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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Membrane Permeable Oligonucleotides」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Membrane Permeable Oligonucleotides

SHU, Zhaoma 名古屋大学

2020.04.02

概要

近年アンチセンス核酸や RNA 干渉を利用した核酸医薬に注目が集まっている。これらの方法では、配列を設計したオリゴ核酸分子を生体に導入するだけで、標的とするメッセンジャーRNA (mRNA)からのタンパク質合成を特異的に抑制することが可能である。この原理を利用すれば、病気の原因となる mRNA のタンパク質発現を阻害することで疾病治療が可能になる。従来の低分子医薬では、基本的に標的酵素に結合しその機能を阻害することを目指して医薬分子が開発される。しかし、標的酵素に特異的に強く結合する低分子を設計するのは、計算科学が発達した現在でも困難である。一方、核酸医薬は標的 mRNA に対して結合する分子を、配列情報に基づいて簡単に設計することが可能である。そのためこれまで治療薬の開発が困難であった病気に対して核酸医薬を適用できると期待され、数多くの核酸医薬分子の開発が進められている。

しかしながら、核酸医薬にも解決すべき大きな課題がある。核酸分子が細胞内に入らないという問題である。アンチセンス核酸や RNA 干渉法では 20 塩基長程度の1本鎖 DNA や2本鎖RNA が活性分子として用いられる。これらオリゴ核酸分子はリン酸部に 起因する多数の負電荷をもっており、細胞膜を透過するのは物理的に極めて不利となる。細胞膜の表面はリン酸やスルホン酸の負電荷で覆われ、細胞膜内部は脂質により疎水性 である。細胞膜の透過には、疎水性かつ分子量が小さい分子が有利となる。核酸分子は 比較的高分子で負電荷を有することから、細胞膜透過性が低い。

この膜透過性の問題に対しては、従来のカチオン性リポソームに代表される高分子担体が用いられてきたが、活性分子に対し過剰量の担体を必要とすることや、担体に由来する細胞毒性などの問題がある。さらに、エンドソームから細胞質への放出効率の低いという問題もある。以上のように、既存のオリゴ核酸の細胞内デリバリー法には多くの課題があり、これらの問題点を解決する手法の開発が求められていた。開発する手法の満たすべき要件として、①容易にオリゴ核酸に導入できる構造であること、②低分子量の修飾であること、③細胞毒性を誘発しないこと、の 3 点を設定した。

本論文は、ジスルフィド構造を用いた新規オリゴ核酸の送達法の開発研究についてまとめたものであり、序論、本論三章により構成されている。

第一章では、核酸化学合成のメジャーな手法であるホスホロアミダイト法で、新規合成した環状と直鎖状のジスルフィドユニットをオリゴ配列に導入し、それら修飾オリゴ核酸の物性・活性評価を行った。この修飾オリゴ核酸は、培養細胞への投与 10 分後には、細胞質に到達した。ジスルフィド修飾オリゴ核酸のこの急速な細胞質内分布は、エンドサイトーシス非依存的な取り込み経路の存在を示唆している。種々のメカニズム解析実験により、修飾オリゴ核酸は細胞表面のチオール基とのジスルフィド交換反応により細胞質に取り込まれることが明らかになった。このアプローチは、既存のオリゴ核酸細胞デリバリー法の問題を解決する有効な手法となることが期待される。

第二章では、ジスルフィド結合でマスクされたアミノユニットで構成されるプロアミノユニットに基づくオリゴ核酸の新しい送達法を開発した。ジスルフィドユニットを用いてカチオン性アミノ基をマスクし、プロアミノ基を持つ新規のホスホルアミダイト体を設計・合成した。このプロアミノユニットを導入したオリゴ核酸は、膜透過性の向上、効率的な細胞質内分布、および最小限の細胞毒性を示した。また。この送達機構は細胞膜上のチオール基とジスルフィド基との交換反応に基づくことも証明した。さらに、動物動態実験でプロアミノ修飾は、オリゴ核酸の遺伝子サイレンシング効果に影響せず、肝臓へのオリゴ核酸の送達を促進した。

前章の研究では、細胞膜上のチオール基とジスルフィド基との交換反応という送達機構において、ジスルフィド部分の反応性が送達効率を決定することが示唆された。そこで第三章では、送達効率を更に向上させるために、ジスルフィド部分の構造誘導化を検討した。また修飾オリゴ核酸の物性向上を目指し、オリゴ核酸のリン酸部位の骨格構造の検討も行った。環状ジスルフィドユニットを五員環構造に置き換えることで、ジスルフィドユニット一つで膜透過性の向上を実現した。また、リン酸部位をホスホジエステル骨格に置き換えることにより、修飾オリゴ核酸の親水性が向上し取り扱いが容易になると共に、高収率での分子合成が可能となった。

本研究で開発したジスルフィド法は、非常にシンプルな修飾導入により、従来法では不可能だった高効率・短時間で細胞質内への薬理活性オリゴ核酸の細胞質内導入を可能とした。本手法はオリゴ核酸医薬の細胞内デリバリー法として非常に有望である。

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