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大学・研究所にある論文を検索できる 「頭頸部扁平上皮癌患者における放射線性顎骨壊死の危険因子に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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頭頸部扁平上皮癌患者における放射線性顎骨壊死の危険因子に関する検討

Kubota, Hikaru 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景】
 放射線性顎骨壊死(osteoradionecrosis of the jaw; ORNJ)は頭頸部扁平上皮癌(head and neck squamous cell carcinoma; HNSCC)に対する放射線治療後の重篤な晩期合併症の一つであり、ひとたび発症すると治療に難渋することが多い。近年、放射線治療技術の進歩により、強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy; IMRT)などの技術を用い、正常臓器の線量低減を図り、最適な線量分布を得ることができるようになった。特に従来の放射線治療では避けることが難しかった唾液腺線量の低減による口内乾燥の改善がよく知られている。下顎骨においてもIMRTの手法により、ORNJの発症低減が期待されている。一方で、下顎骨の耐用線量を示した文献は乏しく、線量分布の最適化には課題がある。

【目的】
 著者らは後方視的研究により、下顎骨の線量体積ヒストグラム(dose-volume histogram; DVH)を中心に、HNSCC患者におけるORNJ発症リスク因子を抽出することを目的として研究を行った。

【対象と方法】
• 症例選択
 2008年から2018年の10年間に神戸大学医学部附属病院放射線腫瘍科でHNSCCに対して根治あるいは術後放射線治療を施行された616症例を対象とした。
• ORNJ診断基準
 3か月以上持続する照射野内骨露出を認めること、及び画像上ORNJが明らかな症例も含めた。
• 評価因子
 •患者関連因子(年齢、性別、喫煙歴、飲酒歴、糖尿病の有無/Performancestatus.放射線治療前の歯科評価、放射線治療前後の抜歯)
 •腫瘍関連因子(原発腫瘍部位、T因子、リンパ節転移の有無)
 • 治療関連因子(放射線治療前の頭頸部手術及び下顎手術歴、導入化学療法及び同時化学放射線療法、照射方法)
 •DVHパラメータ(10Gy-70Gy以上照射される下顎体積の全下顎体積に対する割合; V10-V70)
• 統計解析方法
 • Mann-Whitney U検定を用いてORNJ発症群と非発症群のDVHパラメータを比較した。
 •Akaikeinformationcriterion(AIC)を用いてDVHパラメータの閾値を決定した。
 •単変量及び多変量COX回帰分析を用いてORNJの発症リスク因子解析を行った。
 •Kaplan-Meier法を用いてORNJの累積発生率の推定を行い、log-rank検定を用いてORNJ発生率の差を比較した。

【結果】
• ORNJ症例
 ORNJをきたした症例は例中46例で、発症率は全体の7.5%であった。経過観察期間中央値は40力月(範囲:3〜145か月)であった。放射線治療終了からORNJ発症までの期間の中央値は27力月(範囲:2〜127力月)であった。原発部位の内訳は、中咽頭22例、口腔18例、下咽頭3例、上咽頭2例、原発不明頸部転移癌Ϊ例であり、中咽頭/口腔癌が全体の87%を占めていた。
• DVHパラメータの比較
 DVH解析の結果、ORNJ非発症群と比較し、ORNJ発症群では下顎骨V30-V70が有意に髙値を示した。特にV60で顕著な差を認めた(12.16% vs.35.31%, p<0.0001)。
• DVHパラメータの閾値
 最適なDVHパラメータの閾値を決定するため、各パラメータ値で2群に分けた場合のAIC値を求めた。AIC値はV60を14%で二分した場合に最低値(AIC=494.19)となるため、同値をDVHパラメータの閾値とした。
•単変量解析
 患者関連因子、腫瘍関連因子、治療関連因子およびDVHパラメータの中で、V60>14%(HR6.969, 95% CI2.745-17.70, p<0.0001).中咽頭/口腔癌(HR6.667, 2.824-15.74, p<0.0001)、放射線治療前下顎手術歴(HR3.053, 95% CI1.356-6.875, p=0.0070)、放射線治療後の抜歯(HR2.630, 95% CI1.350-5.125, p=0.0045)が有意な因子として同定された。
• 多変量解析
 多変量解析には単変量解析で有意となった因子をすべて含めた。V60>14%(HR3.872, 95% CI1.460-10.27, p=0.0065)と中咽頭/口腔がん(HR3.577, 95% CI1.443-8.866, p=0.0059)が有意な発症リスク因子となった。
• 累積発症率
 3年累積発生率は、V60≦14%および>14%群で、それぞれ2.5%および8.6%(p<0.0001)であった。また原発腫瘍部位によって分類した3年累積発生率は、中咽頭/口咽癌とその他でそれぞれ9.3%および1.4%であった、(p<0.0001)。

【考察】
 本研究から、ORNJ非発症群と比較して、ORNJ発症群は下顎骨V60値が14%よりも大きく、原発腫瘍部位が中咽頭及び口腔がんに多いことが示された。
 ORNJはこれまで様々な発症リスク因子が報告されてきた一方で、下顎骨の線量評価に関する報告は乏しい。過去には70Gyを超えるような高線量の関与が示唆されてきたものの、近年の中咽頭癌$対象としたDVH解析からは下顎骨のV50やV60が発症リスク因子となると報告されている。特にMD Anderson Head and Neck Cancer Symptom Working Groupは、放射線治療を行った中咽頭癌症例を対象に下顎骨のDVH解析を行い、ORNJ発症にはV44≧42%及びV58≧25%が関与していると報告している。本研究では中咽頭癌のみならずHNSCC全体を対象としてORNJ発症について検討した。その結果、下顎骨V60>14%が発症リスク因子として同定された。
 また、原発腫瘍部位が発症リスク因子として同定された。中咽頭癌や口腔癌はその解剖学的位置から、髙線量照射を要する部位が下顎骨と近接する。そのため、他部位の腫瘍と比較すると、下顎骨線量が必然的に増加することとなる。原発腫瘍部位が発症リスク因子となることは過去にも報告されている。IMRTの技術により、腫瘍線量を担保したうえで、下顎骨V60を14%以下に低減し、最適な線量分布を得ることができれば、これらの原発腫瘍部位に関してもORNJ発生を低減できる可能性が期待できる。

【結論】
 下顎骨V60>14%、中咽頭/口腔がんがORNJの独立した発症リスク因子であることを示した。特に下顎骨V60>14%は実臨床におけるIMRT治療計画の際に、下顎骨線量に対する最適化の指標となり、ORNJの発生率を低減するために有用であると考えられる。

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