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大学・研究所にある論文を検索できる 「局所進行膵臓癌の放射線療法におけるスペーサー留置の有効性:治療計画プランにおける検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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局所進行膵臓癌の放射線療法におけるスペーサー留置の有効性:治療計画プランにおける検討

Kawaguchi, Hiroki 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景】
 膵臓癌は現在においても予後不良であり、手術における完全切除が根治手段となるものの、切除可能な症例は全体の10·15%にとどまり、多くが診断時には完全切除が困難な状況である。切除困難症例においては化学放射線療法が試みられるが、放射線療法においては周囲に胃・十二指腸・小腸といった消化管が近接しており、腫瘍に対する十分な根治線量の良好なカバーが困難となっていることが問題となっている。
 粒子線および重粒子線治療ではその線量分布の特性を生かして髙線量を処方し、篠藤らによる重粒子線治療、寺嶋らによるゲムシタビン併用粒子線治療など良好な結果を示した報告も散見されるが、消化管の近接の問題を完全にはクリアできておらず、消化管出血・潰瘍などの重大な有害事象の報告も見られる。
 神戸大学病院の福本、佐々木らは手術糸を不織布に加工した体内吸収性PGAスペーサーを開発し、それを腫瘍と消化管などリスク臓器の間に留置することにより物理的にスペースを設け、より安全かつ腫瘍に対する根治線量の良好なカバーを可能とした。またわが国では粒子線治療におけるPGAスペーサー使用に薬事承認を得るに至った。
 しかし粒子線治療は国内でも可能な施設が非常に限定され、アクセスの問題が標準治療となるうえで障壁となっている。PGAスペーサーの使用がX線治療においても有用であれば今後の新たな治療方法の確立に繋がると考えられるが、これまでにまだ検討はなされていない。
 そこで、今回切除不能膝癌症例の放射線治療計画画像を用いて強度変調放射線治療(IMRT)の治療計画プランを立てることによって、X線治療におけるPGAスペーサー使用の有用性を検討することとした。

【対象と方法】
 2014年8月から2018年1月までに放射線治療計画用のCTを撮像した局所進行膵臓癌の症例6例(膵頭部癌3例、膵体尾部癌3例)をランダムに選択し、それぞれのCTを今回の治療計画プランに使用した。いずれもスペーサーは留置されておらず、実際にPGAスペーサ一を留置した十分な経験を有する外科医とともにCT上スペーサーの留置可能な領域を決定し、仮想的にCT上にスペーサーを描出した。スペーサー厚については実際に臨床的に使用されているラインナップを参考に、5mmおよび10mm厚とした。その他ターゲットとして滕癌原発巣を肉眼的腫瘍体積(GTV)とし、GTVに顕微鏡的進展範囲を考慮して5mmマージンを設けたものを臨床標的体積(CTV)、CTVに日々の照射における設定誤差や体内臓器の動きなどを加味して5mmマージンを設けたものを計画標的体積(PTV)として描出し、またリスク臓器としては胃・十二指腸・小腸および大腸をそれぞれ描出した。彼想スペーサーの領域は、CTVおよびリスク臓器について、重なる領域をトリミングした。スペーサーなし、5mmスペーサーを留置した状態および10mmスペーサーを留置した状態の治療計画用CTそれぞれについて、PTVをターゲットにしたIMRTの治療計画プランを立てた。計画にあたっては現在標準治療として膵癌に対して一般的に行われている線量分割より高線量を採用しているRTOG1201のレジメンを参考として、PTVに対する処方線量を63Gy/28回とし、リスク臓器の制約もRTOG1201のレジメンを踏襲し、これを遵守して行った。この条件下において処方線量の95%をカバーできるPTV領域の割合(V95(%))をターゲットに対する根治線量のカバーの指標として用い、95%以上を目標、90%以上を許容とし、V95のスペーサー有無、スペーサー厚による変化を検討した。なおターゲットおよびリスク臓器の描出はVelocity version 4.0、IMRTの治療計画はEclipse version 15.6.8(いずれもVarian社製)を使用して行った。

[結果]
 膵頭部癌の1例においてスペーサーなしの状態からV95の95%以上を達成(症例①、症例②、症例③:79.2%、88.9%、95.1%)した。また膵体尾部癌の3例ではスペーサーなしの状態で1例のみV95が90%を満たしていなかった(疲例④、症例⑤、症例⑥:78.4%、91.6%、93.9%)が、スペーサー5腿を留置した状態において3例ともV95の90%以上を達成(90.8%、93.8%、95.3%)し、10mmスペーサーを用いることで3例ともに95%以上を達成(98.8%、97.3%、97.3%)することができた。ただし、スペーサーは十二指腸側への留置が困難であり、滕頭部癌の1例(症例③)では10mmスペーサーの留置状態でもV95が90%以上を満たすことができず、この症例においてはスペーサー留置でターゲットへの根治線量のカバーの改善はほとんど得られなかった(5mmスペーサー留置状態:80.9%、10mmスペーサー留置状態:80.8%)。

【考察】
 ブラッグピークと呼ばれる物理学的特性を有する粒子線に対してX線ではその特性を有さないが、X線であっても特に膝体尾部癌症例において10腿のスペーサーを用いることで胃や小腸への線量を下げ、かつPTVに対する良好な線量カバーを達成することができた。一方で本研究は遡及的かつ6例という限られた症例での検討であり、また十二指腸側へのスペーサー留置が困難であったことから、十二指腸に対しては十分な線量低減が得られなかったという制約があった。

【結論】
 今後解剖学的な多様性を含めてさらなる臨床的な検討を要するが、進行膝癌におけるPGAスペーサーの留置はX線治療においても安全かつ、ターゲットに対してより高線量な根治線量の良好なカバーを可能とし得ることが示唆された。

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