リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「消化管酵素トリプシンの分解に関与するヒト腸内常在細菌の同定および分解メカニズムの解明に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

消化管酵素トリプシンの分解に関与するヒト腸内常在細菌の同定および分解メカニズムの解明に関する研究

渡辺, 栄一郎 東京大学 DOI:10.15083/0002002448

2021.10.15

概要

本研究では、健康なヒトの便検体から、膵臓から分泌されるタンパク分解酵素であるトリプシンを分解する腸内細菌Paraprevotella clara(パラプレボテラクララ、以下、P. clara)を単離し、さらに、P. claraの投与が、トリプシンの残存に起因すると考えられる⼤腸炎に対して有効な治療法である可能性を⽰した。

 理化学研究所で維持されたSPFマウスと無菌マウス(Germ-Freeマウス、以下、GFマウス)の盲腸内容物について、網羅的タンパク質解析(以下、プロテオーム解析)を⾏い、713種の宿主由来のタンパク質を同定した。SPFマウスと⽐較して、GFマウスの盲腸内容物中には、45種のタンパク質が有意に多く存在していた。これらのうち、存在量に顕著な差を認め、未だ発症の原因や病態の詳細が不明である炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease、以下、IBD)との関連が⽰唆されている、タンパク分解酵素のトリプシン(Anionic trypsin-2:PRSS2)に着⽬した。

 まず、qRT-PCR及びウエスタンブロッティングを⽤いて、膵臓組織におけるトリプシン前駆体であるトリプシノーゲンの発現量及び分泌量を検討したが、SPFマウスとGFマウスでは差が認められなかった。⼀⽅で、腸内溶物中のトリプシン活性は、⼩腸では差が認められなかったが、盲腸以遠ではSPFマウスにおいて有意な低下していたことから、腸内細菌が盲腸以遠でのトリプシン活性を低下させる因⼦と考えられた。

 次に、健常者6名の便検体をGFマウスに投与してヒト菌叢模倣マウスを作出し、マウス便中のトリプシン活性を評価した。その結果、便中のトリプシン活性は、⼤部分の群において低下した。そこで、便中のトリプシン活性を低下させるヒト由来の腸内細菌の同定に着⼿した。最もトリプシン活性が低下したヒト菌叢模倣マウスの盲腸内容物を、別のGFマウスに投与し、様々な抗菌スペクトルの抗⽣物質を投与しながら、便中のトリプシン活性を評価した。その結果、アンピシリン投与マウス群において、便中のトリプシン活性の有意な低下が認められた。その中で、最もトリプシン活性が低下したマウスの盲腸内容物を嫌気条件下で培養し、トリプシン活性を低下させるヒト腸内細菌35菌株を単離した。続けて、単離した35菌株に含まれる、トリプシン活性を低下させる責任細菌の同定を進めた。上述した抗⽣物質投与実験のマウス便中における腸内細菌の相対占有率とトリプシン活性値を⽤いたSpearman順位相関解析及びin vitro実験を組み合わせ、最終的にParaprevotella clara(パラプレボテラクララ、以下、P. clara)単菌が、トリプシン活性を低下させる責任細菌であることが判明した。
 
 最後に、IL-10遺伝⼦⽋損マウスにEnterobacter aerogenesを感染させて⼤腸炎を誘導させ、単離したP. claraのトリプシン活性低下効果に基づく炎症の緩和を検証したところ、P. claraの投与により、その炎症が抑制される傾向が認められた。

 以上から、P. claraは、盲腸以遠のトリプシン活性を低下させ、⼤腸炎を緩和し得る、宿主に有益で重要な腸内細菌のひとつであり、その投与はIBDに対する新たな治療戦略として期待できると結論づけた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る