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巻頭言

竹田 伸也 鳥取大学

2021

概要

鳥取臨床心理研究,2021,第 14 巻,45
Tottori Clinical Psychology Research and Practice, 2021 Vol.14, 45

45

巻 頭 言
竹田 伸也
鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻
 公認心理師が誕生して,3 年が経つ。とはいえ,この資格が社会的に十分認知されているとは言い難い。
関西に暮らす私の知人は,床屋で髪を切ってもらう際職業を尋ねられ,「公認心理師です」と応えた。す
ると,「監査やコンサル関係でっか?」と返ってきたという。いや,それ公認会計士ですから。しかし,
様々な職種を客として迎えている床屋においてそのような理解しか得られていないというのは,深刻な
問題ではなかろうか。
 話は変わるが,昨今は「分断の時代」だといわれる。中でも,価値観の違いに伴う分断は,両者が歩
み寄るのを困難にする。「A か B か」という二項対立が際立ってしまうと,「A を大切にしたい」という
態度が「A こそが絶対だ」と先鋭化してしまう。そうなると,「対立する立場を打ち負かしたい」という
欲求が駆動しやすくなる。これは,学習理論でいう「負の強化」である。負の強化に由来した営みは,
人の心を満たしにくい。残念なことに,公認心理師の世界にも同様の分断があるように思う。
 公認心理師の資格認定が始まって以来, 2 つの職能団体が誕生した。きっと,立ち上げの中心を担っ
た人たちには,それぞれの想いや事情があったのだろう。しかし,こうした展開は,公認心理師の成長
に寄与しないのではないだろうか。そもそも,どちらに参加すればよいか迷ってしまう(なので,私は
どちらにも参加していない)。そうして,多様な力や立場を持つ心理師が分散してしまった結果,本来で
あれば多様であるがゆえに得られた成長の機会を失ってしまうかもしれない。ましてや,「A か B か」と
いう二項対立に乗ってしまい,職能団体を運営する動機が「向こうより会員数を増やしたい」,つまり対
立する相手を打ち負かしたいという「負の強化」に陥ってしまうと,もはやその先に豊かな成熟は訪れ
ない。
 そもそも,公認心理師は,現在のように異なる職能団体を立ち上げなければならないような「価値観
の違い」があるのだろうか。私は,そうは思わない。私たちが心理職を生業にする背景には,「クライエ
ントの生きづらさを少しでも何とかしたい」という動機があるだろう。そのために力を尽くしている日々
の臨床的営みは,「生きづらさを抱えた人が,生まれてきてよかったと思える社会の実現」を射程にとら
えている。だからこそ,異なる職能団体に属する心理師であれ,どちらにも属していない心理師であれ,
心理職の生業を続ける限り,私たちは価値観を共にしている。
 本専攻を巣立つ大学院生をはじめ,これからの次代を担う心理職には,窮屈な枠に囚われず,のびや
かに力を発揮してほしい。その力が,「生きづらさを抱えた人が,生まれてきてよかったと思える社会の
実現」に与することに責任と誇りを感じながら。髪を切りに行った時,「大切な仕事ですね」と言われる
か否かは,私たちの営みにかかっている。 ...

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