リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「癌幹細胞マーカーが、食道扁平上皮癌における術前化学療法の抵抗性を予測する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

癌幹細胞マーカーが、食道扁平上皮癌における術前化学療法の抵抗性を予測する

阿河, 杏介 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Simple Cancer Stem Cell Markers Predict
Neoadjuvant Chemotherapy Resistance of
Esophageal Squamous Cell Carcinoma

阿河, 杏介
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8613号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482361
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Simple Cancer Stem Cell Markers Predict Neoadjuvant Chemotherapy Resistance of
Esophageal Squamous Cell Carcinoma

癌幹細胞マーカーが、食道扁平上皮癌における術前化学療法の抵抗性を予測する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
食道胃腸外科学
(指導教員:掛地
阿河

吉弘 教授)

杏介

【背景・目的】
食道癌は、世界で 6 番目に死亡率の高い癌で、主に食道扁平上皮癌(ESCC)と食道腺癌(EAC)
と呼ばれる 2 つの組織型に分類される。ESCC 患者に対しては、術前療法(NAT)後に根治切除
を行う方法が、手術単独に比べ全生存期間(OS)と根治切除率を改善することが示され、現在標
準治療となっている。NAT のうち、フルオロウラシルとシスプラチン(FP)を併用した術前化学療
法(NAC)は、JCOG9907 試験で治療成績が向上することが示され、術前標準治療となった。FPNAC で治療した ESCC の手術標本の病理組織学的治療効果が予後と関連することが示されてい
るが、それを正確に予測する適切な予測因子は存在しない。
癌幹細胞(CSC)は、癌の発生、進行、転移および治療抵抗性に関与し、CD44、CD133、CD24、
LGR5 などの細胞表面マーカーの発現により特徴付けられている。そこで、本研究では、ESCC に
おける NAT の治療効果を予測するための実用的かつ臨床的に可能な方法を決定することを目的
とするために、FP-NAC 前の生検標本を、CD44、CD133 と CD24 を ESCC-CSCs の候補マーカ
ーとして免疫組織化学染色を行った。FP-NAC 施行前の ESCC の生検標本に発現するこれらの組
み合わせが、手術標本の病理組織学的治療効果や ESCC 患者の予後と関連すると仮定し、後ろ向
き観察研究を実施した。

【患者背景】
本研究は、2008 年 1 月から 2016 年 12 月までに神戸大学医学部附属病院で FP-NAC 後に根治的
食道切除術を施行し、以下の条件、1)FP-NAC 施行前に ESCC が生検により組織学的に確認さ
れ、2)FP 療法が 2 サイクル終了し、3)R0/R1 切除が行われ、4)FP-NAC 施行前の生検標本が
利用可能、を満たした ESCC 患者を対象とした。切片は、UICC による TNM 分類(第 7 版)に
従って評価された。患者の生存率の評価は、手術から死亡、再発、または最後のフォローアップま
での期間に基づいて行われた。FP 療法は、シスプラチン(100mg/m2)を 1 日目に、5-フルオロ
ウラシル(750mg/m2/日)を 1〜5 日目に、それぞれ 2 サイクル投与された。手術は FP 療法から
約 4~6 週間後に行われた。FP-NAC に対する治療効果は手術標本を用いて病理組織学的に診断
され、奏効度判定は日本食道学会評価基準に基づき、grade3:生存し得ると判断される腫瘍細胞
なし、grade2:生存し得ると判断される腫瘍細胞が 2/3 以下、grade1:生存し得ると判断される
腫瘍細胞が 2/3 以上、grade0:全ての腫瘍細胞が残存、とした。病理学的奏効 grade が 2 または
3 の患者を奏効例、0 または 1 の患者を非奏効例と分類した。
【免疫染色】
免疫組織化学染色は、4μm スライス、スライドはキシレンで脱パラフィンし、段階希釈したエタ
ノールで再水和し、抗原賦活はオーブンでの加熱により行った。FP-NAC 前の 171 例の生検標本
を、1:100 の希釈で抗マウス CD24 モノクローナル抗体(mAb)
、1:100 の希釈で抗マウス CD44
mAb、および 1:10 の希釈で抗マウス CD133 mAb で染色を行った。評価方法として、腫瘍細胞
は、周膜と細胞質が染色された場合に陽性と判定することとし、各生検標本においてマーカーに
陽性である腫瘍細胞の頻度を算出した。その後、症例ごとに CD44 染色において CD44high 発現
群(免疫染色された腫瘍細胞が 50%以上)と CD44low 発現群(免疫染色された腫瘍細胞が 50%

未満)に分類し、同様に、CD133 染色において CD133high 発現群(免疫染色された腫瘍細胞が
1%以上)と CD133low 発現群(免疫染色された腫瘍細胞が 1%未満)、CD24 染色において
CD24high 発現群(免疫染色された腫瘍細胞が 10%以上)と CD24low 発現群(免疫染色された
腫瘍細胞が 10%未満)に分類した。

【結果】
2008 年 1 月から 2016 年 12 月の間に神戸大学医学部附属病院で FP-NAC の後に根治切除を受け
た ESCC 患者 214 例を本研究の対象とし、FP-NAC を 2 サイクル終了後、根治切除術を受けたの
は 171 例で 138 例の非奏効者と 33 例の奏効者であった。非奏効者と奏効者との比較にて、患者
特性(年齢,性別,ASA スコア,臨床病期)は,両群間に有意差はなかった。
FP-NAC の病理学的反応に基づく Kaplan-Meier 曲線では、非奏効者は奏効者に比べて OS
(p<0.0001)および無再発生存期間(RFS)
(p<0.0001)で有意差を認めた。
FP-NAC 実施前の生検標本は、CD44、CD133、CD24 の免疫染色をおこなったところ、腫瘍細胞
の細胞膜が抗 CD44 mAb によって広範囲に染色された。
また、
腫瘍細胞の細胞質と核は、
抗 CD133
mAb によって広範囲に染色された。一方、腫瘍細胞の細胞膜は、抗 CD24 mAb によって明瞭に
染色された。検査したマーカーの陽性の腫瘍細胞の頻度に基づいて、2 つのグループ(高発現群お
よび低発現群)に分類し、これらのマーカーの発現レベルと病理組織学的治療効果の関係におい
て、非奏効者では、CD44high (84.8%, p=0.043) と CD44high/CD24low (73.2%, p=0.006) が奏
効者より高い頻度で認めた。
FP-NAC 抵抗性の独立した予測因子を同定するために、単変量および多変量解析が行ったところ、
単変量解析では、CD44high/CD24low が病理組織学的治療効果不良の高いリスクと関連し
(p=0.007)
、多変量解析では、CD44high/CD24low は病理組織学的治療効果不良の独立した危険
因子であった(OR=0.30、95%CI=0.13-0.67、p=0.003)

臨床病理学的因子と CD44high/CD24low との相関を検討したところ、病理組織学的な静脈浸潤が
CD44high/CD24low 群で有意に高かった(p<0.001)

ESCC 患 者 の 生 存 率 解 析 で は 、 3 つ の CSC マ ー カ ー の す べ て の 組 み 合 わ せ の 中 で 、
CD44high/CD24low 発現群と非発現群で比較すると、CD44high/CD24low 群で 39.6%、非発現
群で 68.9%と OS に有意差を認めた(p=0.018)。
FP-NAC 実施前の生検標本の免疫染色データに基づいて、患者の生存期間との独立した予測因子
を特定するために、OS と RFS の Cox 比例ハザードモデルによる単変量および多変量解析を行っ
た。多変量解析では、cT 期(p<0.0001)と CD44high/CD24low(p=0.013)が OS 不良と関連す
る独立した因子であり、また、cT 期(p<0.0001)は RFS 不良と関連する独立した因子であった。

【考察】
NAT の治療効果に対する予測因子の臨床的価値は、NAT 前、NAT 後、手術後など、いつ予測で
きるかによって異なる。これまでの研究で、NAT に対する病理組織学的治療効果は、術後におけ
る予後の最も信頼できる予測因子の一つであることが報告されており、本研究では生検検体由来
の FP-NAC に対する病理組織学的治療効果の予測因子を明らかにすることを目的とした。NAT 前

に治療効果を予測することは、治療オプションを個別化し、毒性を回避するために、患者にとって
大変有益である。ESCC に FP-NAC が選択されない場合、FP ベースの化学放射線療法、FP とド
セタキセル、FP とドセタキセルベースの化学放射線療法などの他の NAT が想定されるが、十分
な証拠に基づいた代替手段がない。FP 療法抵抗性患者の治療選択肢が改善されれば、ESCC にお
ける NAT の個別化選択に貢献すると思われる。
NAT に先立つ ESCC の生検標本は、追加の介入なしに治療予測因子を同定する資料として常に有
用である。実際、本研究では、FP-NAC による治療前の生検標本における CSC マーカーの組み合
わせを評価し、CD44high/CD24low が FP-NAC 耐性および ESCC 患者の予後不良の貴重な予測
因子であることを示すことに成功した。
CSCs は、腫瘍の治療抵抗性を克服するための最も重要なターゲットと考えられており、我々も
ESCC-CSC マーカーが FP-NAC 抵抗性の良い予測因子であろうと仮定した。いくつかの報告で
は、CD44 が ESCC-CSC マーカーとして有用であることが示されている。しかし、CD44 は ESCC
で非常に高いレベルで発現していることが示されており、ESCC-CSC マーカーとして特定するに
は不十分であることが示唆された。本研究においても、腫瘍細胞の 50%以上が CD44 で免疫染色
された CD44 高発現群は全症例の 81.9%を占めており、先行研究と同様に、CD44 単独では臨床
的予測因子として不十分であると結論づけた。そこで、
ESCC-CSC をより正確に特定するために、
CD44 と他のマーカーとの組み合わせについて検討し、CD44high/CD24low が FP-NAC の治療効
果に対する負の予測因子であることを見出した。
【結論】
本研究は、ESCC-CSC マーカーとして、FP-NAC 投与前の生検標本における CD44high/CD24low
の発現レベルが FP-NAC 耐性および予後不良の貴重な予測因子となることを示した。このデータ
は、臨床的に FP-NAC が有効でなく、他の治療戦略を選択すべき ESCC 患者を特定することを可
能にし、ESCC-CSCs の化学療法抵抗性のメカニズムの解明にも貢献すると考えられる。

神 戸 大学大学院 医学(
系)
研究科 (博士課程)

論 文審 査 の 結果
受付番号

諭文題目

甲第

3278 号

の 要 旨

氏 名

阿河

杏介

Simple Can
ce
r S
t
e
m C
e
l
l Ma
rk
e
r
s Pr
ed
i
c
t Neoadjuvant
Che
moth
erapy R
e
s
i
s
t
a
n
c
e o
f Esophageal Squamous Cel
l
Carc
inom
a

T
i
t
l
eo
f
癌 幹細 胞マー カ ー が、食 道扁 平上皮癌における 術 前 化学 療 法 の 抵 抗
D
i
s
s
e
r
t
a
t
i
o
n
性 を 予測する

主 査
審査委員

Examiner

Ch
i
e
fExaminer
副 査

Vi
1
c
e・
exam1ner
副 査

Vi
1
c
e・
exa
m1n
e
r

篇芥巧
麿喜人


凡)麿 2

(要旨は 1, 000字 ∼ 2, 000字 程 度)


背 景 ・目的 】
食道扁平上皮癌 (
ESCC
)は、術前療法 (NA
T) 後に根治切除を行う治療 が 現在標準治療となり 、NAT
のうち 、フルオロウラシルとシスプラチン (
F
P
)を併用した術前化学療法 (
NAC)が、術前標準治療とな
った。 FP-NACで治療した ESCCの手術標本の病理組織学的効果が予後 と関連するが 、それを正確に
予 測する適切な予測因子は存在しない。
癌幹細胞 (
CSC)は、癌の発生、進行、転移および治療抵抗性に関与している 。本 研 究 で は 、ESCCに

T の治療効果を予測するため 、FP-NAC前の生検標本を 、 CSCの細胞表面マーカーである
おける NA
CD44、CD133と CD24の免疫組織化 学染色を行った。 これらのマ ーカーが、 手術標本の病理組織学的
効 果 や ESCC患者の予後と関連すると仮定し、後ろ向き観察研究を行った。
【患 者 背 景 】

2008年 1月から 2016年 1
2月までに神戸大学医学部附属 病 院 で 、FP・
NAC施行前に ESCCが生検で確
認され、 FP療 法 が 2サイクル終了し 、R
O/Rl切除が行われた症例 を対象とした。 FP・NACの病理組織

radeが 2または 3の患者を
学的効果の奏効度判定は 、日本食道学会評価基準に基づき 、病理学的奏効 g
奏 効例
、 0または 1の患者を非奏効例とした。

免疫染色 】

FP-NAC前の生検標本を 、CD44モノクローナル抗体 (
mAb)、CD133mAb、 CD24mAbで染色を行
i
g
h発現群(免疫染色された腫瘍細 胞 が 50%以上) と CD44low発 現 群 (
50%
った。評価 方 法 は、CD44h
未満) 、 CD133
h
i
g
h発現群(免疫染色腫船細胞 1%以上)と CD133
l
ow発 現 群 ( 1%未満)、 CD24
h
i
g
h
発現群(免疫染色腫船細 胞 1
0%以上)と CD24l
ow発現群 (
10%未滴)に分類した。
結 果】


FP-NACを 2サイクル終了後 、根治切除術を受けた ESCC患 者 1
7
1例のうち 、 138例の非奏効者 と 33
例の奏効者であっ た。 非奏効者と奏効者の比較では 、患者特性 は両群間に有意差はなかった。

FPNACの病理組織学的効果に基づく Kap
l
an-Me
i
e
r曲線では 、非奏効者は奏功者に比べて OSお よび
無再発 生存期間 (
RFS) で有意 差を認めた。

CD44、CD133、CD24の発現レベルと病理組織学的効果の関係において 、非奏効者では、 CD44
h
i
gh と
CD44high/CD24
l
ow が奏効者より高い頻度で認めた。
FPNAC抵抗性の独立した予測 因子 を同定するために 、単変贔および多変最解析を行ったところ、多変
D44high/CD24lowは病理学的効果不良の独立した危険因子であることが分かった。
絋解析にて 、 C
ESCC 患 者 の 生 存 率 解 析 で は 、 CD44
h
i
gh/CD24l
ow 発 現 群 と 非 発 現 群 で 比 較 す る と 、
CD44high/CD24
l
ow群 で 3
9
.
6%、非発現群で 6
8
.
9%と OSに有意差を認めた。
FP-NAC実施 前 の 生検標本の免疫染色データに基づ いて 、OSの Cox比例 ハ ザー ドモデルによる単変砿
および多変絋解析を行った結果、多変趾解析では 、cT期と CD44
h
i
gh/CD24
l
owが OS不良と関連する
独 立した因子であった。


考察 】
先行研究で 、NA
T に対する病理組織学的効果は、術後における予後の最も信頼できる予測因子の 一つ
であると 言われており 、NATに先立つ ESCCの生検標本は 、追加の介入な しに治療予測因子を同定す
る資料として常に有用である 。 実際、本研究では 、FP・N
ACによる治療前の生検標本における CSCマ
ーカーの組み合わせを評価し 、CD
44high/
CD24
l
owが FP・
NAC耐性および ESCC患者の予後不良の貴
重な予測因子であることを示すことに成功した。

CSCs は 、腫 艇 の 治 療 抵 抗 性 を 克 服 す る た め の 最 も 重 要 な タ ー ゲ ッ トと 考 え ら れ て お り 、 我 々 も
ESCC・
CSCマーカーが FP・NAC抵 抗I

生 の良い予測因子であろうと仮定 した。 CD44は、ESCCにおい
て非常に高いレベルで発現していることが示されており 、本研究でも CD44high群が全症例の 8
1
.
9%
を占めたため 、CD44単独では臨床的予測因子 として不十分であると結論づけた。そこで、 ESCC・
CSC
を よ り 正 確 に 特 定 す る た め に 、 CD44 と他 の マ ー カ ー と の 組 み 合 わ せ に つ い て検貫寸し 、

CD44high/CD24lowが FP・
NACの治療効果に対する負の予測因子であることを見出した。

本研究は 、ESCCの CSCマーカーについて研究したのものであるが 、従来ほとんど行われていなかっ
た ESCCで FP-NACを 2サイクル完遂した後根治手術を行った症例に限定し、 FP-NA
C前の生検標本
に発現する癌幹細胞マーカー CD44
h
i
g
h/CD24
l
owの発現レベルが FPNAC耐性および予後不良の貴重
な予測因子と なることを初めて明らかにした報告であり 、重要な知見を得たものとして価値ある集積で
あると認める 。 よって本研究者は 、博士(医学)の学位を得る質格があると認める 。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る