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大学・研究所にある論文を検索できる 「乳酸菌代謝物および菌体の抗炎症作用・免疫調節作用に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

乳酸菌代謝物および菌体の抗炎症作用・免疫調節作用に関する研究

青木, 玲二 東京大学 DOI:10.15083/0002006083

2023.03.20

概要



査 の















青木

玲二

近年、乳酸菌に様々な健康機能があることが明らかになり、乳酸菌の活用が
進められている。本論文は、乳酸菌の健康面での活用をさらに進めることを目
的とし、乳酸菌代謝物の一つである芳香族ピルビン酸(フェニルピルビン酸、4ヒドロキシフェニルピルビン酸、インドール-3-ピルビン酸)の新規機能性と、卵
白リゾチームの加熱凝集による乳酸菌体の免疫調節作用の増強機構について検
討したものである。本論文は、研究背景などについて記述した序論につづき、1
章、2 章、3 章、4 章および 5 章(総合討論)から構成される。
第 1 章では、紫外線 B 波(UVB)照射による角化細胞の損傷および炎症反応に
対するピルビン酸の防御作用について検討している。ヒト不死化角化細胞であ
る HaCaT 細胞を用い、ピルビン酸が UVB 照射後の細胞の生存を向上させるこ
と、UVB により誘導される炎症性メディエーターである interleukin (IL)-1β、
IL-6、cyclooxygenase-2 (Cox-2)の発現を抑制することを明らかにしている。本
章 で は さ ら に 、 UVB に よ り 誘 導 さ れ る 活 性 酸 素 (ROS) の 産 生 お よ び
mitogen-activated protein kinase (MAPK)の活性化に対するピルビン酸の効果
を検討し、ピルビン酸は ROS の産生ではなく p38 MAPK のリン酸化を抑制す
ることにより、角化細胞の損傷および炎症反応を抑制している可能性があると
考察している。
第 2 章では、UVB 照射による皮膚傷害に対する芳香族ピルビン酸の防御作用
について検討している。HaCaT 細胞の UVB 照射モデルを用いた検討から、芳
香族ピルビン酸はピルビン酸よりも強く細胞の生存を高めること、UVB により
誘導される IL-1β、IL-6、Cox-2 の発現を抑制することを明らかにしている。ま
た、芳香族ピルビン酸はピルビン酸と同様に UVB 照射により誘導される ROS
の産生を阻害しない一方で、p38 MAPK のリン酸化を抑制することを明らかに
している。さらに、HR-1 ヘアレスマウスの UVB 照射炎症モデルを用いて芳香
族ピルビン酸の防御作用について調べ、芳香族ピルビン酸の中でも特にインド
ール-3-ピルビン酸(IPA)の塗布により、皮膚の炎症や皮膚のバリア機能の低下が
抑制されることを明らかにしている。

第 3 章では、芳香族ピルビン酸の腸管炎症抑制作用について検討している。
4-ヒドロキシフェニルピルビン酸や IPA は芳香族炭化水素受容体(AhR)を活性
化すること、また、いくつかの AhR アゴニストは腸管炎症を抑制することが報
告されており、これらの物質は腸管炎症を抑制できる可能性がある。本章では
芳香族ピルビン酸の AhR 活性化能を評価するとともに、T 細胞移入大腸炎モデ
ルを用いて芳香族ピルビン酸の腸管炎症抑制作用を評価し、IPA に最も強い
AhR 活性化能があること、経口摂取させた場合には IPA でのみ腸管炎症が抑制
されることを明らかにしている。さらに、IPA の大腸炎症抑制機構について検
討し、IPA が大腸において IL-10 産生T細胞を増加させること、in vitro におい
て IL-10 産生を特徴とする Type 1 regulatory T (Tr1)細胞の分化を促進するこ
と、腸間膜リンパ節(MLN)樹状細胞の Th1 分化誘導能を減弱させること、MLN
樹状細胞のサブセット構成を変動させ、CD103¯CD11b+樹状細胞を減少させる
一方で、抗炎症作用がある CD103+CD11b¯樹状細胞を増加させることを明らか
にしている。一方、AhR アンタゴニストを用いた検討を行い、IPA の大腸炎抑
制作用、Tr1 細胞分化の促進作用、MLN における CD103+CD11b¯樹状細胞増加
作用に、AhR が関与している可能性が高いことを明らかにしている。
第 4 章では、卵白リゾチームの加熱凝集による Lactococcus 属乳酸菌体の
IL-12 誘導能の増強機構について検討している。Lactococcus 属乳酸菌 46 菌株
を用いた検討から、マクロファージ様細胞である J774.1 細胞では 46 菌株中 41
菌株で、マウス脾臓細胞ではすべての菌株で、卵白リゾチームの加熱凝集によ
り IL-12 産生誘導が増強されることを明らかにしている。また、卵白リゾチー
ムに加え、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、オボアルブミンの加熱凝
集死菌体を用いた検討および貪食阻害剤、リゾチーム阻害剤を用いた検討から、
この作用は卵白リゾチーム特異的であること、その機構には、菌体の疎水性の
増加によるマクロファージ貪食の促進と菌体のリゾチーム耐性強化によるマク
ロファージ消化耐性の増大が関係している可能性が考察されている。
第 5 章(総合討論)では、ピルビン酸および芳香族ピルビン酸の p38 MAPK
の阻害機構と UVB 照射による皮膚傷害に対する IPA の防御作用における AhR
の関与の可能性について論じられているほか、今後の展望について述べられて
いる。
以上、本論文で得られた知見は、乳酸菌代謝物および菌体による免疫炎症応
答調節の新たな機構を明らかにしたものであり、乳酸菌の健康機能向上につな
がるものと期待される。これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが
少なくない。よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として
価値あるものと認めた。

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