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大学・研究所にある論文を検索できる 「Downregulation of HLA class II is associated with relapse after allogeneic stem cell transplantation and alters recognition by antigen specific T cells」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Downregulation of HLA class II is associated with relapse after allogeneic stem cell transplantation and alters recognition by antigen specific T cells

安達, 慶高 名古屋大学

2022.07.04

概要

【緒言】
急性白血病に対する同種造血幹細胞移植において、移植後の原病再発は治療成功の最大の障壁であるが、その要因として白血病細胞の免疫回避が挙げられている。悪性腫瘍では腫瘍細胞のHLAの遺伝子欠失・変異による発現消失や発現低下を起こすことで、抗腫瘍T細胞の認識から回避することがある。実際に、HLA半合致移植では移植後再発時に染色体HLA領域の片親性ダイソミーが多く報告されている。一方で不一致HLAアレルが多数存在している臍帯血移植では、HLAアレルの遺伝子変異や発現量に関して詳細に検討した報告は少ない。また、標的細胞のHLA抗原の発現がどの程度まで低下すると、抗原特異的T細胞の認識能が傷害されるかは明らかにされていない。

そこで、我々は、抗原特異的T細胞を用いた解析において、invitroでHLA低発現細胞株を樹立し、抗原特異的T細胞の認識能を検証するとともに、臍帯血移植施行例を含む同種造血幹細胞移植後に再発した患者の臨床検体を用いてHLAアレルの遺伝子変異や発現低下の有無を解析した。

【方法】
限界希釈法を用いてシングルセルクローニングを行い、HLA-A*02:01の発現量の異なるK562、HLA-DP5の発現量の異なるK562を作成した。HLAclassIに関しては、健常ドナーからCD8陽性T細胞を単離し、NY-ESO1抗原に対するT細胞性受容体(TCR)を遺伝子導入した。作成されたNY-ESO1抗原に対するTCR導入T細胞(NY-ESO1-TCR-T)をHLA-A*02:01の発現量の異なるK562とNY-ESO1抗原のペプチドと共培養し、クロム放出試験を行うことで、細胞傷害活性を調べた。HLAclassⅡに関しては、健常ドナーからCD4陽性T細胞を単離し、HLA-DP5によって抗原提示されるSu3-2抗原、Su3-3抗原に対するTCR(Su3-2-TCR,Su3-3-TCR)を遺伝子導入した。Su3-2,Su3-3-TCR導入T細胞をHLA-DP5の発現量の異なるK562とSu3-2,Su3-3抗原ペプチドと共培養し、ELISAアッセイを行うことでサイトカイン産生能を調べた。

次に我々は同種造血幹細胞移植後に再発した患者の臨床検体を用いてHLAアレルにおける遺伝子変異と遺伝子発現を解析した。対象は、名古屋大学附属病院と日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院で2000年〜2016年に同種造血幹細胞移植が施行された急性骨髄性白血病あるいは骨髄異形成症候群の患者のうち、初診時と移植後再発時の両方で白血病細胞が入手可能である症例とした。初診時と移植後再発時の白血病細胞と正常末梢血単核球をフローサイトメトリーを用いて分離し、質の良い十分量のDNAとRNAの抽出が可能であった9例の症例で解析を行った。HLA遺伝子領域全体を特異的にPCR増幅させ、次世代シークエンサーを用いた超高解像度DNAタイピング(SS-SBT)法にて変異解析を行った。発現解析に関しては、キャプチャーRNAシークエンスを行った。

【結果】
HLAclassIに関しては、まずシングルセルクローニングによって4種類のHLA-A*02:01陽性K562(Low, Low-int, High-int, High)を樹立した(Fig.1a)。HLAclassIの発現の影響を検証したクロム放出試験では、HLA-A*02:01の発現量の低いLowのK562でもNY-ESO1-TCR導入T細胞によって傷害を受けた(Fig.1b)。

HLAclassⅡに関しては、Su3-2,Su3-3-TCR導入CD4陽性T細胞がHLA-DP5陽性K562を特異的に認識し、サイトカインを産生することを確認した(Fig.2a)。その後シングルセルクローニングによって11種類のHLA-DP5陽性K562(HLA-DP5の発現量が一番低いCloneA〜HLA-DP5の発現量が一番高いCloneK)を樹立した(Fig.2b)。HLAclassⅡの発現の影響を検証したELISAアッセイでは、HLA-DP5を弱く発現するCloneAやCloneBを用いた場合にIFN-γの産生能が低下し(Fig.2c)、IL-2の産生能はK562のHLA-DP5の発現量に比較的相関しながら低下傾向となった(Fig.2d)。

臨床検体を用いた移植後再発白血病細胞の遺伝子変異解析では、全例において一致HLAアレル、不一致HLAアレルの両方でアレル特異的な遺伝子変異は認めなかった。臍帯血移植が施行された5例のうちの1例(#10の症例)で各HLAアレルの片側が検出されず、片親性ダイソミー(6pUPD)を起こしたと考えられた(Fig.3,Fig.4)。発現解析において#10の症例以外にHLAclassIの発現低下をきたした症例は認めなかった(Fig.3)。HLAclassⅡであるHLA-DRB1,DQB1,DPB1では、移植後再発時に、初診時と比較して発現が低下する現象を複数例で認めた。HLA-DRB1では、#15の症例の一方の対立遺伝子で初診時の50%程度の発現に低下していた(Fig.4a)。HLA-DPB1でも、#15の症例の一方の対立遺伝子で初診時の12%の発現に低下していた(Fig.4b)。HLA-DQB1遺伝子のほとんどは一般的に約40000〜60000リードカウントされるが、#2、#104、#11の3症例では一方の対立遺伝子、#3の症例では両方の対立遺伝子の発現が移植前から健常者の10%程度の発現しか認めなかった(Fig.4c)。また、前述の今回樹立したHLA-DP5陽性K562を、臨床検体の解析手法として用いたキャプチャーRNAシークエンスによってDPB1のRNA発現を確認したところ、CloneH以下のHLA-DP5の発現量の低いCloneでは、健常ドナー12人の発現量よりも低下していた(Fig.5)。

【考察】
抗原特異的T細胞を用いた解析において、HLAclassI分子の発現を低下させても、T細胞のHLA分子/ペプチド複合体認識能は影響を受けなかった。一方で、HLAclassII分子の発現を高度に低下させると、T細胞のHLA分子/ペプチド複合体認識能は減弱した。この結果は、HLAclassI分子は、6pUPDやHLA遺伝子変異のように、発現低下ではなく発現消失に至らないと、T細胞の認識から逃れられない可能性があるのに対して、HLAclassⅡでは遺伝子の欠失等で完全に発現が消失しなくても、発現の低下が抗原特異的T細胞の抗原認識能の低下につながる可能性が示唆された。実際の臨床検体を用いた解析においても、HLAclassIは6pUPDが起こり発現消失に至った症例を1例認めたのに対して、HLAclassⅡは複数の症例において発現低下を認めていた。

【結論】
同種造血幹細胞移植後の再発例において白血病細胞のHLAクラスⅡの発現量の低下は多くの症例で認められ、invitroの実験では抗原特異的T細胞の認識能に影響を与えていた。HLAclassⅡの発現の低下の分子学的機序の解明が望まれる。またHLAclassⅡの発現低下が同種造血幹細胞移植の予後に及ぼす影響を明らかにするためには、さらなる検証が必要である。

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