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大学・研究所にある論文を検索できる 「ポドサイト傷害時、MIFとSDF1の二相性発現がFSGS病変におけるCD44を介した糸球体ボウマン嚢壁側上皮細胞の遊走を促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ポドサイト傷害時、MIFとSDF1の二相性発現がFSGS病変におけるCD44を介した糸球体ボウマン嚢壁側上皮細胞の遊走を促進する

井藤, 奈央子 筑波大学 DOI:10.15068/00162503

2021.02.04

概要

<目的>
巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis,FSGS)は、糸球体足細胞(ポドサイト)の傷害に端を発する腎予後不良の疾患である。ポドサイト傷害が起こると、その係蹄の対面近傍に位置するボウマン嚢壁側上皮細胞(parietal epithelial cell, PEC)は、扁平な形から立方体に細胞形態を変え、ポドサイトが傷害された係蹄に向かって遊走し、増殖や細胞外基質産生を行うことで硬化病変を形成する。このように性質を変えたPECを「活性化PEC」と呼ぶが、これら一連の反応は糸球体の局所で起こり始めることから、傷害を受けたポドサイトから何らかのシグナルがPECに伝わり活性化すると推測される。本研究では、活性化PECの性質の中でも遊走能に着目し、以前より活性化PECのマーカーとして知られているCD44と、その上流因子であるmacrophage migration inhibitory factor(MIF)やstromal cellderived factor1(SDF1)を介したシグナル伝達が、活性化PECが遊走能を獲得することを目的とした「傷害ポドサイト-活性化PEC」に存在する細胞間シグナルではないかという仮説を立て実験を行った。

<対象と方法>
実験1.ポドサイトにヒトCD25を発現させたNEP25マウスにイムノトキシンLMB2を尾静注投与することでポドサイトを特異的に傷害できるNEP25/LMB2マウスの腎組織切片を用いて免疫染色を行い、CD44、MIF、SDF1および受容体であるC-X-Cchemokine receptor type 4(CXCR4)とCD74の糸球体での発現局在を経時的に評価した(day0,4,8,12,n=5)。CD44はポドサイトマーカーp57との二重免疫染色を行い、CD44発現初期の局在と傷害ポドサイトとの位置関係を評価した。

実験2.不死化マウスボウマン嚢壁側上皮細胞(mPEC)をrecombinant mouse MIF(rMIF)またはSDF1α(rSDF1α)で24時間刺激し、それぞれCD44とCXCR4の発現を定量PCR、ウェスタンブロッティング、細胞免疫染色で評価した。さらに同様に刺激したmPECでのMIFとSDF1の発現も定量PCRで評価した。同刺激mPECを使ってBoyden chamberによる遊走アッセイを行い、siRNAを用いたCD44ノックダウンによる遊走能の変化を評価した(n=5)。

実験3.NEP25/LMB2マウスにMIF阻害薬(ISO-1)またはSDF1-CXCR4阻害薬(AMD3100)を投与し、蛋白尿や糸球体病変、CD44の発現に与える影響を評価した(n=5)。

<結果>
実験1.NEP25/LMB2マウスの糸球体では、PECにおけるCD44の発現はポドサイト傷害の進行とともに亢進した。CD44の発現初期像を示す糸球体のうち、67.5%でその発現局在がポドサイトの消失した係蹄の対面のPECに位置していた。ポドサイトにおけるMIFとSDF1の発現はポドサイト傷害の進行とともに亢進し、MIFはday8、SDF1はday4にピークを認めた。またその発現局在は、病変の進行とともに傷害ポドサイトからCD44陽性PECへと移行した。CXCR4は、病変の進行とともにCD44陽性PECに発現した。CD74は糸球体内には発現がなく、ボウマン嚢周囲に増加した細胞に発現していた。

実験2.rMIFまたはrSDF1αで24時間刺激したmPECは、非刺激mPECと比較し、いずれもCD44とCXCR4の発現がmRNAおよび蛋白レベルで有意に増加した。さらに同刺激mPECでのMIFやSDF1の発現も増加した。遊走能も非刺激mPECと比較し有意に亢進しており、CD44ノックダウンによりその遊走能は抑制された。

実験3.NEP25/LMB2マウスにISO-1あるいはAMD3100を投与しても、溶媒投与群と比較し、病変、蛋白尿、ポドサイト数、CD44の発現に有意な変化を認めなかった。

<考察>
In vivo実験とin vitro実験の結果から、傷害ポドサイトに発現したMIFやSDF1が、液性因子として対岸近傍のPECに作用してCD44とCXCR4の発現を誘導し、活性化PECのCD44を介した傷害濾過障壁への遊走を促進していると考えられた。さらにポドサイトが剥離した後は、PECが内因性のMIFやSDF1を発現し、自らの遊走を促進している可能性が考えられた。この傷害ポドサイトと活性化PECにおけるMIFとSDF1の二相性発現により、傷害された濾過障壁の修復機構が促進され、結果として糸球体硬化に発展すると推察された。

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