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大学・研究所にある論文を検索できる 「Comparative anatomy of coronary arteries in vertebrates: Are amniotic coronary arteries a newly acquired trait?」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Comparative anatomy of coronary arteries in vertebrates: Are amniotic coronary arteries a newly acquired trait?

水上, 薫 東京大学 DOI:10.15083/0002006933

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名水上



本研究は、今まで個別論的であった冠循環の知見を、脊椎動物を通じて比較可能な「冠動脈進
化史」という一貫した知識体系としてまとめ上げることを目的とする。特に、冠循環の起点とな
る冠動脈起始部に着目し、マウス、ウズラ、系統間を繋ぐ両生類、ゼブラフィッシュを解剖学的
視点および発生・分子細胞学的視点から比較し、冠循環の発生起源の解明と進化的な理解を試み
たものであり、下記の結果を得ている。

1.ゼブラフィッシュ(flk1; egfp)を用いて、冠動脈の起始部及び分布を解析した結果、ゼブラ
フィッシュは他の真骨魚類同様、鰓下動脈から還流されることが明確に記載された。
2.ゼブラフィッシュの冠動脈発生を解析したところ、冠動脈起始部が位置する鰓下動脈の血
管内皮細胞は、2~3 days post fertilization (dpf)頃、大動脈嚢直上の正中部分で第二咽頭弓
のコアに存在する二次心臓領域に位置する細胞群が内皮細胞に分化して左右に分岐する
Y 字状の分枝構造を形成し、それぞれ左右の第一咽頭弓動脈の分枝と接続を形成してい
た。これらの鰓下動脈は頭側だけではなく、発生とともに腹側大動脈の接続が見られるよ
うになり、21dpf 頃には腹側大動脈の周囲に多くの血管網を形成し、鰓との接続も形成し
ていた。一方頭側から来る鰓下動脈だけではなく、45dpf 頃になると心房心室間から出芽
した内皮細胞が心流出路の動脈球に向かって伸長し始め、それぞれ動脈球上の血管網を
介して合流していた。さらに、動脈球上に血管網が 50dpf 頃までにリモデリングされ、
成体で見られるような心室壁を還流する冠動脈を形づくっていることが記載された。
3.アフリカツメガエルを含む複数の両生類(ニホンアマガエル、ウシガエル、アカハライモ
リ)の冠血管の解析した結果、両生類の冠動脈は頚動脈の大動脈からの分岐直上から分
岐し、動脈球上に血管網を形成することを記載した。一方、冠静脈は静脈洞の右側に開
口する分枝状の血管網として動脈球上に形成される事が記載された。

4. 魚類や両生類における動脈球上の血管網は、羊膜類において胎生期に一過性に形成され
る ASV (Aortic Subepicardial Vessels)の分布と比較解剖学的に類似していたことから、

マウス、ウズラに対し、それぞれの内皮細胞マーカーである PECAM-1 及び QH-1 を用
いて ASV の解析を行った。すると、ASV が第三咽頭弓動脈から出芽し、大動脈基部の冠
動脈起始部形成領域で中膜層に侵入する内皮細胞の索状構造ともつながっていることが
示された。

5.本研究の結果を元に比較解剖学的視点から冠動脈起始部の位置を整理したところ、非羊
膜類がより鰓に近い頭側から冠動脈を供給していたのに対し、羊膜類では大動脈起始部
からそれらが供給されていたことが明らかとなった。この冠動脈起始部位置の差異を理
解するため、次に発生を比較すると、羊膜類の冠動脈起始部は胎生期の大動脈周囲に一
過性に生じる ASV の大動脈壁内への伸長を用いた ingrowth 様式をとり、一方で非羊膜
類冠動脈と羊膜類 ASV では内皮細胞の出芽領域が直接起始部へと変化する outgrowth
様式をとっていた。つまり、羊膜類の冠動脈とそれ以外の系統の冠動脈は、形成される位
置・形成様式がともに異なることから、相同な構造ではないことが示唆された。

以上、本論文はマウス、ウズラ、系統間を繋ぐ両生類、ゼブラフィッシュの冠動脈を解剖学的
視点および発生・分子細胞学的視点から比較することに成功した。さらにその結果から、「脊椎
動物に共通するとされていた”冠動脈”という構造の発生機序は羊膜類とそれ以外とで大きく異
なり、羊膜類以外において”冠動脈”と呼ばれてきた構造はむしろ、羊膜類の ASV と一致する」
ことが示唆され、また、羊膜類における”冠動脈”はその系統に至る過程で獲得された、新規形質
である可能性があり、教科書的知識に則って多様な生物種で”冠動脈”と解剖学的に命名されてき
た構造は、羊膜類と他の生物とで異なる形質を指している可能性が示唆された。本研究は、長年
断片的であった脊椎動物の多系統にわたる冠動脈起始部の解剖・発生学的記載を行い、発生・進
化における包括的な概念を提示、
「冠動脈起始部の発生機序の解明およびその進化の包括的理解」
に重要な貢献をなすと考えられる。

よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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