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大学・研究所にある論文を検索できる 「Search for Proton Decay via p → e+π0 and p → μ+π0 with an Enlarged Fiducial Mass of the Super-Kamiokande Detector」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Search for Proton Decay via p → e+π0 and p → μ+π0 with an Enlarged Fiducial Mass of the Super-Kamiokande Detector

竹中, 彰 東京大学 DOI:10.15083/0002006658

2023.03.24

概要

1

論文審査の結果の要旨

氏名

竹中彰

素粒子の標準モデルは電弱相互作用と強い相互作用で構成されているが、199
8 年のニュートリノ振動の発見により、標準モデルを超える現象が存在すること
が判明した。次のステップとして、電弱相互作用と強い相互作用を統一的に記
述する素粒子の大統一理論の検証が宇宙線・素粒子実験物理学の最重要課題の
一つとなっている。素粒子の大統一理論は、標準モデルでは起こりえない陽子
崩壊を予言する。
本論文は、5 万トンの水チェレンコフ型観測装置スーパーカミオカンデ検出器
で取得された観測データ(観測期間は 1996 年から 2018 年まで、6,000 日以上
に及ぶ 450 kton・year)を用いた陽子崩壊(p → e+0 及び p → +0)の探索に
関する研究である。
本論文は 8 章からなり、第 1 章は導入部、第 2 章は動機と共に素粒子の標準
モデル、大統一理論に関する記述、陽子崩壊探索の現状、第 3 章はスーパーカ
ミオカンデ検出器のハードウェア構成詳細と測定器の校正、第 4 章は陽子崩壊
信号及び雑音となる大気ニュートリノ事例に関するモンテカルロシミュレーシ
ョンの詳細、第 5 章は膨大な宇宙線観測データから(陽子崩壊事例候補や大気
ニュートリノ事例が主成分である)fully contained 事例データセットを作成す
るデータリダクション方法、それによる陽子崩壊候補や最終的な雑音となる大
気ニュートリノ事例の検出効率に関する詳細、第 6 章は fully contained 事例デ
ータセットに関して、事例に含まれる各チェレンコフリングを電子型[電磁シャ
ワーを起こす不鮮明なチェレンコフリング]またはミューオン型[電磁シャワー
を起こさないので鮮明なチェレンコフリング]に選別し、事例としての発生位置、
全不変質量、全運動量を再構成する方法の詳細、スーパーカミオカンデ検出器
のエネルギースケールの様々な不定性に関する議論等、第 7 章は陽子崩壊探索
の結果、系統誤差の評価に関する詳細、大統一理論との比較、将来への展望、
第 8 章は結論について述べている。
スーパーカミオカンデ検出器は、高速荷電粒子が水中で発するチェレンコフ
光を約 11000 本の直径 20 インチ光電子増倍管で検出し、その電荷及び時間情報
からチェレンコフリングを引き起こした粒子を識別し、そのエネルギー、方向、

2

発生場所を算出するリアルタイム計測実験である。本論文で対象にしている陽
子の崩壊モードは p → e+0 および p → +0 の 2 つである。例えば、前者はス
ーパーカミオカンデ検出器の内部(実効質量内)で、1 個の 0.5 GeV 程度の電
子の引き起こす電子タイプのチェレンコフリングと、それと正反対の方向に出
る中性パイ中間子が 2 本のガンマ線に崩壊して作る1個あるいは 2 個の電子型
チェレンコフリングとして観測され、ミュー粒子崩壊信号は観測されない。つ
まり、その事例再構成後の全質量は約 1 GeV(陽子質量)、全運動量は大気ニュ
ートリノ事例と異なりかなり小さいことが一番の特徴である。論文提出者は、
陽子崩壊探索感度を向上するために、従来の解析では検出器の壁から 2 m 内側
であった 22.5 kton の実効質量を壁から 1m 内側までの 27.2 kton に初めて拡張
することに成功した。実効質量を壁に近づけると様々な効果の評価を詳細に見
積もらねばならないために、今までグループでは逡巡していたが、論文提出者
は検出効率、様々な装置性能やそれらの系統誤差の評価を行い、実効質量の約
20 %の拡張に成功した。また、論文提出者は独自に粒子識別能力を向上する解
析方法を考案し、それにより陽子崩壊信号の検出効率を拡張領域で約 20 %改善
した。これらの改善を取り入れた解析を行い、陽子崩壊信号を探索したところ、
/B(p → e+0) > 2.4×1034 years (観測事象 0, 期待背景事象 0.59)
/B(p → +0) > 1.6×1034 years (観測事象 1, 期待背景事象 0.94)
という結果を得た。大気ニュートリノ事例から期待される背景事例を統計的に
有意に超過する事例は観測されなかったが、90 %の信頼度で与えられたこれら
の寿命の下限値は過去のスーパーカミオカンデ実験が持つ世界記録を 1.5 から 2
倍程度上回る世界で一番厳しい制限であり、論文提出者を第一著者として
Physical Review D102, 112011 (2020)に公表済みである
以上のように、本論文はスーパーカミオカンデ検出器を用いて陽子崩壊 p →
e+0 及び p → +0 の寿命に関して世界最高の下限値を与える研究であり、宇宙
線・素粒子実験物理学に大きく貢献するものである。
なお、本論文の実験はスーパーカミオカンデ実験という大きなグループ実験
であるが、論文提出者が主体となって検出器の実効質量を 20 %拡張(他の解析
にも利用可能)し、また粒子識別能力の改良を通じて陽子崩壊信号の検出効率
を改善したことにより初めて可能となった成果であり、論文提出者のスーパー
カミオカンデ実験及び論文に関する寄与が十分であると判断した。また、共同
実験代表者から論文内容の結果を学位論文として提出することについて了承を
得ているものであることを確認した。
従って、審査員一同は博士(理学)の学位を授与できると認める。

この論文で使われている画像

参考文献

[122] K. Abe et al., Hyper-Kamiokande Design Report, arXiv:1805.04163 (2018).

[123] G. Bradski, The OpenCV Library, Dr. Dobb’s Journal of Software Tools (2000).

[124] F. Iacob, Primvate Communication.

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