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大学・研究所にある論文を検索できる 「大腸菌S2Pファミリー膜内切断プロテアーゼRsePの基質選別・認識機構」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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大腸菌S2Pファミリー膜内切断プロテアーゼRsePの基質選別・認識機構

三宅, 拓也 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24075

2022.05.23

概要

・研究背景
IMP (Intramembrane protease; 膜内切断プロテアーゼ)は脂質二重膜内部に活性部位を持つプロテアーゼの一群で、Rce1、Presenilin/SPP (Signal Peptide Peptidase)、rhomboid、S2P (Site-2 protease)の4 つのファミリーに分類される。Rce1 を除く IMP は膜貫通ヘリックスを切断することで膜の品質管理や細胞のストレス応答、細菌の芽胞形成や毒性発現など、多岐に渡る生命現象に関わる。IMP による基質切断はアルツハイマー病やパーキンソン病などヒトの病気にも関わることもあり様々な面から研究が進められているが、その基質認識や切断機構には未だ不明な点も多い。
大腸菌 S2P プロテアーゼである RseP はσE 経路表層ストレス応答に関わるプロテアーゼである。表層ストレスに応答する転写因子σE は、抗σ 因子である1 回膜貫通タンパク質RseA により不活性化を受けている。細胞が表層ストレスに晒されると、RseA がペリプラズム領域における DegS による切断、続いて膜貫通領域(TM)内部で RseP による切断(膜内切断)を受け、それにより膜から遊離したRseA の細胞質断片が細胞質プロテアーゼによりさらなる分解を受けることで σE が活性化され、ストレスに対応するプロテアーゼやシャペロンの発現を誘起する。RseP は全長の RseA を直接切断できず、DegS切断を受けた分解中間体 RseA のみを切断する。その制御メカニズムとして、RseP のペリプラズム領域に存在する2つの PDZ ドメインが、全長 RseA のペリプラズム領域と立体障害を起こすサイズ排除フィルターとして機能することで基質を選別するというモデルが当研究室の先行研究にて報告された。また近年、RseP の膜ドメイン内部の活性触媒部位近傍に挿入された 2 つの β-hairpin 構造が、基質TM と直接相互作用することで基質認識に関わることが報告された。しかしながら RseP 内に機能・構造が未知であるドメインが存在すること、これら各々のドメインがどのように共同して1 つのプロテアーゼとして機能するのかという課題があった。

・第1 章 PCT 領域の機能と構造
RseP のペリプラズム領域のうちN 末端側には2 つのPDZ ドメインが存在し基質切断制御に関わることが報告されているが、その下流には 70 アミノ酸長程度の機能・構造未知の領域が存在する。予備的解析から当領域の欠失や変異により RseP の安定性や基質切断活性、PDZ ドメインによる切断制御に影響が出ることが明らかになったため、RseP の機能に重要なドメインであると推測し、当領域をPCT (PDZ Carboxyl Terminal)領域と命名して解析を行うこととした。PCT 領域は二次構造予測解析からホモログ間で共通する 2 つの α-ヘリックス構造 (PCT-H1 領域、PCT-H2 領域と命名)を有することが予測された。PCT-H1 領域は、ヘリックス配向予測における側鎖の分布から両親媒性のヘリックスであると予測され、実際にPCT-H1 領域のCys 置換体に対する膜不透過性チオール基修飾試薬AMSの修飾評価から、両親媒性を介して脂質二重膜に部分的に埋もれた配置をとることを明らかにした。 PCT-H1 領域に網羅的に Cys、または Pro 変異を導入し機能解析を行ったところ、Cys、Pro 双方の変異により本来は切断できない全長 RseA を切断するようになる残基が見つかったことから、PCT-H1領域が PDZ ドメインのサイズ排除フィルター機能を介した切断制御において重要な役割を果たすことが示唆された。また、Pro 変異により基質切断能が低下する変異体が得られたことから、この領域のα ヘリックス構造が基質切断に重要であることが示唆された。さらに、光反応性アミノ酸アナログ pBPA を利用した in vivo 光架橋解析から、基質取り込み過程において PCT-H1 領域が RseA と相互作用する可能性を示した。これら生化学的・遺伝学的解析から、「PCT-H1 が膜中のプロテアーゼドメインと PDZ ドメイン双方と相互作用し、お互いを適切な位置関係に保つことで、構造安定性および PDZドメインによる切断制御能を適切に維持する”分子内アダプター”として機能する」こと、また「PCT-H1は基質と直接相互作用することで効率の良い基質切断を可能にする”分子間アダプター”としても機能する」ことを提唱した。両親媒性のドメインがタンパク質構造の安定化や基質との相互作用に関与するというモデルは、Presenilin/SPP や rhomboid ファミリーなど他の IMP でも報告されており、IMPに共通した性質と言えるかもしれない。PCT-H2 領域は AMS 修飾解析から、ペリプラズム領域に位置するヘリックスであることが示唆された。PCT-H2 領域の系統的な Cys 変異体解析において、全長 RseA を切断するようになる変異、基質切断活性が低下する変異が得られたことから、PCT-H2 領域も RseP の機能に重要であることが示唆された。また PCT-H2 領域 pBPA 体の in vivo 光架橋解析から、 PCT-H2 領域においても RseA と相互作用する可能性が示唆された。

・第2 章 RseP の全長構造
RseP が基質切断に際してどのように基質を認識し、脂質二重膜中で基質を切断するのかを明らかにするために、RseP の全体構造の情報は欠くことができない。申請者は横浜市立大の禾晃和博士らとの共同研究において、大腸菌 RseP および海洋性細菌 Kangiellla Koreensis 由来の RseP ホモログ (EcRseP、KkRseP)の全長構造を、小分子メタロプロテアーゼ阻害剤である batimastat との複合体の結晶構造として報告した。EcRseP の構造は、膜内部プロテアーゼドメインは 4 本の膜貫通領域と、膜挿入された4 本のβ-strand から形成されるβ-sheet (MREβ-sheet)から構成されており、batimastat は活性部位近傍で基質ペプチドを模した様式で RseP の複数の部位と相互作用していた。ペリプラズム領域は、2 つのPDZ ドメインがそれぞれの推定リガンド結合部位を向かい合わせるように配置されていた。 PCT 領域は2 つの膜表在ヘリックス (PCT-H1, H2)と、その間を繋ぐループ領域から構成されていた。これらの構造は、先行研究および本研究から得られた各ドメインごとの生化学的及び遺伝学的解析結果に基づく構造予測と非常によく合致したものであった。KkRseP の結晶構造は、ドメインごとの構造は EcRseP と一致していたものの、ドメインの配置などで EcRseP と異なる点も見られた。この EcRseP と KkRseP の構造の違いから、RseP が基質切断に際して基質を取り込む際に構造変化を起こすという仮説を提唱した。RseP の結晶構造および構造を基にした生化学的・遺伝学的解析から、RsePには活性部位が隠された”gate-closed 構造”と、活性部位が開放された”gate-open 構造”が存在する可能性を検討し、「RseP はPCT-H2, PDZ ドメイン、および TM4 が連動した構造変化を起こし gate-open 構造をとることで基質膜貫通領域が親水的な活性部位に取り込まれて切断を受ける」というモデルを提唱した。この構造変化を阻害するように分子内でジスルフィド架橋を形成させる Cys 置換体の解析から、この構造変化が RseP の機能に重要であることが示唆された。

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