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大学・研究所にある論文を検索できる 「[研究トピックス]飛騨DST共同利用報告 : Ellerman Bombの高時間空間分解分光観測による定量的理解」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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[研究トピックス]飛騨DST共同利用報告 : Ellerman Bombの高時間空間分解分光観測による定量的理解

市川, 椋大 野澤, 恵 京都大学

2023.04

概要

Ellerman Bomb の高時間空間分解分光観測による定量的理解
エラーマンボムは彩層底部で起こる小規模爆発現象であり、Hα 線中心では吸収、ウィ
ング部では顕著な増光が見られる特徴的なスペクトルプロファイルを示す。発生メカニズム
は磁気リコネクションと考えられているが、まだ観測的にそれがはっきり証明されているとは
言えない。そこで、エラーマンボムのスペクトル特性から、その立体的な物理量分布の時間
変動を解明することが本観測の狙いである。
2022 年 10 月に太陽表面上の活動領域 NOAA13124(16 日)と NOAA13135(31 日)付近に
対し、京都大学飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡の水平分光器を用いて分光観測を行っ
た。観測波長はHα線(656.2nm)とCaΙΙK線(393.3nm)の2波長であり、各線輪郭を光球から
彩層までの異なる高さを反映しているとみなせる計5つのコンポーネントに分離させ、各コ
ンポーネントを個別に解析することで、各高度域での物理量の時間発展を追った。しかし、
今回の観測では2つの波長が同時に増光するようなエラーマンボムが観測できなかったた
め、2波長を総合するような議論はできていない。
上記解析の過程では、取得した線輪郭の各コンポーネントを4次関数でフィッティングし
ドップラー速度を求めている。ただし、基準となる速度 0 の波長位置は、時間空間平均した
プロファイルで決定している。また、温度についてはHα線に対しては Two Cloud Model を
用いることで加熱域での上昇温度を求めた。一方、CaΙΙK線では同モデルの適用が難しく、
熱力学的平衡が保たれていることを仮定して K1、K2 コンポーネントに対してプランクの法
則を適用することで導出した。
その結果、Hα線で観測されたエラーマンボムについては、その発生中、ウィング部では
下降流、センター部では上昇流を示したことから、磁気リコネクションがそれらに対応する
高さの間(彩層下~中層)で起こることにより、高さ方向に沿った双方向ジェットが発生して
いることが伺える。また、このエラーマンボムは同じ場所で何度か輝度の増減を繰り返しな
がら、速度の絶対値がウィング部では時間とともに小さい方向に、センター部では大きい方
向に変化していく様子が確認でき、我々はこれをリコネクションポイントが 10 分間で 700km
ほど上方に移動したことを表していると解釈した。
一方、CaΙΙK線で観測されたエラーマンボムについては、K1~K3 コンポーネント全てで
上昇流が確認され、かつその速度の絶対値は K1>K2>K3 となっていたことから、このエラ
ーマンボムでは、磁気リコネクションが比較的低高度(光球上)で発生しているのではない
かと考えている。また、CaΙΙK線では特に K2 において、Hα線と同様に輝度と速度の時間変
化に相関がみられた。
なお、いずれのエラーマンボムについても、今回の方法で導出した温度については、そ
の時間変化と輝度・速度変化との間にはっきりした相関を得ることができなかった。

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以上の結果より、今回の観測ではエラーマンボムは光球から彩層下層~中層で磁気リコ
ネクションが発生したことによるものと考えられ、その発生高度によって、Hα線のみで見え
る場合とCaΙΙK線のみで見える場合がある、と結論付けた。
今回の観測での問題点と今後の課題について以下にまとめる。
1. Hα線(656.2nm)とCaΙΙK線(393.3nm)の2波長が同時に増光するようなエラーマンボ
ムが観測できなかった。
2. 太陽中心付近で発生したエラーマンボムの観測ができなかった。
3. CaII K 線観測時のノイズが大きい。
4. 温度導出がうまくできなかった。
今後の観測では以上を改善しつつ、inversion code (線輪郭から各物理量の高さ方向分
布を導出するコード) を用いてより詳細な物理量の高度時間変動を解析する予定である。
今回の結果は 2023 年日本天文学会春季年会でポスター発表した(M11b)。

図 1. Hα線の各物理量の時間変化。
上から、ドップラー速度、輝度、温度。

図 2. CaΙΙK線各物理量の時間変化。
上から、ドップラー速度、輝度、温度。 ...

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