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大学・研究所にある論文を検索できる 「鉄骨架構に耐震要素として挿入されたCLTの構造設計手法に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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鉄骨架構に耐震要素として挿入されたCLTの構造設計手法に関する研究

福本, 晃治 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23933

2022.03.23

概要

本研究は、鉄骨架構に耐震要素として挿入されたクロス・ラミネイティド・ティンバー(Cross Laminated Timber 以下、CLT)の構造設計手法に関する研究である。

第1章では、その研究の目的と背景について述べている。これまで、主として3階建て程度までの低層建物にCLTパネル工法が適用されてきたが、大規模、高層建築物へのCLTの利用を拡大するべく、CLTを耐震要素として鉄骨架構に挿入した構造システムを提案し、高耐力を必要とする高層建築物へのCLTの活用を目指している。

第2章では、初期の設計事例と抽出された課題について示している。5階建ての鉄骨造にCLTを耐震要素として配置し、従来から用いられている引きボルトとドリフトピンによるせん断接合を用いた構造設計を実施して2019年に竣工に至った。この設計事例において、CLT耐震パネルを鉄骨架構に組み込むことによりCLTの構造性能を効率よく発揮させることが可能であることを示した。また、保有水平耐力計算までを含めた一連の構造設計手法を提示し、耐火性能まで含めた本構造システムの有用性を確認した。一方で、構造特性係数Ds値の合理性、引きボルトの水平耐力への寄与率、応力解析モデルの煩雑さについては課題が残った。

第3章では、上記の課題を受けて新たな接合形式による構造システムの提案について述べられている。先の設計例では、鉄骨造とCLT耐震パネル(以下、「CLT」と略す)の接合として引きボルトを採用した設計事例を示したが、引きボルトの角孔の端あき部での破壊が生じやすく、その耐力が設計上支配的で引きボルトが発揮できる引張力が頭打ちとなり、引きボルトの水平耐力への寄与が薄いことが判った。また、応力解析においては、引きボルトやCLT支圧部などの接合要素を全てバネ要素でモデル化する必要があり、応力解析モデルが煩雑で設計実務上多大な労力を要する。そこで、筆者らはCLTの接合部の簡易化とCLTの水平耐力確保の両立、及び簡便でかつ実挙動との適合性が高い応力解析手法の構築を目指し、引きボルトがない接合方法を用いた前例のない構造システムを新たに考案した。

第4章では、前章で提案された構造システムに対する架構実験の概要が示されている。CLTの破壊性状やCLTが発揮する剛性と耐力、及び繰り返し加力による履歴特性を明らかにするため、CLTの配置枚数をパラメータとした第1シリーズと、CLTのアスペクト比及び鉄骨の梁断面を変化させた第2シリーズの架構実験を実施した。その結果、以下の知見が得られた。

鉄骨架構にCLTを挿入することで、全ての試験体のCLTで支圧破壊、又はせん断破壊に至りCLTが保有する最大耐力を発揮させることができた。また、鉄骨架構のみの場合に比べて水平剛性で最大3.48倍、水平耐力で最大2.67倍まで増大し、耐震要素としての有用性が確認された。

第5章では、単純化された状態として上下を剛体により拘束されたCLTに水平力が作用した場合の応力伝達をモデル化し、CLT支圧部の支圧領域幅と、水平剛性の理論的な計算方法が誘導されており、本論の基礎となる理論が展開されている。

第6章では、提案された構造モデルを基に構造設計手法が提案されている。実験結果と併せて静的弾塑性解析を用いた検討を実施し、CLT隅角部における支圧力の伝達について定量的に検証し、更にCLTの水平剛性評価手法と簡易な応力解析モデルの構築を行った。具体には、CLT支圧部の支圧剛性は圧縮ヤング係数と比例する傾向にあり、支圧剛性は圧縮ヤング係数の1/290とする剛性計算式を提案した。さらに、静的弾塑性解析を用いたパラメトリックスタディにより、鉄骨の梁剛性とCLTの回転剛性の比率と支圧領域幅との関係を検討し、理論計算値に対する支圧領域幅の低減係数算定式を導いた。

以上の知見をもとに、CLT支圧部の弾性限界時、終局時における耐力式を提案し実験結果と良く適合することを確認した。

第7章では、構造特性係数Ds値について検討されている。破壊モードに関わらずCLTのみを取り出した場合のDs値は0.3~0.5となり全試験体の平均値で約0.35となった。

CLTの負担水平力比βとDs値との関係は明確ではないものの、建築基準法との関係では筋交いとしてのCランクと評価することですべての実験結果を包含する結果となった。

以上のように、CLTと鉄骨梁接合面間における支圧力の伝達についての耐力評価方法、CLTの水平剛性評価方法、及びCLTをブレース要素に置換した応力解析モデルを提案されており、本構造システムの汎用性の高い構造設計手法として活用されることが期待される。

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