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大学・研究所にある論文を検索できる 「ABC蛋白質のATP共役機構と新規生理的役割に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ABC蛋白質のATP共役機構と新規生理的役割に関する研究

二股, 良太 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23953

2022.03.23

概要

ATP-Binding Cassette (ABC)蛋白質は、ATPを利用して膜を介した物質の輸送を行う輸送酵素蛋白質ファミリーである。その機能単位は、6回膜貫通ヘリックスから構成される膜貫通領域 (TMD)と細胞質側のヌクレオチド結合領域 (NBD)が交互に2回繰り返された構造を有する。ヒトでは48種類の遺伝子が同定されており、半分以上のメンバーが様々な疾患の発症と関連することが報告されている。しかし、未だ多くのABC蛋白質がどのような生理的役割を担っているか、それらの機能破綻がどのように疾患の発症と関連するのかについては明らかになっていない。また、ABC蛋白質の分子機構についても重要な点が解明されていない。構造生物学的解析から、ABC蛋白質はATP加水分解依存的に分子全体を大きく構造変化することで基質を輸送することが明らかにされてきた。しかし、基質輸送に伴う構造変化において、ATPが担う役割については議論が分かれている。そこで本研究では、ABC蛋白質のATP共役機構に着目した分子機構の解明、および新規生理的役割の探索を行った。

ABCB1は真核生物で最初に同定されたABC蛋白質であり、ABC蛋白質のモデルとして基質輸送機構を解明すべく数多くの研究が行われてきた。第一章では、ABCB1を用いて基質輸送に伴う構造変化におけるATPの役割を解析した。構造生物学的研究から、ABCB1はTMDが細胞内側に開いて2つのNBDが解離した内向き構造と、TMDが閉じてNBDが二量体化した外向き構造を交互に繰り返すことで基質を輸送することが明らかにされてきた。しかし、基質輸送に伴う構造変化の駆動力となるのが、ATPの結合あるいは加水分解のどちらであるかは未だ議論が分かれている。従来の研究では、精製ABCB1を界面活性剤ミセルや人工脂質二重膜に再構成し、分子機構の解析が行われてきたが、非生理的な膜環境中では、ABCB1が細胞膜中とは異なる挙動を示す可能性が懸念される。そこで本章では、生細胞膜中でのABCB1の構造変化を分子内蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)を用いて評価することで、ABCB1の構造変化におけるATPの役割を解析した。ABCB1の内向き構造と外向き構造ではNBD間の距離が大きく変化するため、2つのNBDのC-末端側にそれぞれ異なる蛍光蛋白質を融合したFRETプローブ型ABCB1 (ABCB1-FRET)を作製した。培養細胞にABCB1-FRETを発現させたところ、輸送基質を添加していない条件では低いFRET効率を示し、輸送基質の添加によってFRET効率の上昇が認められた。この結果から、分子内FRETを用いることで生細胞膜中でのABCB1の構造変化を検出できることがわかった。次に、ATPを結合できないABCB1-FRET変異体を作製し、FRET効率への影響を解析した。その結果、ATP非結合型変異体は低いFRET効率の状態で輸送サイクルが停止することが示された。以上の結果から、ATP結合は内向き構造から外向き構造への構造変化を促進することが強く示唆された。次に、ATP加水分解ができない変異体ABCB1-FRETを作製し、FRET効率への影響を解析した結果、高いFRET効率の状態で停止することが示された。さらに、2か所存在するATP結合部位のうち、片方でもATP結合ができないと高いFRET効率の状態で停止することが示された。以上の結果から、2分子のATP加水分解によってABCB1は外向き構造から内向き構造へ戻ることが示唆された。さらに、低濃度の細菌毒素で細胞膜に孔を開けて細胞内ATPを洗い流したセミインタクト細胞を用いて解析を行ったところ、変異体解析を支持する結果に加え、ATP加水分解後にγ-リン酸が放出されることで外向き構造から内向き構造への構造変化が起こることが示唆された。

第二章では、コレステロール輸送型ABC蛋白質であるABCA1が担う新規生理的役割の探索を行った。ABCA1が高密度リポタンパク質 (HDL)の産生に必須であることや、血中HDL濃度が心血管系疾患の発症リスクと負に相関することから、心血管系疾患の予防因子として注目されてきた。しかし、近年になってABCA1の生理的役割が多岐にわたることが報告され、心血管系疾患の予防作用だけでないABCA1の機能に対する関心が高まっている。そこで、本研究では脊椎動物のモデルとしてメダカを用いてABCA1が担う新規生理的役割の探索を行った。メダカABCA1オルソログAbca1aのcDNAをクローニングし、哺乳培養細胞での異種発現系により機能解析を行ったところ、哺乳類のABCA1と同様にHDL産生活性を有することが示された。さらに、Abca1a 遺伝子欠損(Abca1a-/- )メダカを樹立したところ、血中総コレステロールおよびリン脂質濃度の低下が認められた。血中脂質濃度の低下は血中HDL濃度の低下に起因すると考えられ、メダカABCA1Aがin vivoにおいても哺乳類のABCA1と同様の機能を有することが示唆された。さらに、Abca1a-/-メダカの表現型を詳細に解析したところ、排卵異常によって雌性不妊となることが示唆された。また、Abca1a-/-メダカでは卵巣内の性ホルモン濃度は正常であったことから、性ホルモン非依存的に排卵異常が生じたことが示唆された。さらに、Abca1a-/-メダカの卵巣ではコレステロールの過剰蓄積が認められた。以上の結果から、ABCA1Aの欠損により卵巣内にコレステロールが過剰に蓄積することで排卵異常が惹起された可能性が示された。これらの結果は、脊椎動物においてABCA1が排卵の制御に関与する可能性を示唆するものである。

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