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大学・研究所にある論文を検索できる 「ダブルデッカー型希土類錯体の単分子磁石特性とフィリング制御による伝導性変調手法の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ダブルデッカー型希土類錯体の単分子磁石特性とフィリング制御による伝導性変調手法の開発

佐藤 鉄 東北大学

2022.03.25

概要

メタロフタロシアニン(MPc)は、フタロシアニン配位子(Pc)の18π電子系に基づく芳香族安定性と錯形成の容易さから、これまで多くの化合物が報告されている。これらの錯体は、金属イオンに由来する光学・磁気特性を持つことや配位子の酸化還元特性からなる豊富な電子受容能を持つことが特徴として挙げられ、古くから伝導特性や磁気特性などの固体物性が調べられてきた。中でも、二枚のPc配位子と三価の中心金属(Ln)からなるダブルデッカー型錯体(LnPc2)においては、単分子で磁石として振る舞う単分子磁石特性が報告されたり、Pc配位子が一次元に積層した部分酸化体(MPcI2、I:トリヨージドアニオン)が、中心金属やカウンターアニオンの選択によって金属伝導を示すなど、同じPc配位子を用いても、金属イオンとの組み合わせや分子配列に応じて様々な機能性を示すことが知られている。特にLnPc2錯体は、高い単分子磁石特性を示すことから、情報化社会の発展に不可欠な高密度メモリ材料などへの応用が期待され、研究が進んでいる。実際にデバイス化していく上では、より室温に近い温度で単分子磁石特性を示すことに加えて、記録された情報を電流値の変化で読み取る技術が必要とされる。この条件を満たす化合物として、伝導特性と単分子磁石特性を併せ持つ「伝導性単分子磁石」が提唱されているが、この両特性が同じ温度領域で示された化合物の報告例はこれまでになかった。本研究では、伝導特性に関わる伝導π電子と単分子磁石特性に関わる局在f電子をそれぞれ系統的に変調できる結晶性材料を提案し、その物性について報告する。以下、本論文の概要を示す。

第1章では、本研究の背景と目的について述べた後,既報の研究と本研究の位置付けについて述べる。

第2章では、ディスプロシウムダブルデッカー型錯体(DyPc2)に着目し、希土類イオン間に働く磁気双極子相互作用を用いて、単分子磁石特性を制御する方法について提案した。これまでのダブルデッカー型錯体を用いた単分子磁石開発では、配位子の酸化数や二枚のPc配位子間のねじれ角などの分子内環境に着目した設計が一般であったことに対して、本研究では希土類イオン間の距離に着目した。実験では、希土類イオン間の距離を変調するための手法として配列の異なる結晶多型を合成し、各磁気特性について比較することで分子間に働く強磁性的相互作用の影響を評価し、この手法を用いて単分子磁石特性を向上できることを示した。

第3章では、希土類イオン間の距離を変えずにPc配位子の酸化数を変えことで伝導性を付加する手法について提案した。実験から、DyPc2単分子磁石を電解酸化することで、室温で金属伝導を示す良質な酸化体単結晶([DyPc2]I2)が得られることを見出した。この電子状態の変化はバンドフィリングの比較によって説明が可能であり、単結晶反射率や伝導度測定からも評価できることを示した。また、伝導性と単分子磁石特性の共存により生じるπ-f相互作用の観測に成功した。

第4章では、希土類イオンとPc配位子のより強いπ-f相互作用が現れる系として、f電子と配位子のπ電子が非常に近いエネルギー準位を取ることで知られているセリウムダブルデッカー型錯体(CePc2)に着目し、同様の実験を行った。その結果、一次元構造に配列した中性体([CePc2]I2)において、Ceイオンの価数が揺動状態にあることがXANESスペクトルや磁化率の測定から明らかとなった。これらの結果は、同一分子内にf電子とπ電子を併せ持つダブルデッカー型錯体のような分子設計が、「π-f相互作用」を調査する上で有効であることを示したと言える。

第5章では,本論文の要約と今後の研究課題について述べる.

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