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大学・研究所にある論文を検索できる 「複合生態系と生息地連結性から解き明かすトウキョウサンショウウオの個体群維持機構」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

複合生態系と生息地連結性から解き明かすトウキョウサンショウウオの個体群維持機構

髙木, 香里 東京大学 DOI:10.15083/0002006269

2023.03.24

概要





















高木

香里

近年世界中で起きている土地改変などの人間活動は、生息地の減少や分断化
を引き起こし、生態系間のつながりや生息地間ネットワークを消失させている。
両生類はそうした影響を受けて減少している代表的な分類群である。しかし、
個体群維持に関わる研究の多くは、局所的な水域環境などに注目した研究が多
かった。両生類は局所スケールでは異なる生態系(陸域と水域)のつながりに
依存し、景観スケールではメタ個体群として存続していることが多い。そのた
め、有効な保全策を構築するためには、生態系間相互作用、メタ個体群生態学、
景観生態学の 3 つの分野を統合した視点が必要である。本研究では IUCN の絶
滅危惧種であるトウキョウサンショウウオを対象に、その個体数決定機構を、
生態学の異なる分野で発展してきた概念を統合することで明らかにすることを
目的としたものである。
第2章では、本種の幼生の生存にとって重要と考えられる主要な餌生物の特
定を行った。小渓流における個体数調査と飼育実験により、等脚目のミズムシ
が幼生の主な餌生物であることを明らかにした。
第3章では、小渓流に隣接する森林環境の異質性に対する本種の産卵選好性
を明らかにした。その結果、水域周辺の森林が落葉樹林であると、水温の上昇
とミズムシの個体数の増加により、産卵地として選択される傾向があることを
示した。
第4章では、局所と景観スケールを統合した個体数の決定機構を明らかにし
た。前章までで示唆された幼生期の重要な局所環境と、成体期の局所環境要因、
および景観異質性を組み込んだ生息地間連結性を統合して、本種の個体数に対
する影響を評価した。生息地間連結性については、従来の連結性指標に代えて、
景観生態学の分野で近年用いられているサーキット理論による「抵抗距離」を
組み込むことで、実際の生物の移動様式を反映した生息地の連結性を推定した。
その結果、局所環境については、水域周辺の落葉広葉樹林の存在が、幼生期お
よび成体期の双方にとって好適であることが示された。幼生期においては、落
葉広葉樹林は水温の上昇や落葉リター量の増加を介して、ミズムシ個体数を増

加させ、幼生に好適であること、また落葉広葉樹林は成体の生存率を高める効
果があることが推察された。さらに生息地間連結性については、森林環境が連
結性を高める一方、市街地は移動障壁となることで連結性がもつ底上げ効果を
低下させることを定量的に示した。また地形の影響は土地被覆に比べると生息
地連結性への影響が弱いことも明らかにした。
総合考察では上述の結果を基に、本種の個体数が決定されるプロセスを概説
し、両生類や里山の生物多様性の保全に対して、本研究の結果がどのように貢
献できるかについて議論している。これまで両生類の減少要因としては、特定
の局所環境に注目した研究が多かったが、本論文では、両生類の生活史段階に
応じたスケール横断的な視点で減少要因の解明や保全を行う必要性を示すこと
ができた。また、従来の里山二次林の伝統的な管理が、陸域の植物や昆虫類だ
けでなく、水温の上昇や落葉広葉樹由来のリター供給を介して、水域の生物に
とってもプラスに働いてきたことを示唆している。さらに、里山の生物多様性
の保全や管理の際には、局所から景観スケールにいたる生態系や生息地のつな
がりに着目して、流域をまたいだ保全活動を行う必要性があることを定量的に
示すことに成功した。
これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、
審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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