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大学・研究所にある論文を検索できる 「Protein Kinase N Promotes Stress-Induced Cardiac Dysfunction Through Phosphorylation of Myocardin-Related Transcription Factor A and Disruption of Its Interaction With Actin」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Protein Kinase N Promotes Stress-Induced Cardiac Dysfunction Through Phosphorylation of Myocardin-Related Transcription Factor A and Disruption of Its Interaction With Actin

Sakaguchi, Teruhiro 坂口, 輝洋 名古屋大学

2020.03.02

概要

【背景】
心不全は、心臓に器質的もしくは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻してもたらされる病態である。近年、心血管疾患の治療は進歩してきているが、未だに心不全は予後不良な疾患である。

心不全をもたらすメカニズムの解明による新たな治療法開発が期待されており、その一つとして、プロテインキナーゼは治療ターゲットとして注目されてきている。タンパク質のリン酸化は、細胞外シグナルに応答して心筋細胞のさまざまな細胞プロセスを介在する主要な細胞内メカニズムである。例えば、リン酸化による心筋細胞の収縮と弛緩の制御は、心臓ポンプ機能を調節するが、病的なリン酸化は心臓のポンプ機能を傷害し、心不全の原因となる。

低分子量 GTP 結合タンパク質 RHOA は細胞遊走や細胞増殖を制御し、その標的分子である Rho キナーゼ(ROCK)はタンパク質の病理学的なリン酸化を引き起こし、動脈硬化や高血圧などの循環器疾患と深く関連することが報告されている。プロテインキナーゼN(PKN)は RHOA の基質として報告されているが、その機能は不明な点が多い。本論文では、心不全における PKN の役割を明らかにすることを目的とした。

【結果】
マウス心筋細胞におけるアンギオテンシンⅡと圧負荷による PKN1 と PKN2 の活性化 (Fig1)
PKN には 3 つのアイソフォームが存在することから、qRT-PCR を用いて、心筋細胞における PKN1、PKN2、PKN3 の発現量を測定した。その結果、心筋細胞には PKN1、 PKN2 が発現することを同定した。続いて単離した心筋細胞に RHOA 活性剤やアンギオテンシンⅡによる刺激を行うと、PKN1/PKN2 のリン酸化亢進を認め、RHOA 阻害薬によりそのリン酸化が有意に抑制されたことから、心筋細胞において PKN1/PKN2 が RHOA により活性化されることが示唆された。大動脈弓部結紮(TAC)による圧負荷心不全モデルでは、PKN1/PKN2 のリン酸化亢進を認め、圧負荷により心臓の PKN1/PKN2が活性化すること示された。RHOA を活性化させる G-protein である Gα12/13 欠損マウスでは、そのリン酸化が抑制されることから、心不全の心臓では RHOA シグナルが PKN1/PKN2 を活性化することが示唆された。

心筋特異的PKN1/PKN2 欠損マウスによる圧負荷誘発性心臓機能障害の抑制(Fig2,3)
Tamoxifen 誘導性心筋特異的 PKN1/PKN2 欠損(cmc-PKN1/2 DKO)マウスを作製した。ウエスタンブロットにより PKN1/PKN2 が欠損されることを確認した。コントロール マウス(cmc-PKN1/2wt/wt)と cmc-PKN1/2 DKO マウスに TAC を行い、4 週間後に評価を 行うと、コントロールマウスでは心重量の増加を認めたが、cmc-PKN1/2 DKO マウス では心重量増加が抑制された。心臓エコー検査において、cmc-PKN1/2 DKO マウスで はコントロールマウスと比較して TAC による心収縮能の低下や左室重量の増加を抑 制していた。続いて、心筋細胞の肥大と線維化を Hematoxylin-Eosin 染色と Picrosirius red 染色により評価した。Cmc-PKN1/2 DKO では、心肥大と線維化は抑制された。また心不全の重症度の指標である BNP の増加も有意に抑制された。TAC8 週後、12 週後心臓超音波検査の結果、cmc-PKN1/2 DKO マウスは心収縮能低下と心拡大を抑制した。

PKN を介した MRTFA のリン酸化によるアクチン結合の抑制(Fig4)
PKN の活性化と心肥大・線維化の機序を明らかにするために、心不全関連遺伝子の転写因子である serum response factor (SRF)と、その共役因子である myocardin-related transcription factor A (MRTFA)に着目した。Myc タグ PKN キナーゼドメイン、ROCK キナーゼドメインを H9C2 細胞に遺伝子導入すると、SRF が活性化された。PKN、ROCK、 RHOA がアクチン重合に及ぼす影響を評価するため、H9C2 細胞に遺伝子導入し、F-アクチン/G-アクチン比を測定した。ROCK、RHOA ではアクチン重合が促進されたが、 PKN では認めなかった。In vitro リン酸化アッセイ実験では、PKN がアクチン結合部位である MRTFA の N 末をリン酸化し、さらに、そのリン酸化により有意に MRTFAとアクチンの結合を抑制することを見出した。

PKN による MRTFA のリン酸化部位(Fig5)
PKN ファミリーによってリン酸化されるコンセンサス配列を用いて、MRTFA のリン酸化サイトとして Thr26, Ser41, Ser51, Thr57, Ser67 を候補部位とした。同部位をアラニン置換した蛋白質を精製し、Ser51, Thr57 のアラニン置換では PKN と ROCK のリン酸化が有意に低下し、Thr57 のアラニン置換では PKN のリン酸化が有意に低下した。 PKN による MRTFA の Ser51, Thr57 のリン酸化が MRTFA とアクチンの結合に及ぼす影響を調べるために、GST-MRTFA-NT WT と GST-MRTFA-NT 51/57A を用いた in vitroでのアクチン結合実験を行ったところ、GST-MRTFA-NT 51/57A では PKN による MRTFA とアクチンの結合低下を抑制した。

In vitro, in vivo における PKN1 と PKN2 による MRTFA のリン酸化(Fig6)
PKN によるMRTFA のリン酸化を評価するために、抗 pSer51 MRTFA 抗体と抗 pThr57 MRTFA 抗体を作成した。GST-MRTFA-NT は PKN と ROCK に容量依存性にリン酸化され、Ser51 と Thr57 いずれも PKN が ROCK より強くリン酸化された。続いて in vivoでの PKN による MRTFA のリン酸化を検討するために、TAC5 日後のマウスの心臓で MRTFA Ser51 と Thr57 のリン酸化を調べた。TAC5 日後の cmc-PKN1/2wt/wt マウスの心臓において MRTFA Ser51 と Thr57 のリン酸化が示され、cmc-PKN1/2 DKO マウスではそのリン酸化が抑制された。

心筋特異的 PKN1/PKN2 欠損マウスによるアンギオテンシンⅡ誘発性心臓機能障害の抑制(Fig7)
心不全の発症因子であるアンギオテンシンⅡを介した MRTFA の Ser51, Thr57 のリン酸化を検討した。cmc-PKN1/2wt/wt マウスより単離した心筋細胞ではアンギオテンシンⅡ刺激は MRTFA のリン酸化を亢進したが、cmc-PKN1/2 DKO マウスではそのリン酸化は抑制された。アンギオテンシンⅡを 4 週間持続投与する心不全モデルにおいて、 cmc-PKN1/2 DKO マウスではアンギオテンシンⅡによる心機能低下と心重量増加を抑制した。さらに、cmc-PKN1/2 DKO マウスではアンギオテンシンⅡによる心臓線維化を有意に抑制した。

PKN を介した遺伝子発現(Fig8)
次に、cmc-PKN1/2wt/wt マウスと cmc-PKN1/2 DKO マウスの心臓に対して抗 MRTFA抗体を用いたクロマチン免疫沈降を行った。心不全関連遺伝子である Myh7、Nppa、 Ctgf、Tgfb1 のプロモーターと MRTFA との結合が TAC により促進し、その結合は cmc- PKN1/2 DKO マウスにおいて抑制されていた。これらの結果から PKN の阻害は心臓において MRTFA/SRF を介した心不全関連遺伝子の発現を抑制し、心不全における心機能低下を防ぐことが示唆された。

【考察】
今回我々は、心筋特異的 PKN1、PKN2 欠損マウスが圧負荷やアンギオテンシンⅡにより発症する心不全の病態を改善することを示した。これらは、低分子量 GTP 結合タンパク質 RHOA の標的分子である PKN が、MRTFA のリン酸化を介して MRTFA と G-アクチンの結合を阻害し、SRF による心不全関連遺伝子の発現を増加させることが機序と考えられた。PKN-MRTFA-SRF を介した遺伝子発現は心臓機能障害のシグナル伝達において重要な知見となり、PKN は心臓肥大、線維化の制御に重要な役割を果たすことが証明され、心不全治療の新たな標的となることが期待された。

【結論】
PKN1/2 は MRTFA をリン酸化し、心臓肥大と線維化を制御することが証明され、心不全の新たな治療標的になることが示唆された。

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