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大学・研究所にある論文を検索できる 「マルファン症候群の大動脈瘤形成における性差の分子機構」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マルファン症候群の大動脈瘤形成における性差の分子機構

柳, 青 東京大学 DOI:10.15083/0002007037

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 柳 青
マルファン症候群(MFS)は FBN1 遺伝子の変異が原因の常染色体優性遺伝の疾患
であり、全身の結合組織に異常をきたすが、特に大動脈基部の瘤形成と大動脈解離は生命
予後を規定する。男性患者で大動脈の拡張や大動脈イベントの発症リスク(大動脈解離や
早期の大動脈置換術が必要)が女性患者より高いことが報告されているが、その分子メカ
ニズムに関する研究はまだ少なく、MFS の大動脈瘤形成における性的二型性の原因は明ら
かにされていない。以上のことから、本研究は性ホルモンの作用に着目し、MFS モデルマ
ウスである Fbn1 C1039G/+マウスを用いて、MFS の大動脈瘤形成に伴う新たな分子メカニ
ズムの解明を目的とし、下記の結果を得ている。

1.

卵巣摘除術(OVX: ovariectomy)を行った雌の MFS マウスでは上行大動脈径が MFS
sham マウスと比べ明らかな変化はみられなか。そのため、エストロゲンによる MFS
大動脈瘤への影響は少ないことが示唆された。

2.

プロピオン酸テストステロン(TP)投与により雌 MFS マウスでは大動脈の拡張と、
上行大動脈組織のエラスチンの断裂の増加がみとめられた。テストステロンが MFS
大動脈瘤の形成を促進させることが示唆された。

3.

精巣摘除術(ORX: orchiectomy)を行った雄の MFS マウスでは大動脈径の拡張が抑制
されていた。また、上行大動脈組織のエラスチンの断裂とプロテオグリカンの貯留も
抑制されていた。これより、アンドロゲンの減少は MFS 大動脈瘤の拡張を抑制し、
大動脈組織細胞外基質の恒常性を維持出来る可能性が示唆された。

4.

雄の MFS ORX マウスでは上行大動脈の ERK1/2 と SMAD2 のリン酸化の亢進が
MFS sham マウスと比べ明らかに抑制されていた。さらに MFS sham マウスでみら
れた大動脈外膜での過剰なマクロファージ の浸潤も ORX により抑制されていた。ま
た、MFS sham マウスの上行大動脈でみられた MMP の過剰な活性化と ROS の亢進
も ORX により抑えられていた。MFS マウスの上行大動脈では ORX によるアンドロ
ゲンの低下が TGF-βの non-canonical pathway の ERK と canonical pathway の
SMAD シグナルを抑制し、マクロファージ浸潤の抑制による炎症の改善と MMP、

ROS 亢進を抑制することが示唆された。
5.

雄の MFS sham マウス上行大動脈組織では特に F4/80 と IL-6 の過剰な発現がみとめ
られ、ORX により抑制されていた。さらに in vitro の実験ではテストステロンで刺激
した RAW264.7 細胞の IL-6 と IL-1βの過剰発現がみられた。テストステロンがマク
ロファージに直接作用し、炎症生サイトカインの発現増加を促進させることで MFS
大動脈瘤組織の炎症を亢進させ、病態を増悪させた可能性が示唆された。

以上、本論文はアンドロゲンが MFS 大動脈瘤の形成における性差の重要な原因因
子であることを突き止め、男性 MFS 患者の大動脈イベントの発症リスクが女性よりも高
いのは、アンドロゲンの存在による炎症への関与が重要であり、特に IL-6 を介した可能性
が高いことが示唆された。これにより、MFS の大動脈瘤形成における性的二型性の原因と
なる新たな分子メカニズムを見出し、今後の MFS 大動脈瘤の治療に新たな方向性を示す
ことができるものと考える。
よって本論文は博士(
( 医 学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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