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大学・研究所にある論文を検索できる 「Investigation on the role of gene regulation between chlorophyll biosynthesis and iron accumulation in rice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Investigation on the role of gene regulation between chlorophyll biosynthesis and iron accumulation in rice

王, 璠 東京大学 DOI:10.15083/0002006390

2023.03.24

概要

審 査 の



















コメは世界人口の半分以上が食している穀物である。貧困や飢餓といった問題への解決
策の一つとしてコメの収量向上がある。コメの収量に大きく影響を与える要因の一つとし
て鉄欠乏がある。また、コメ中の鉄含量を増加させることもわれわれの健康にとって重要
である。そこで、植物における鉄代謝に関わる生理メカニズムや分子メカニズムの理解が
必要とされている。そしてその知識を基に栄養価の高い穀物の生産や持続的な穀物生産へ
とつなげることが求められている。本論文は新たな鉄ホメオスタシス関連遺伝子の同定と
その機能解析、鉄欠乏のクロロフィル合成に及ぼす影響解析などを行い、植物の鉄代謝に
関わる分子の相関について新たな知見を得たものである。本論文は6章から成り、第1章
では、以上に述べた植物や人間における鉄の重要性に関する研究についての背景を記述し
ている。
第2章ではまず、鉄欠乏初期に発現の誘導される遺伝子の選抜と欠損変異体の作成を行
っている。以前のマイクロアレイ解析で、イネ科植物のムギネ酸類を介した鉄の獲得に関
する遺伝子の発現は同調的に制御されていることが明らかとなっていた。そこで、これら
の遺伝子と同じ発現パターンを示す遺伝子を9つ選抜した。それぞれについて CRISPR/Cas9
による欠損変異体の作成を試みた。3つの遺伝子、イネの鉄獲得関連塩基性
helix-loop-helix (bHLH)型転写因子(iron-related transcription factor 3, OsIRO3)遺
伝子、イネの鉄欠乏誘導性 RING (really interesting new gene)型 Zn フィンガータンパク
質 (RING Zn finger protein, OsRFP)遺伝子、イネの鉄欠乏誘導性タンパク質リン酸化ド
メインタンパク質(protein kinase domain containing protein, OsPK)遺伝子についての
み、ホモ接合体の欠損変異体が得られた。OsIRO3 欠損変異体では、鉄欠乏時の生育に異常
が見られ、葉が茶色くなり枯死した。この際、葉中の鉄やマンガンの濃度が上昇しており、
また活性酸素種の集積も見られた。さらに、鉄が十分時もしくは過剰時に発現の誘導され
る鉄貯蔵タンパク質フェリチンの遺伝子発現が、鉄欠乏条件の葉で上昇していた。一方、
根では鉄欠乏に応じた鉄獲得機構の遺伝子の発現が上昇していた。したがって、OsIRO3 欠
損変異体では、葉中に鉄が十分もしくは過剰に存在するという情報が、葉から根に送られ
ていないものと考えられる。OsIRO3 はこの葉から根への情報伝達に関わっている可能性が

ある。また、OsIRO3 は他の鉄欠乏応答に重要ないくつかの転写因子の制御下にあること、
また、OsIRO3 はホモダイマーもしくは他の bHLH 型タンパク質とのヘテロダイマーを形成し
うることを示し、OsIRO3 がイネの鉄欠乏応答と情報伝達において重要なタンパク質である
ことを示している。
□第3章では、鉄欠乏初期に遺伝子発現が誘導される OsRFP について解析している。OsFRP
欠損変異体では、鉄が十分に与えられた条件下でジャスモン酸応答のシグナル伝達に関す
る中心的な役割を果たす転写因子の遺伝子発現が 1/2 程度に抑えられていた。この転写因
子は鉄の吸収や輸送を制御への関連も示唆されている。OsRFP はジャスモン酸を介した鉄の
吸収や輸送機構の制御に関わっているタンパク質であることが示された。
第4章では、OsPK 遺伝子の解析について述べている。OsPK 変異体では、葉でも根でも鉄
十分時に、通常の植物では鉄欠乏時に発現が上昇する鉄の獲得に重要な複数の遺伝子の発
現が上昇していた。これらから、OsPK タンパク質が OsIRO3 などの遺伝子発現の負の制御に
関わっていることが示唆された。
第5章では、鉄欠乏がクロロフィル(Chl)の合成に及ぼす影響について解析している。鉄
欠乏処理によって Chl 合成に関わる遺伝子の発現が減少すること、また Chl a と Chl b の
バランスが変化することを示した。さらに Chl b を含まない変異体の解析から、クロロフ
ィライド a 酸化酵素の C 末端側の鉄結合サイトが酵素活性に重要であり、さらにこの欠損
によってムギネ酸類による鉄獲得関連遺伝子の発現が減少することを示した。
□第6章では研究の総括と、今回得られた3つの遺伝子を利用した鉄欠乏耐性作物の創製
や鉄を多く含む穀物の創製に向けた今後の展望について議論を行っている。
□植物では3つの鉄欠乏に応じた遺伝子発現制御経路が知られており、本論文で、OsIRO3、
OsPK、OsRFP が、それぞれ1つあるいは複数の経路上で機能する可能性を示した意義は大き
い。今後の鉄欠乏耐性植物や鉄強化穀物の創製に寄与すると考えられ、学術上、応用上貢
献するところが少なくない。よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の論文として
価値あるものと認めた。

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