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大学・研究所にある論文を検索できる 「画像誘導放射線治療における照合画像取得線量と治療線量の包括的評価に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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画像誘導放射線治療における照合画像取得線量と治療線量の包括的評価に関する研究

富田, 哲也 筑波大学

2021.02.04

概要

【目的】
近年,画像誘導放射線治療(image guided radiation therapy: IGRT)が広く普及し,高精度治療に多用されている.放射線により照合画像を取得するIGRTは被ばくを伴い,IGRTの一種であるcone-beam computed tomography(CBCT)を毎回の治療の際に撮影すると患者の被ばく線量が1Gyを超える場合もある.しかし,臨床で使用されている放射線治療計画装置では照合画像取得に伴う線量(imaging dose)を計算できず,治療線量との包括的な評価に至っていない.本研究では,CBCT施行時のimaging doseを高精度に計算して,治療線量と合算できるシステムを構築し,合算した線量分布を用いて治療計画を包括的に評価することを目的とした.

【対象と方法】
筑波大学附属病院で前立腺がんに対して強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)を施行した患者20例,上咽頭がんに対してIMRTを施行した患者8例を対象とした.各患者の治療計画用computed tomography(CT)画像を用いて,Monte Carlo(MC)シミュレーションにより39回治療した際の骨盤部CBCT(前立腺がん)および頭頸部CBCT(上咽頭がん)のimaging doseを計算した.CBCTの撮影modeはhalf-fan modeとfull-fan modeとした.治療線量と臓器の輪郭は,Pinnacle3v9.10(Philips Medical Systems, Fitchburg, WI, USA)もしくはRayStationv6.2(Ray Search Laboratories, Stockholm, Sweden)で立案したものを利用し,線量の合算とdosevolumehistogramの解析はMATLABr2018b(The Math Works Inc., MA,USA)の自作プログラムで行った.ターゲットの線量はD2(Dxとは体積のx%に投与される線量のこと),D98および均一性の指標であるhomogeneity index(HI)を評価し,リスク臓器(organ at risk: OAR)の線量はD2,D50を評価した.前立腺IMRTにおいては,直腸のV75(VyとはyGy以上が投与される体積のこと),V70,V65,V60および膀胱のV80,V75,V70,V40を評価した.さらに,Lyman-Kutcher-Burmanモデルを用いて骨盤部臓器と頭頸部臓器の正常組織障害発生確率(normal tissue complication probability: NTCP),Schneiderのモデルを用いて骨盤部の二次発がんリスクを評価した.

【結果】
39回治療を実施した際の骨盤部CBCT doseは,half-fan modeのD50の平均が前立腺,直腸,膀胱いずれも1Gy弱であったが,骨盤骨は1.76±0.27Gyと高かった.Full-fan modeでは線量が低減する傾向であったが,直腸については25.0%増加した.頭頸部CBCTdoseは,骨盤部のCBCT doseと比べて半分から1/10程度であり,D50の平均は,左右の水晶体が約2cGy,それ以外は約10-20cGy,最大でも右耳下腺の19.69±1.13cGyであった.ターゲットの線量は,骨盤部CBCTにおいてD2がhalf-fan modeで0.90Gy増加し,full-fan modeで0.76Gy増加した.頭頸部CBCTにおいてはターゲットのD2が約0.2Gy増加した.HIは骨盤部,頭頸部ともに変化を認めなかった.骨盤部におけるOARの線量は,Radiation Therapy Oncology Group 0415の線量指標で評価した.直腸は,撮影modeに関わらずV75が約0.1%,V70,V65,V60が約0.3%増加した.膀胱は,full-fan modeでV80,V75,V40が約0.4%,V70が0.3%増加し,half-fan modeでV80,V75が約0.6%,V70が0.4%,V40が0.8%増加した.頭頸部におけるOARの線量はD2,D50を評価し,全てのOARで0.1-0.2Gy増加した.治療線量にCBCT doseを追加すると,直腸のNTCPは,撮影modeに関わらず0.46%から0.53%に増加した.膀胱のNTCPは,CBCT doseを追加しても最大0.02%であった.頭頸部においては,CBCTdoseの追加によって脊髄のNTCPが0.89%から0.91%に,右耳下腺のNTCPが40.07%から40.88%に増加した.二次発がんリスクは,CBCT doseの追加によって膀胱が0.26%から0.27%に,骨盤骨が0.09%から0.11%に増加した.

【考察】
本研究で構築したCBCTのシミュレーション体系を用いて,楕円形ファントム内の実測値とMC計算値を比較すると,絶対値で最大0.23cGyの差であり,先行研究と比較して同等以上の精度が担保されていることが確認できた.したがって,本システムにより高精度にCBCT doseを評価できると考える.従来考慮されていなかったimaging doseについて,米国医学物理学会(American Association of Physicistsin Medicine)が刊行したTaskGroup180reportでは,処方線量の5%を超える場合には治療線量に含めることを推奨している.しかし,その方法は明記されておらず,imaging doseの取得も容易ではない.本研究において,骨盤部は前立腺,直腸,膀胱,および骨盤骨の線量を,頭頸部は脳幹,脊髄,左右耳下腺,および左右水晶体の線量を詳細に示した.患者の体形,撮影条件や固定具の使用状況などで多少誤差は生じるものの,治療計画の際に参考値として利用できると考える.本邦においては,診療用放射線に係る安全管理体制の構築の一環として,撮影線量に関する管理・記録が求められているが,IGRTにおける撮影線量に関する線量管理・線量記録の指針は構築されていない.本研究で構築したシステムはCBCT doseと治療線量を合算して包括的に評価することが可能であり,線量管理・線量記録の一手法になり得るものと考える.

さらに本研究では,構築したシステムを用いてCBCT doseを含めた治療計画の包括的評価を線量分布と障害発生リスクから行った.線量分布はCBCT doseによって均一性が乱されることなく,撮影範囲全体の線量が増加し,骨盤部CBCT(39回分)では最大1.3Gy,頭頸部CBCT(39回分)では最大0.6Gy増加した.骨近傍では軟部組織の3倍程度の線量になるため,骨近傍にOARがある場合には慎重な評価を要する.しかし,CBCT doseによる二次発がんリスクなどの障害発生確率の上昇はわずかであり,CBCTを控える理由にはなり得ないと考える.むしろ,IGRTがもたらす位置照合精度の向上によって,照射範囲を最小限に抑えることが可能となり,障害発生割合が低減することの方が重要である.当然ながら,無用な被ばくは最低限に抑えるべきであり,被ばくを伴わない表面モニタや超音波モニタの併用,撮影条件の調整やfull-fan modeの活用などの考え得る被ばく低減対策は施すべきである.

【結論】
本研究では,MC計算によってCBCT doseを高精度に取得し,治療線量と合算して包括的に評価できるシステムを構築した.さらに,構築したシステムを用いて,これまでに提案されていないCBCT doseと治療線量の合算線量を評価する手法を確立した.本研究から,治療回数分(39回分)のCBCT doseを合算しても前立腺IMRTと頭頚部IMRTの治療計画に大きな乖離を生じないことが明らかになった.

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