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大学・研究所にある論文を検索できる 「Intra- and interspecific variations of leaf Si concentration in broad-leaved trees」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Intra- and interspecific variations of leaf Si concentration in broad-leaved trees

Kajino, Hirofumi 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23945

2022.03.23

概要

ケイ素は植物のストレス耐性を向上させる有用元素であるが、根からのケイ素吸収量は種間で大きく異なり、葉のケイ素濃度は種間で約1000倍の変異を示すことが知られている。これまで、ケイ素の吸収や利用はイネをはじめとする草本種を対象とする研究が行われており、木本種ではクワ科等の種が比較的高い葉のケイ素濃度を示すことが知られていたが、木本種を対象とするケイ素集積に関する生理学的な研究はほとんど行われてこなかった。さらに、多くの研究者がケイ素集積種においてケイ素集積のメリットを追究してきたが、ケイ素を集積しない植物種が多く存在することはケイ素集積にデメリットや制約があることを示唆するかもしれない、という視点はこれまで欠けていた。この二点に注目して本論文の対象となる研究では、(1)広葉樹における葉へのケイ素集積の生理学的な理解、および(2)葉のケイ素濃度の種間変異の生態学的な意義のより良い理解を目指して、日本産の落葉広葉樹種を対象として一連の調査を行った。

第1章では植物葉のケイ素濃度の種間変異と種内変異についての既往研究を整理した。葉のケイ素濃度の種間変異はケイ素吸収の制御によって主に説明されるのに対し、種内変異は根からのケイ素の吸収量と葉の積算蒸散量の両方によって説明されることから、樹木葉のケイ素集積速度が光環境等の蒸散速度に影響する微環境条件や土壌のケイ素可給性に応じてどのように変化するかを検証することの意義を指摘した。また、葉のケイ素濃度が高い種は葉寿命が短いという傾向が報告されてはいるが、なぜ葉寿命が長い種の葉のケイ素濃度が低いのか、についての生理生態学的な説明は不十分である。本論文は、葉にケイ素集積することのデメリットの可能性として(1)葉齢に伴い葉に集積されるケイ素が葉内の二酸化炭素拡散を妨げて光合成速度を低下させる、(2)ケイ素濃度の高い葉は硬いが脆く長期間の使用に向かない、という二点を提示した。

第2章では広葉樹3種を対象に、ケイ素が葉齢に伴い葉のどの部位に集積されるかを検証した。同じ枝から葉齢の異なる葉を採取し、葉を葉柄、主脈、葉身の部位ごとに切り分けた後にケイ素濃度を測定した結果、全ての種においてケイ素濃度は葉身において葉柄や主脈よりも高かった。また、葉身のケイ素濃度は葉齢の古い葉で高かった一方で、葉柄や主脈のケイ素濃度は葉齢間で違いがみられなかった。この結果から、葉齢に伴い積算蒸散量が増加するにつれ、ケイ素は葉身に集積されることが示唆された。

第3章ではクワ科のカジノキ (Broussonetia papylifera) において葉のケイ素集積速度と枝の光環境の関係を検証した。光環境が良い枝では、光合成速度も蒸散速度も高いので、積算蒸散量の増加とともにより早い速度で葉のケイ素集積は起こるという仮説をたてた。この検証のため、同じ枝につく葉齢の異なる葉のケイ素濃度を比較し、葉齢に伴うケイ素濃度の増加を枝ごとに推定した。ケイ素集積速度は枝の成長速度および光環境と正に相関し、この結果は仮説を支持した。

第4章はクワ科のイヌビワ (Ficus erecta) の挿し木苗を用いたケイ素肥料の施肥試験について報告した。葉のケイ素濃度を実験的に操作することで、ケイ素を施肥した個体(施肥群)と施肥しなかった個体(対照群)の葉のケイ素集積速度を比較して、葉のケイ素濃度の違いが光合成速度に影響するか、また、葉内に集積されたケイ素が光合成を阻害し葉の老化を促進するかを調べた。ケイ素施肥処理は土壌のケイ素可給性を有意に高くしたが、葉のケイ素集積速度はわずかしか変わらなかった。この結果は、葉のケイ素濃度がある程度の値になるようにイヌビワは根におけるケイ素の吸収を能動的に調整していることを示唆する。よって、光合成速度と葉寿命には処理群間で違いがみられず、葉内のケイ素が光合成を阻害するという仮説は支持されなかった。

第5章では、ケイ素濃度の高い葉は硬いが脆く長期間の使用に向かない、という仮説の検証に向けて、葉のケイ素濃度と力学的特性の関係を、落葉広葉樹33種を用いて調査した。二次脈を避けた葉身の小片を用いて引っ張り試験を行い、応力とひずみの関係の勾配からヤング率をもとめ、また、最大ひずみおよび最大応力を求めた。種平均値を用いた解析において、ケイ素濃度はヤング率と正に相関した一方で、最大ひずみとは負に相関した。一方、ケイ素濃度は最大応力とは相関しなかった。細胞壁繊維濃度との重回帰の結果、ケイ素濃度はセルロース濃度と相加的にヤング率に貢献していることが分かった。この結果から、ケイ素は葉の硬さに貢献するが、伸展性を制限することが示唆された。伸展性の低い葉は壊れやすく長期間の使用には向かないため、葉寿命の長い種ではケイ素を細胞壁のヤング率の上昇に用いることは適応的でないことが示唆された。

6章では第2章から第4章の結果を総合的に考察した。広葉樹における葉のケイ素集積速度は枝の光環境の影響を行ける一方で、土壌のケイ素可給性の影響は受けにくいこと、また、ケイ素濃度の増加は、葉の力学特性を、硬いが脆くする、という効果をもたらすことを考察した。この結果は、葉寿命を長くするという進化圧のもとでは、葉へのケイ素集積は非適応的である可能性を示唆した。

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