リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Human Papillomavirus [HPV] 16,18,52,58型における子宮頸癌発癌形式の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Human Papillomavirus [HPV] 16,18,52,58型における子宮頸癌発癌形式の検討

馬場, 聡 東京大学 DOI:10.15083/0002007050

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 馬場 聡
本研究は子宮頸癌発生段階における CIN の状態での Human Papillomavirus (HPV) 16, 18, 52,
58 のトランスクリプトームの違いを検討する目的で、子宮頸部異形成の検体から、癌遺伝
子である E6・E6*、ケラチン化に関わる E1^4、カプシド形成に関わる L1 を標的として発
現の比較検討を行った。更に癌化リスクのより高い HPV18 に注目し、3 次元細胞培養モデ
ルを目指したものである。下記の結果を得ている。
1.
E6/E6*の発現率が CIN の grade に合わせて上昇していくのは、本検討と既報で結果が一致
していた。E1^4 と L1 の発現率については CIN の grade との相関を認めなかった。そのこ
とは、HPV のジェノタイプが異なっていても癌遺伝子である E6/E6*が子宮頸癌の進行と
ともに増加することは必要不可欠であるが、E1^4 や L1 については grade に依存せず、
HPV ジェノタイプ毎に個別の発現パターンがあることが示唆された。
2.
L1の発現量は HPV52 感染患者が HPV16, 18, 58 感染患者に比して有意に多かった(p <
0.05)。また HPV18 感染患者では発現をほとんど認めなかった。また陽性率に関しては、
HPV52 では 78 %、HPV58 では 44 %、HPV16 では 31 %で陽性であったが、HPV18 では
11 %であった。HPV18 感染患者で L1 の発現を認めないことは、CIN の早期の段階で細胞
分化の障害と、早期のインテグレーションが起こることを示唆し、そのことが HPV18 感
染での癌化速度の速さに関与していると示唆された。
それに比して、HPV52 は CIN2, 3 のように進展している場合でも L1 の発現が非常に高い
ことが分かった。通常は細胞分化の障害による CIN の進展に伴い、L1 の発現は少なくな
っていくと考えられている。HPV18 に比して HPV52 においては L1 の発現が、CIN が進展
しても高値であることは、HPV52 感染の病変では細胞分化を伴う HPV の感染生活史が維
持されていることが示唆される。また CIN3 においても HPV52 感染患者では L1 が高発現
であることは、インテグレーションがより遅い段階で起きている可能性を示唆した。
3.
NIKS ならびに NIKS-HPV18 ではマトリゲル培養のみで細胞集塊の増大を認め、浮遊状態
でスフェロイドを形成しなかった。陽性コントロールとして使用した HeLa 細胞では足場

非依存的にスフェロイド形成を確認した。また NIKS-HPV18 細胞と NIKS 細胞の対比にお
いて、2次元細胞培養では MTT 活性に有意差はないが、3次元細胞培養では有意に細胞
集塊を形成することが確認された。
以上から NIKS 細胞に HPV18 を導入するだけではスフェロイド能力がなく、また足場とし
てはコラーゲンⅣだけでは不十分であり、マトリゲルのラミニンによる細胞外マトリック
スが NIKS ならびに NIKS-HPV18 の3次元細胞培養には必要であることが示唆された。
更に HPV18 の遺伝子は3次元細胞培養でより発現が活性し、細胞増殖を促進・癌化させ
ることが示唆された。これは3次元細胞培養では癌遺伝子がより活性化するといった既報
と合致する。更に遺伝子解析により3次元細胞培養では2次元細胞培養に比してウイルス
感染パスウェイや癌化のパスウェイが活性化することが示された。また early promotor の発
現活性が late promotor に比して相対的に高くなることも確認された。このことは生体にお
ける基底層での癌化進展時に観察されることと一致する。
本論文の特記すべき点として、L1 の発現量については HPV18 で発現を認めなかった点が
挙げられる。L1 の主な役割はカプシド形成であり、そのことは細胞分化を伴うウイルス産
性能・持続感染に関与していると考えられる。それゆえ、HPV18 感染細胞にて L1 の発現
を認めなかったことは、HPV18 の感染維持にはキャプシド産生を介した HPV18 の複製が
不可欠ではないことを示唆すると考えられる。これは本研究の結果は、HPV18 由来の癌化
の過程において新しい知見を加えたと考えている。
また本研究では NIKS-HPV18 の3次元細胞培養モデルの確立をし、遺伝子解析により
HPV18 感染細胞の癌化の過程を反映していることを確認している。
マトリゲルを用いた NIKS-HPV18 を用いた3次元細胞培養は、より生体内に近い環境での
HPV18 による細胞癌化モデルとして、今後の研究で使用できる可能性があると考えてい
る。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る