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大学・研究所にある論文を検索できる 「細胞内移行性アプタマーによるアンチセンス核酸の細胞内デリバリー及び細胞内標的に対するアプタマー創製に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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細胞内移行性アプタマーによるアンチセンス核酸の細胞内デリバリー及び細胞内標的に対するアプタマー創製に関する研究

田中, 敬介 大阪大学

2021.03.24

概要

ヒトの体内には疾患への関与が解明されていながら創薬標的にすることができていない数多くの標的候補分子が存在する。特に、細胞内には細胞内タンパク質だけでなく核酸分子も有望な標的として存在する。そのため、これらを標的とした医薬品を創成するための様々な創薬方法が研究されている。これまでに細胞外タンパク質、膜タンパク質を標的とした創薬として大きな成功を収めている抗体では、その分子サイズによって細胞内タンパク質への適応が困難である。細胞内の分子を標的とした創薬として、低分子化合物と抗体の中間の分子量を有する中分子創薬の研究がなされている。細胞内の核酸分子を標的とした中分子としては、核酸分子であるアンチセンス核酸 (ASO) やsiRNAなどが挙げられる。一方、細胞内タンパク質を標的とした中分子としては、ペプチドやアプタマーが挙げられる。

ASO、siRNAについては近年盛んに研究が行われ、複数の医薬品が上市されている。しかしながら、様々な疾患へ広く適応するためには対象臓器へのデリバリーが課題である。安定性や血中滞留性向上のために現在広く用いられている人工核酸を導入したASO、siRNAは肝臓、腎臓へ集積し、それ以外の臓器の疾患への適応が困難となっている。この課題に対して、膜タンパク質に対するリガンドをASO、siRNAへコンジュゲートし、リガンドのエンドサイトーシスを利用し、標的膜タンパク質が発現している臓器への特異性を高める方法が注目されている。しかし、現状、上市に至っているのは肝臓を標的としたリガンドをコンジュゲートしたもののみであり、その他の臓器を標的とした有用なリガンドの開発が求められている。

ペプチド、アプタマーは抗体よりも分子量が低く、抗体と同程度の結合親和性、特異性を有していることから、細胞内タンパク質を標的とした中分子創薬として期待されている。しかし、最低でも数kDa の分子量を有するため、細胞内へ受動拡散しないことなど、医薬品として用いるためには様々な課題が存在している。

本研究では、これらの課題を解決するために、細胞内移行性を有するアプタマーを利用することを考えた。アプタマーとは一本鎖のDNA又はRNAからなる分子であり、立体構造を形成し、標的分子に特異的に結合する。アプタマーはランダムな配列を有するライブラリの中から、目的の機能を有する配列を選別する形で創製される。本研究で着目した細胞内移行性アプタマーとは、膜タンパク質に結合しエンドサイトーシスされることで、細胞内へと移行する機能を有するアプタマーである。この細胞内移行性アプタマーをASOにコンジュゲートすることで、ASOの細胞内への輸送を試みた。どのような特徴を有する膜タンパク質を標的とすることで、高い細胞内移行、ASO活性の向上に繋がるか不明であることがリガンド開発における課題の一つであると考えた。そのため、培養細胞そのものを標的とし、細胞内移行性を指標としてアプタマーの創製を行なった。これにより、標的タンパク質を指定することなく、細胞内移行性の高いアプタマーを創製することが可能である。その際、異なる種類の人工核酸を導入したライブラリを作製し、それぞれからアプタマーを得ることで、細胞内移行性の向上に有用な人工核酸についても検討した。その結果、トリプトファンのアミノ酸側鎖構造を有する人工核酸を導入したアプタマーが最も高い細胞内移行性を有していた。

このような構造を有する人工核酸が、タンパク質との結合親和性向上に有用であることは過去に報告があり、今回の結果も膜タンパク質との結合親和性が向上した結果であると考えられる。創製したアプタマーにASOをコンジュゲートし、ASOによる標的RNA分解活性を測定した。予想とは異なり、アプタマーをコンジュゲートしたASOによる標的RNA分解活性は、何もコンジュゲートしていないASOと比較して向上しなかった。これは細胞内へ移行したアプタマーがリソソームに集積することが要因であると考え、エンドソーム脱出を促進する分子としてクロロキンを同時に添加しASOの活性を評価した。その結果、アプタマーをコンジュゲートしたASOは何もコンジュゲートしていないASOに比べて、高い標的RNA分解活性を示した。以上の結果より、本研究で行なったアプタマー創製方法によって、標的膜タンパク質を指定することなく、細胞内移行性の高いアプタマーを創製することに成功した。また、アプタマーによるASOの活性向上には細胞内移行性だけでなく高いエンドソーム脱出能が重要であることが示された。今後、それらの機能を有するアプタマーの創製方法を開発することでさらなる改善が期待できる。

続いて、細胞内タンパク質を標的とした中分子創薬においてアプタマーを利用する際の課題について考察し、その 課題及び細胞内移行性の課題を解決可能なアプタマー創製方法を考案した。タンパク質を標的とした従来のアプタマー創製方法の多くはリコンビナントタンパク質を用いて試験管内の系で実施される。しかし、細胞内は塩濃度、分子密度、夾雑タンパク質の存在など、試験管内の系と条件が大きく異なる。この細胞内条件と選別時の条件の解離をなくすことが、細胞内タンパク質を標的としたアプタマー創薬を行うためには必要であると考えた。新たなアプタマー創製方法として、タグ標識された標的タンパク質を細胞に発現させ、その細胞とライブラリをインキュベートした後に、細胞を破砕しタグによる標的タンパク質の回収を行う方法を考案した。これにより細胞内に移行し、かつ標的タンパク質に結合した配列のみが選別される。本研究では標的タンパク質としてbeta-cateninを選択し、この方法によるアプタマー創製を試みた。前項の結果より細胞内移行性の向上に有用であった人工核酸の導入、タグによる標的タンパク質回収の際の非特異的な結合の抑制を行うことで、アプタマーの創製に成功した。創製したアプタマーは細胞内移行性を有することと、リコンビナントbeta-cateninへの結合活性を有することが明らかになった。考案した細胞内標的タンパク質に対するアプタマー創製方法はこれまでにない方法であり、今回の結果は細胞内タンパク質を標的としたアプタマーの創製につながる大きな成果である。

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