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大学・研究所にある論文を検索できる 「消化管近接局所進行切除不能膵体部癌に対する粒子線照射前スペーサー留置: 初期臨床結果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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消化管近接局所進行切除不能膵体部癌に対する粒子線照射前スペーサー留置: 初期臨床結果

Lee, Dongha 神戸大学

2021.03.25

概要

【緒言】
陽子線治療は従来の X 線治療と比較して、優れた線量分布と高い生物学的効果を有す るため、局所進行切除不能膵癌 (UR-LAPC) に対する有効な治療法として期待されて いる。しかし、膵臓は解剖学的に胃・十二指腸と近接しており、放射線性消化管障害 のリスクが高く、充分な根治線量を照射することが困難とされている。我々は、従来 より消化管に近接する腹部悪性腫瘍に対し、ゴアテックス性のスペーサーを留置し、照射経路上の消化管を排除したうえで陽子線治療を施行することで、消化管の被爆線 量の軽減および腫瘍への線量集中性の向上に成功し、良好な治療成績を報告してきた。今回、消化管近接のため根治照射施行不能な膵体部 UR-LAPC 症例に対するスペーサ ー留置後陽子線治療の成績を検討した。

【対象と方法】
2007 年 1 月から 2018 年 1 月まで神戸大学医学部附属病院においてスペーサー留置術 (胃後面・膵前面にスペーサーを留置) を施行し、兵庫県立粒子線医療センターにて陽子線照射 (70.2Gy / 26Fr または 67.5Gy / 25Fr) を施行した膵体部 UR-LAPC 9 症例を対象とした。スペーサー留置前後の computed tomography の治療計画をもとに、GTV (肉眼的腫瘍体積)、CTV (臨床標的体積;GTV+5mm)、PTV (計画標的体積;CTV+設定マージン 5mm+呼吸同期マージン 1-5mm) に対する各種パラメータ値の変化を Dose volume histogram (DVH) に基づいて評価した。またスペーサー留置後陽子線治療の治療成績についても検討した。

【結果】
スペーサー留置に伴う術後の急性期合併症は認めず、全症例で予定照射が完遂可能であった。照射後の晩期合併症としては、CTCAE v4.0 に基づき、2 例 (22.2%: 照射後 1か月、35 ヵ月) に Grade2 の胃・十二指腸潰瘍を認め、1 例 (11.1%: 照射後 4 か月) に Grade4 の胃穿孔を認め、スペーサー抜去・胃全摘術を要した。治療計画においては、スペーサー留置によって、消化管に対する D0.5cc (Gy[RBE]) (臓器体積の 0.5cc 以上にあたる最大線量), V48 (Gy[RBE]) (cc) (48Gy 以上で照射される体積) の照射安全域値を維持しながら、GTV、CTV、PTV における V95% (%) (照射予定線量の 95%以上が照射される体積の割合), V60 (Gy[RBE]) (%) (60Gy 以上で照射される体積の割合), D95% (Gy[RBE]) (標的体積の 95%に照射される線量), Dmean (Gy[RBE]) (標的体積の平均照射線量)、Dmin (Gy[RBE]) (標的体積の最低線量) のいずれの値もスペーサー留置前後で有意な改善を認めた。

予後に関しては、MST は 22 ヵ月 (診断後)、16 ヵ月 (スペーサー留置術後) であった。1 年局所制御率は 100%であった。9 例中 3 例 (33.3%) で、遠隔転移のため 1 年以内の死亡を認めた。局所進行は 2 例(22.2%: スペーサー留置後 16 ヵ月、38 ヵ月後)に認め、生存期間はそれぞれ 30 ヵ月、47 ヵ月 (スペーサー留置術後)であった。

【考察】
消化管近接膵体部 UR-LAPC に対するスペーサー留置術は技術的に可能であり安全に施行可能であった。放射線性消化管障害に関しては、Grade2 の胃十二指腸潰瘍を 9 例中 2 例 (22.2%) に認めたが、いずれも保存的加療にて軽快した。放射線性消化管障害の頻度に関しても先行論文の結果 (40-50%)と比べても、許容範囲の結果と考えられた。

予後に関しては、症例数は少ないものの、生存期間・局所制御率ともに、根治照射を施行した UR-LAPC の先行論文とほぼ同等の結果を認めており、根治照射適応外であった本研究の対象患者において、スペーサー留置術が腫瘍への線量集中性の向上に寄与した可能性が示唆された。しかしながら、根治照射にも関わらず、1 年以内の遠隔転移死亡例を 9 例中 3 例 (33.3%) に認めており、適切な症例選択が今後の課題であると考えられた。

スペーサー留置の問題点としては、異物挿入に伴う腹部違和感、感染リスクが主に挙げられる。本研究での特記すべき有害事象として、照射後 4 ヵ月目に、1 例 (11.1%)、 Grade4 の胃穿孔を認め、再手術を要した。本症例における胃穿孔の原因としては呼吸性変動を伴う上腹部照射の不安定性によるものか、スペーサーという異物の長期接触によるものかは不明であった。現在、我々は、吸収性スペーサーの臨床応用をすすめており、本素材は留置後約 3 か月で加水分解にて吸収される特性を有している。 今後、膵癌を含めた腹部悪性腫瘍に対する吸収性スペーサー手術の臨床応用が展開していくなかで、スペーサーに関連する様々な問題が解決されていく可能性があると考えている。

【結論】
消化管近接膵体部 UR-LAPC において、スペーサー留置術は安全に施行でき、かつ全症例で術後陽子線照射が完遂可能であった。スペーサー留置後陽子線治療は消化管近接膵体部 UR-LAPC に対する新たな治療選択となる可能生を有している。

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