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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of novel drug-releasing glass ionomer cements using nanoporous silica [an abstract of entire text]」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of novel drug-releasing glass ionomer cements using nanoporous silica [an abstract of entire text]

遠藤, 諒俊 北海道大学

2022.03.24

概要

矯正歯科治療においてバンドを構成要素とした装置が多く用いられている。特に、小児の矯正治療ではバンドを使用した固定式装置が多用されている。しかし、小児の幼若永久歯は、大人の永久歯に比べて、歯質が脆弱である。また、バンドはグラスアイオノマーセメント(GIC)で歯に接着されることが多いが、GIC はセメントとエナメル質の間にマイクロリーケージが生じやすいことが報告されている。また、バンド等の矯正装置は口腔清掃良の要因の一つでもある。これらはカリエスリスクの要因ともなる。実際に、矯正治療後の歯にはう蝕やホワイトスポットの発生が報告されている。そのため、矯正治療中のカリエスリスクを低減することは矯正歯科治療を行う上で必要不可欠である。そこで私たちは、治療中のう蝕の予防・抑制のため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)をもつ新しい歯科用接着材の開発を目指した。開発にあたり、私たちはナノポーラスシリカ(NPS)に注目した。NPS は医療分野において DDS 応用を検討されている材料である。この NPS を GIC に配合したセメント(GIC-NPS)を使用することで、薬剤放出機能を付与することを考えた。本研究では、新規薬剤放出性接着材の開発に向け、GIC-NPS を用いて検討を行った。

第一に、カチオン性色素であるローダミン B を使用して視覚的に GIC-NPS への分子の取り込み、放出、再取り込み能について調べた。NPS の粒子径と細孔径が、それぞれ 3.0 μm と 4.0 nm、3.0 μmと 2.0 nm、0.5 μm と 2.0 nm の 3 種類を使用した。NPS を GIC に 5.0 wt%の濃度でそれぞれ混合し GIC-NPS(GIC-NPS3-4,GIC-NPS3-2,GIC-NPS0.5-2)を調製した。色素取り込み・放出能、再取り込み能を評価するために厚さ 1.0 mm、直径 10.0 mm の試験片を、機械的特性を評価するために高さ10.0 mm、直径 6.0 mm の試験片を用意した。また、GIC 単体の試験片も作製して、コントロールとした。色素取り込みは、GIC-NPS3-4、GIC-NPS3-2、GIC-NPS0.5-2 を 1.0 wt% ローダミン B 水溶液に 37.0 ℃で 24 時間浸漬することで行った。取り込み後の GIC-NPS をそれぞれ 5.0 mL の蒸留水に37.0 ℃で 24 時間浸漬した。その後、溶液から取り出し、新しい蒸留水に再度浸漬するというサイクルを 28 日間行った。それにより、得られた上澄み液の吸収スペクトルを紫外可視分光光度計で測定し、日ごとに放出された色素の量を評価した。28 日後、ローダミン B の再取り込み能を評価するために、GIC-NPS3-2 および GIC-NPS3-4 の試験片を再び 1.0 wt% ローダミン B 水溶液に 37.0 ℃で 24時間浸漬し、同様に作成した上澄み液より放出された色素の量を測定した。機械的特性の評価のため、万能試験機を用いて、GIC-NPS3-4、GIC-NPS3-2、GIC-NPS0.5-2 の各圧縮強度を測定した。クロスヘッドの速度は 1.0 mm/min とした。試験結果は、Steel-Dwass 検定を用いて統計的に分析した。すべての GIC-NPS は 28 日間色素を放出し、色素放出量は孔径が小さくなるにつれて増加したが、NPSの粒子径は色素放出量に影響しなかった。さらに、GIC-NPS はローダミン B を再取り込みが可能であり、再取り込み後の GIC-NPS による色素の放出量は初回取り込み時の放出量とほぼ同等であった。また、NPS の種類にかかわらず GIC-NPS の圧縮強度は GIC のみと比較して有意差はなかった。これらの結果より、NPS の含有量が 5.0 wt%の場合、機械的強度を変化させることなく、NPS の細孔径を調整することで、カチオン性分子の取り込み・放出の制御をできることが示唆された。この結果を踏まえ、カチオン性抗菌剤を GIC-NPS に保持させて抗菌効果の検討をすることとした。

第二に、カチオン性抗菌剤であり、洗口液等にも使用されている塩化セチルピリジニウム(CPC)を使用し、GIC-NPS への薬剤の取り込み、放出、再取り込み能および抗菌効果について評価した。抗菌試験の対象としてう蝕の原因菌として一般的に知られているストレプトコッカスミュータンス(S.mutans)を用いた。粒径が均一で細孔径の異なる 2 種類の NPS(3.0 μm 4.0 nm および3.0 μm 2.0 nm)を用いて、NPS 添加量 10.0 wt%の GIC-NPS(GIC-NPS3-4 および GIC-NPS3-2)を調製した。CPC の取り込み・放出能、再取り込み能および抗菌効果の評価に、高さ 1.0 mm、直径10.0 mm の試験片を、機械的特性の評価に、高さ 10.0 mm、直径 6.0 mm の試験片を作製した。コントロールとして GIC 単体の試験片も作製した。また、作製後の試料の表面性状を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。CPC の取り込み・放出能、再取り込み能の評価のため、GIC-NPS3-4 およびGIC-NPS3-2 の試料を 3.0 mL の 1.0 wt%CPC 溶液に 37.0 ℃で 24 時間浸漬し、その後、溶液から取り出し、新たな蒸留水に再度浸漬するというサイクルを 21 日間行った。得られた上澄み液の吸収スペクトルを、紫外可視分光光度計を用いて測定し、放出された CPC の量を評価した。さらに、上澄み液での抗菌試験を行った。抗菌試験では S.mutans の菌株(ATCC55677)を Brain Heart Infusion(BHI)培地で 24 時間培養し、培地の光学濃度を分光測光法で測定、その光学濃度が 1.0になるように培地を希釈した。得られた培地をさらに 10.0 倍に希釈し、各実験に使用した。調整した S.mutans の培地から 1 白金耳を、上澄み液 1.0 ml とともに 5.0ml の BHI 液体培地に加えた。上澄み液は 3 日目、5 日目、7 日目、14 日目、21 日目のものをそれぞれ使用した。コントロールとし て、BHI 培地に上澄み液の代わりに蒸留水 1.0 ml を加えたものも試験した。24 時間後に培養液の 濁度を測定し、抗菌効果を評価した。また、CPC の再取り込み能の評価では、GIC-NPS3-4 を用い、上澄み液で抗菌効果を認めた 14 日間で再取り込みを行うこととした。上記の方法にて CPC の取り込み、放出を 14 日間行った GIC-NPS3-4 の試験片を再度 1.0 wt% CPC 溶液に 37.0 ℃で 24 時間浸漬し、その後、試験片を取り出し新しい蒸留水に浸漬するというサイクルを 14 日間行った。これにより、得られた上澄み液の吸光度を測定し、再取り込み後の CPC の量を評価した。抗菌試験では、1 試験あたり 3 個の試験片を用いた。試験片にはそれぞれ、CPC 放出開始から 3 日目、5 日目、7 日目、10 日目、14 日目のものを用いた。再取り込み後の抗菌試験でも同様の日数のものを用いた。作成した培地の濁度を 24 時間後に測定し、抗菌効果を評価した。また、CPC を取り込んでいない GIC-NPS3-4 の抗菌試験を行いコントロールとした。機械的特性の評価では、GIC-NPS3-4 および GIC-NPS3-2 の試験片について、機械的性質を評価するため圧縮試験および接着強度試験を行った。両試験とも、万能試験機を用いた。圧縮試験では、クロスヘッドの速度を 1.0 mm/min に設定した。接着強度試験では、洗浄・トリミングした牛歯をアクリル樹脂に埋め込み、エナメル質を露出させ、#140 から#3000 まで研磨し、研磨面に GIC-NPS を接着して剪断試験を行った。接着強度試験での、クロスヘッドの速度 0.5 mm/min とした。また、両試験のコントロールとして GIC 単体を用いた。CPC 放出量の評価より、GIC-NPS3-4 は 21 日間、GIC-NPS3-2 は 7 日間、CPC を放出した。抗菌試験において、GIC-NPS3-4 が 14 日間抗菌効果を認め、また CPC を再取り込みさせた 後の GIC-NPS3-4 でも同様に 14 日間抗菌効果を認めた。圧縮試験及び接着強度試験より、GIC-NPS圧縮強度と接着強度は、NPS の種類によらず GIC 単体との有意差はなかった。以上の結果か ら、NPS の含有量を 10.0 wt%とすることで、機械的強度を変化させることなく、GIC に 14 日間の継続的な抗菌効果を付与することができた。また、GIC-NPS は CPC を再取り込みし、放出することが可能であり、再取り込みを合わせると抗菌効果を 28 日間維持することが可能であった。本研究の結果から、NPS は新規薬剤放出性接着材の開発に有用であることが示された。

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