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書き出し

大腸菌膜内切断プロテアーゼRsePが有する新奇生理機能の解明

横山, 達彦 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24449

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

大腸菌膜内切断プロテアーゼ RseP が有する新奇生理機能の解明

氏名

横山達彦

序論
生命の最小単位である細胞にとって、生体膜は自己と外界を隔てる物理的障壁であるの
みならず、物質交換など多彩な生体反応が起こる場であり、また外界と情報をやりとりする
ためのインターフェイスでもある。これらの役割を主に担うのが、生体膜に数多く存在する
膜タンパク質である。細胞はこれら膜タンパク質の機能や量を、外界の環境や細胞の状態に
応じて適切に制御しなければならない。このような制御のメカニズムについては不明な点
も多いが、近年の様々な研究成果から、プロテアーゼによる膜タンパク質の切断・分解が、
その重要な一翼を担っていることが明らかにされつつある。
IMP(Intramembrane protease;膜内切断プロテアーゼ)は、生体膜内部という疎水的な環
境で、膜タンパク質を加水分解するユニークなプロテアーゼである。IMP はあらゆる生物種
で高度に保存されており、多様な細胞イベントに関与している。本研究は、IMP に属する
S2P ファミリープロテアーゼの中で、最も研究が進んでいるものの一つである、大腸菌 RseP
を対象としたものである。本研究の目的は、大腸菌 RseP が有する未同定の切断基質を特定
し、その切断に如何なる生理的な意義があるかを明らかにすることで、S2P ファミリープロ
テアーゼの基質認識・切断機構と細胞内機能の理解を推し進めることである。
本論文の構成は次のとおりである。第1章では、RseP が SMP(Small membrane protein;
約 50 アミノ酸残基以下の一回膜貫通タンパク質)を切断しうることを実証し、さらに RseP
が SMP の切断を介して SMP の機能を制御しうることを明らかにした。第2章では、プロ
テオーム解析を用いて RseP の基質を探索し、RseP の新たな生理基質として FecR を同定し
た。さらに RseP が FecR の切断を介して、細胞の鉄取り込みを担う遺伝子群の転写制御に
関与することを明らかにした。第3章では、第2章で見出した新奇基質 FecR が、細胞内で
多段階の切断を受けることを見出し、その切断制御機構の解析に取り組んだ。

第1章 RseP による多様な SMP の切断とその生理的意義
大腸菌 RseP は (1) RseA の切断を介してσΕ表層ストレス応答に必須な役割を果たす、
(2) signal peptides の切断を介して膜の品質管理に寄与する、という二つの生理機能を有する

ことが明らかにされている。RseP はこれら以外にも未知の基質・機能を有していると考え
られてきたが、これまでに見出されている基質には明らかなコンセンサス配列や共通モチ
ーフが存在しないため、基質アミノ酸配列の情報を元に生理基質を予測することは困難で
ある。RseP はペリプラズム領域の小さな II 型(Nin-Cout)一回膜貫通タンパク質を特異的に
認識して切断すると考えられていることから、第1章ではペリプラズム領域をほとんど持
たないタンパク質群として SMP に着目し、RseP が SMP を切断する可能性を検証した。
SMP モデル基質を用いて行なわれた in vivo でのスクリーニングの結果、RseP によって切
断を受けうる SMP を 12 種類同定した。さらに、当研究室で既に解析された 2 種類の SMP
を含む 14 種類の SMP について、in vivo および in vitro でその切断を検証し、RseP が生理的
な環境でも SMP を切断していることを示唆した。また、それら SMP のうち、内在性の toxin
である HokB について詳細な解析を行い、RseP が HokB を切断することで、その毒性等の
機能を抑制しうることを示した。HokB を発現した細胞は休眠状態となり、抗生物質への感
受性が低下したパーシスター細胞となることが報告されていることから、RseP は HokB の
切断を介して細胞のパーシスター状態の制御に関与している可能性がある。
以上の結果は、RseP が SMP を切断すること、さらにはその切断を介して SMP の機能を
制御しうることを示すものである。細胞内における SMP の安定性や分解についてはほとん
ど明らかになっておらず、本研究は SMP の研究に新たな視点を供するものである。また、
S2P ファミリープロテアーゼは幅広い生物種に保存されており、SMP も大腸菌からヒトに
至るまで多様な生物種で見出されている。S2P ファミリープロテアーゼによる SMP の切断
は、広く種を跨いで存在する SMP の機能制御機構の一つかもしれない。

第2章 RseP による FecR の切断と、その切断を介した鉄取り込みの制御
第1章では基質探索の対象を SMP のみに絞っていたが、SMP 以外にも RseP によって切
断を受ける膜タンパク質は存在する可能性がある。そこで第2章では、京都大学薬学部の石
濱泰教授のグループとの共同研究によるプロテオミオクス解析によって、全膜タンパク質
を対象として RseP の基質探索を行った。プロテオミクス解析の結果、RseP の機能欠損に伴
って同一のオペロン(fec オペロン;鉄取り込み系の一つである Fec システムを構成する遺
伝子がコードされたオペロン)にコードされている 3 種類の膜タンパク質(FecA、FecD、
FecE)の蓄積量が大きく低下することを見出した。RseP が fec オペロンの転写制御に関与
する可能性を考え、fec オペロンの発現レポーター等を構築して解析を進めた結果、鉄クエ
ン酸錯体シグナルに依存した fec オペロンの転写活性化には、RseP のプロテアーゼ活性が
必要であることが明らかとなった。fec オペロンの転写は alternative σ factor である FecI に
よって制御されており、さらにこの FecI の活性は、一回膜貫通タンパク質 FecR によってコ

ントロールされていると考えられている。
これまでに同定された RseP の切断基質と同じく、
FecR は II 型の一回膜貫通タンパク質であるため、RseP が FecR の切断を介して、fec オペロ
ンの転写活性化に関与している可能性が考えられた。そこで FecR 由来のモデル基質を新た
に構築し、それを用いて FecR タンパク質の細胞内動態を解析した。その結果、(1) FecR が
内膜において連続的な3段階の切断を受けること、(2) そのうち 2 段階目の切断が鉄クエン
酸錯体シグナル依存的生じること、(3) RseP は 3 段階目の最終切断を担い、そこで生じた
FecR 断片が FecI を活性化すること、を明らかにした。

第3章 鉄クエン酸錯体シグナルに応答した FecR の連続的切断
第2章では、2 段階目の切断こそが、以降の FecR の連続的切断とそれに伴う FecI 活性化
のトリガーであることを明らかにしたが、肝心の 2 段階目の切断が如何にして制御されて
いるかは不明であった。そこで第3章では、この 2 段階目の切断がどのような機構でコント
ロールされているかを解明するべく、
FecR の細胞内における動態をより詳細に調べた。
FecR
由来のモデル基質を用いた解析の結果、FecR の 1 段階目の自己切断は細胞質で起こり、さ
らにそれにより生じる N 末端側断片 CL(a)と C 末端側断片 C-CL(a)が会合することが示唆さ
れた。FecR は Tat システムを介して膜挿入されることが最近報告されている。そこで、tat
変異株を用いて FecR の膜挿過程の解析を行った結果、C-CL(a)は CL(a)が膜に挿入されるの
と共役してペリプラズムへ「ヒッチハイク」輸送される可能性が示唆された。さらに、CCL(a)が CL(a)の切断に対して抑制的に働くことや、C-CL(a)が鉄クエン酸錯体のシグナルに
応答して分解されることを見出した。これらの結果・知見に基づいて、CL(a)の 2 段階目切
断は C-CL(a)が CL(a)を保護することによって抑制されており、鉄クエン酸錯体のシグナル
によってそれが解除されているとの仮説を提唱した。また、CL(a)の分解を担うプロテアー
ゼの同定にも取り組み、生化学的な解析の結果から、ペリプラズムに存在するセリン・シス
テインプロテアーゼであることが示唆された。
第2章および第3章は、RseP の新たな生理基質・機能を明らかにしたものであるが、そ
れだけには留まらず、鉄取り込み系の研究としても、長年ミッシングリンクとされてきた
Fec システムのシグナル伝達機構の全体像を明らかにしたものである。Fec システムは大腸
菌のみならず、グラム陰性細菌に広く保存された鉄取り込み系であり、病原性にも関わるこ
とが近年明らかにされつつある。従って本研究は、その病原性発現機構の解明や治療にも貢
献しうるものと期待される。 ...

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