4-phenylbutyric acid enhances the mineralization of osteogenesis imperfecta iPSC-derived osteoblasts
概要
〔目的(Purpose)〕
骨形成不全症(OI)は主にCOLIAl、COL.1A2遺伝子変異により骨脂弱性をきたす疾患である。対症療法としてビスホスホネート製剤による治療が行われているが、重症例に対する効果は限定的である。チーフェニル酪酸(4-PBA)はOIゼブラフィッシュモデルに対して効果を示し、新規治療として期待される薬剤である。OI患者由来の細胞を用いて、OIの病態解析とチーフェニル酪酸の効果を検討することを目的とする。
[方法(Methods)]
COLIAlあるいはCOLIA2遺伝子変異を同定したOI患者6例(グリシン換変異2例、ナンセンス変異1例、エクソンスキップ変異3例】から、皮膚線維芽細胞を採取し、健常者由来線維芽細胞3株と比較して実験を行った。小胞体(ER)内への1型コラーゲン蓄積の程度を蛍光免疫染色によって評価した。1型コラーゲンの伝子発現をRT-qPCRで、蛋白をBLISAで評価した。細胞から分泌された1型コラーゲンの電気泳動パターンをSDS-PAGEで、翻訳後修飾をLC-ISで評価した。型コラーゲンのらせん糖造の異常をCollagen Hybridizing Peptideで検出した。線維芽細胞からips細胞を作成し、iPS細胞から分化誘導した骨芽細胞での石灰化能をアリザリンレッド染色とCa定量により評価した。上記の実験で4PBAの効果を検討した。
[成績(Results)]
グリシン換変異とエクソンスキップ変異のOIの線維芽細胞ではプロコラーゲンの過剰なEへの醤積がみられ、4-PBAによって蓄積が減少した。1型コラーゲンの道伝子発現、蛋白量はともにグリシン換変異の0Iで増加しており、4~PBAによっていずれも減少した。分泌された型コラーゲンの電気泳動パターンはグリシン置換変異のOIで健常より幅の広いバンドがみられ、LC-MSではリジンの糖鎖過修飾がみられたが、4-PBAによる変化はみられなかった。I由来の1型コラーゲンにはらせん構造の異常が検出され、4PBAによって異常が減少した。誘導芽細胞の石灰化能はグリシン置換変異のOIで低下しており、4PBAの添加によって石灰化能が改善した。
〔総括(Conclusion)〕
従来、1型コラーゲンの質に異常があるとされてきたグリシン換変異のOIは1型コラーゲンの量の異常も有する可能性がある。4PBAは過剰な1型コラーゲンの産生を抑制することで取内の1型コラーゲンの蓄積を減少させることに加えて、らせん構造を改善させることで石灰化能を促進させる可能性がある。我々は0Iの治療薬として4-PBAの国内特許を2018年に取得しているが、4-PBAは既に他の疾患に対して臨床応用されているため、0Iの新規治療薬として期待される。