胞⽣存率を評価した。その結果、7 種全てのがん細胞株に対して有
意に増殖抑制効果を⽰す SA-miRNA を 2 種類同定した。その中でも、より強い腫瘍抑制効果を⽰した
miR-3140-3p について解析を進めた。
2. 悪性胸膜中⽪腫に対する miR-3140-3p の腫瘍抑制効果

抗がん核酸医薬として miR-3140-3p を開発していく上で、本研究では数あるがん種から悪性胸膜中⽪腫
に着⽬した。悪性胸膜中⽪腫は胸腔内に発⽣する腫瘍であり、外科的⼿術による切除が困難かつ有効な薬剤
も乏しいことから、⾮常に難治である。さらに、悪性胸膜中⽪腫は発症までの期間が⾮常に⻑く、今後の患

者数増加が懸念される[Murayama, T. et al, Am. J. Ind. Med. (2006)]。以上のことから、悪性胸膜中⽪腫に
対する抗腫瘍薬を開発することは臨床上⾮常に意義があると考えられ、miR-3140-3p を悪性胸膜中⽪
腫に対する抗がん核酸医薬として応⽤していくことを⽬指した。まず、悪性胸膜中⽪腫における miR3140-3p の発現量を解析した。臨床検体を⽤いた検討により、⾮がん組織と⽐較して悪性胸膜中⽪腫にお
いて miR-3140-3p の発現量が低下していた。次に、in vivo における miR-3140-3p の腫瘍抑制効果を検
討した。その結果、悪性胸膜中⽪腫細胞をマウス胸腔内に移植したゼノグラフトマウスモデルにおいて、
miR-3140-3p は腫瘍増殖を顕著に抑制し、マウスの⽣存率を向上させた。これらのことから、miR-31403p の発現を補充することで悪性胸膜中⽪腫の腫瘍増⼤を抑制することが⽰唆された。
3. miR-3140-3p の標的遺伝⼦探索

標的遺伝⼦候補の絞り混みにはマイクロアレイ解析および in silico 解析を⽤いた。まずマイクロアレイ解
析の結果から、miR-3140-3p によって TIG-3 細胞および悪性胸膜中⽪腫細胞株 EHMES-10, MSTO211H, Meso-9 において共通して発現が低下した遺伝⼦かつ TIG-3 細胞において⼗分に発現している遺伝
⼦を絞り込んだ。さらに in silico 解析により miR-3140-3p の標的遺伝⼦であると予測された遺伝⼦を絞
り込み、20 種類の遺伝⼦を標的遺伝⼦候補として同定した。これら 20 遺伝⼦に対する siRNA を⽤い
て、再度⽼化スクリーニングおよびがん細胞の⽣存率の評価を⾏なった。その結果、miR-3140-3p の標的
遺伝⼦候補として、ASF1B, PRC1, SGO1 が同定された。さらに、同定された標的遺伝⼦の悪性胸膜中⽪腫
での発現量を qPCR により解析した。その結果、ASF1B が悪性胸膜中⽪腫で発現量が低下しており、
miR-3140-3p の発現量と逆相関していた。以上のことから、miR-3140-3p は ASF1B を標的とすることで
細胞⽼化誘導および悪性胸膜中⽪腫の抑制に寄与することが⽰唆された。
【総括】

本研究では、強い抗腫瘍効果を⽰す SA-miRNA を同定するため、まず⽼化表現型を指標としたハイコン
テントスクリーニングを⾏なった。その結果、miR-22 よりも強く⽼化表現型を⽰した SA-miRNA を 349
種類同定した。さらに、様々ながん細胞に対して増殖抑制効果を評価し、いずれのがん細胞に対しても強い
抗腫瘍効果を⽰す miRNA として miR-3140-3p と miR-657-3p を同定した。その中でも本研究では、より
強く細胞増殖を抑制した miR-3140-3p に着⽬し、悪性胸膜中⽪腫に対する抗腫瘍核酸医薬として応⽤しよ
うと試みた。その結果、miR-3140-3p は悪性胸膜中⽪腫で発現が低下しており、miR-3140-3p 発現の補充は、
悪性胸膜中⽪腫の腫瘍増⼤を抑制することが⽰された。また、標的遺伝⼦解析の結果、miR-3140-3p は
ASF1B を標的とすることで、正常細胞に細胞⽼化を誘導し、悪性胸膜中⽪腫の細胞増殖を抑制することが明
らかとなった。
以上のことから、miR-3140-3p は悪性胸膜中⽪腫に対する抗がん核酸医薬としての応⽤が期待される。現
在はラットおよびサルを⽤いた⾮臨床試験を実施しており、今後臨床治験を進めていくことで、miRNA 型
抗がん核酸医薬を⽤いた悪性胸膜中⽪腫に対する新規治療法を確⽴したい。

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