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書き出し

OPERA実験における原子核乾板広域スキャンを用いたステライルニュートリノ探索

早川, 友博 名古屋大学

2023.06.26

概要

学位報告4

別紙4
報告番号





















論 文 題 目 OPERA 実験における原子核乾板広域スキャンを用いたステ
ライルニュートリノ探索


名 早川友博

論 文 内 容 の 要 旨
ニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動現象の研究は、その存在の検証、主要振動パ
ラメータの測定の段階を経て、現在振動の CP 対称性の破れを検証する段階に入っている。一方で、
LSND 実験や MiniBooNE 実験が、通常のニュートリノ振動では説明の出来ない電子ニュートリノ(ν
e)事象の超過を報告しており、その真偽を確かめる重要性が増している。
申請者は、 タウニュートリノの出現をとらえてニュートリノ振動現象の最終検証を行った OPERA
実験の持つ電子ニュートリノ検出能力に着目し、その能力をフルに活用して、
LSND 実験や MiniBooNE
実験の真偽を判定するための研究を行った。
OPERA 実験のニュートリノ検出器である ECC は原子核乾板と鉛板からなる構造を持っているが、
従来の解析手法はニュートリノ振動の感度に大きく寄与する低エネルギーνe事象について、特に ECC
上流で発生した場合に検出効率が著しく低下するという問題があった。この改善のために、申請者は従
来比で約 70 倍高速化された読み取り装置 HTS を用いて、反応点下流を 5 ㎝×5 ㎝×原子核乾板 20
枚の領域にわたって読み取り、その中に記録された全飛跡の中から電子シャワーを検出する手法を開発、
OPERA 実験のデータに適用した。
ECC 中にはニュートリノ反応と無関係な宇宙線や自然放射線由来のコンプトン散乱などで生じた
電子の飛跡が高密度に記録されている。申請者は MC シミュレーターGeant4 を用いて ECC 中の低
エネルギー電磁シャワーの振る舞いを検証し、円錐様に発達するシャワーの飛跡毎の位置、角度情報
を用いてノイズを除去しつつ高効率に電磁シャワーを検出する手法を考案した。また反応点から発生
する π 0 由来のガンマ線による物理的背景事象を処理するために、飛跡の運動量など複数の特徴量の
複合利用によるνeとの識別手法を確立し、これらの背景事象の 98%を除去した。さらにこの手法は
3D 飛跡ビューアと顕微鏡という 2 種のツールによってニュートリノ反応の目視確認を行いノイズ飛
跡や背景事情を除去することが必須であったが、従来のツールは 50 倍に拡大したスキャン面積での
膨大な飛跡情報に対応できなかったため、対応可能なツールを新たに開発した。
この手法を、特に感度への寄与の大きい ECC 上流側で発生した 99 事象に限定して適用し、48
事象から電磁シャワーを検出、うち 1 事象を新規νe 候補と判定した。検出された電磁シャワーの特

学位関係

徴はシミュレーションから予測されるπ0 由来のガンマ線事象と一致しており、νe 検出効率推
定の妥当性に根拠を与えている。
最後にこの結果を用いて質量差Δm412 と混合角 sin22θμe のパラメータ空間での上限を、シ
ミュレーションと観測のエネルギースペクトル比較に基づく尤度法を用いて求め、LSND、
MiniBooNE の許容領域において従来比で 17%の改善となる sin22θ>0.016 の領域を排除した。
これにより LSND、MiniBooNE の結果が 1 種のステライルニュートリノの存在によって説明
される可能性はより強く否定されることとなった。

この論文で使われている画像

参考文献

150

[61] 吉本雅浩 名古屋大学 博士論文 (2017).

[62] K. Hamada et al., JINST, 7, P07001 (2012).

[63] 濱田要 名古屋大学 博士論文 (2013).

[64] N. Agafonova et al. (OPERA Collaboration), J. High Energy Phys., 06, 151 (2018).

[65] N. Agafonova et al. (OPERA Collaboration), J. High Energy Phys., 07, 004 (2013).

[66] 北川暢子 名古屋大学 博士論文 (2013).

[67] N. Agafonova et al. (OPERA Collaboration), J. High Energy Phys., 11, 036 (2013).

[68] T. T. Bohlen et al., Nucl. Data Sheets 120, 211 (2014).

[69] A. Ferrari, P. R. Sala, A. Fasso and J. Ranft, CERN-2005-010 (2005).

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[74] https://vtk.org

[75] https://www.qt.io/ja-jp/

[76] 吉岡哲平 名古屋大学 博士論文 (2011).

[77] A. Hiramoto et al. (NINJA Collaboration), Phys. Rev. D, 102, 072006 (2020).

[78] S. H. Hayakawa et al. (J-PARC E07 Collaboration), Phys. Rev. Lett., 126, 062501 (2021).

[79] 中村悠哉 名古屋大学 博士論文 (2022).

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[83] A. M. Dziewonski and D. L. Anderson, Phys. Earth Planet. Interiors 25, 297 (1981).

[84] F. D. Stacey and P. M. Davis, Cambridge University Press, Cambridge U.K. (2008).

[85] N. Agafonova et al. (OPERA Collaboration), Prog. Theor. Exp. Phys., ptad012 (2023).

[86] P. Abratenko et al. (MicroBooNE Collaboration), Phys. Rev. Lett., 130, 011801 (2023).

151

付録 A

タウニュートリノ出現解析の結果

OPERA 実験の目的であるタウニュートリノ出現解析は、2018 年に最終結果が報告された [19]。

2015 年時点の結果では、幾何学、運動力学的パラメータによるカットによって 5 イベントの ντ 候

補を得、5.1σ で νµ → ντ を検出した。2018 年にはここから更に ντ 候補を増やし ∆m232 をより精

密に測定するために、多変量解析によるアプローチが取られた。

まず表 A.1 の基準に従ってイベント候補を選出する。各パラメータの意味は 4.4.3 項で述べたと

おりである。バックグラウンドとして考慮された 3 種のうち、チャームクォークを含む粒子(D ± 、

D0 、Ds0 、Λ+

c )は νµ CC 反応で生成されるため大半は 1µ/0µ の識別と ECC 中での飛跡の追跡に

よって除去される。ハドロン二次反応(2ry int.)は 2015 年以前の解析では p2ry 、pT

2ry 、後述する

ϕIH のカットによって抑制されていたが、同時に多数のシグナルも損失していたため、2018 年の

解析では基準が大幅に緩和された。ミュー粒子大角度散乱(µ LAS)は MC シミュレーションと

過去のミュー粒子散乱実験などを考慮して見積もられた。表 A.2 はタウニュートリノ候補の期待

値および検出数の一覧である。ここでは sin2 2θ23 = 1、∆m223 = 2.50 × 10−3 eV2 を仮定してい

る。これらの可視エネルギーの分布は図 8.1 で示したとおりである。

τ → 1h

τ → 3h

τ →µ

τ →e

zdec (mm)

< 2.6

< 2.6

< 2.6

< 2.6

θkink (rad)

> 0.02

> 0.02

> 0.02

> 0.02

p2ry (GeV/c)

>1

>1

[1, 15]

>1

pT2ry (GeV/c)

> 0.15

> 0.1

> 0.1

Variable

Charge2ry

Negative

or unknown

表 A.1: タウニュートリノ候補選出基準。

ここから得られた候補に対して、BDT に基づく多変量解析を適用する。BDT のトレーニング

サンプルは MC シミュレーションによって生成したイベントのうち表 A.1 の基準を満たすものが

付録 A タウニュートリノ出現解析の結果

152

Expected background

Ch.

Charm

2ry int.

τ → 1h

0.15 ± 0.03

τ → 3h

0.44 ± 0.09

τ →µ

0.008 ± 0.002

τ →e

0.035 ± 0.007

Total

0.63 ± 0.10

µ LAS

Total

ντ exp.

Obs.

1.28 ± 0.38

1.43 ± 0.39

2.96 ± 0.59

0.09 ± 0.03

0.52 ± 0.09

1.83 ± 0.37

0.024 ± 0.008

1.15 ± 0.23

0.035 ± 0.007

0.84 ± 0.17

2.0 ± 0.4

6.8 ± 1.4

10

0.016 ± 0.008

1.37 ± 0.38

0.016 ± 0.008

表 A.2: タウニュートリノ候補の期待値及び検出数。

用いられた。また教育にあたっては、表 A.1 の変数に加えて下記の変数を追加する。

pTmiss : ビーム垂直平面上での、崩壊による娘粒子を含む全ての二次粒子の運動量の和。

ϕIH : ビーム垂直平面上での、タウ粒子方向とその他二次粒子の運動量の和のなす角。

m: 親粒子の不変質量。

BDT の応答変数の MC シミュレーションからの予測と上記 10 イベントとの比較を図 A.1 に載

せる。統計解析はこの BDT 応答変数を含む確率密度関数を用いた尤度関数に基づいて行われた。

図 A.1: タウ粒子崩壊チャンネルごとの BDT 応答変数。

まずタウニュートリノ候補がバックグラウンドのみから構成される仮定はプロファイル尤度法か

ら 6.1σ で排除された。

153 ...

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