リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「カラマツ小径丸太を用いた積層材および接合部の力学解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

カラマツ小径丸太を用いた積層材および接合部の力学解析

河, 頻 名古屋大学

2021.07.26

概要

小径丸太は未成熟部が占める割合が高く, 強度が低いため, その用途のほとんど用途はボード, パルプやエネルギーなど, 価値の低い製品である. このような小径丸太を競争力のある製品で活用することは, 小径丸太を有効利用する上で意義あることである.小径丸太の構造用材料としての利用は,韓国以外の国々でも課題となっており,これまでにも関連する研究が多くなされたが, 小径丸太から得られる製材は, 一般的に断面寸法が小さいことから, 構造用材料としての利用は容易ではない.

そこで, 本研究は, 未成熟部を含む小径材を有効利用するため集成加工し, 競争力のある構造用材として活用できる可能性を確認することを目的とした. 小径丸太から得られた正角材から積層梁材と積層柱材を開発した. これらの部材は, 建設部材として大きな寸法を得るために, 垂直および水平の積層によって製造された. これらの部材は, 強度と剛性を強化するために, 小径丸太だけでなく大径丸太も使用した.

これら積層材の構造利用を実現するためには, 接合した際の力学性能を把握する必要がある. 積層材による柱- 梁の接合方法として, グルード・イン・スティール・ロッドがある. これは, 部材にドリル穴を設けて, そこに異形棒鋼を差し込み, さらに異形棒鋼とドリル穴の隙間に接着剤を充填させることで部材を接合するものである.本研究では, これらの積層材を構成部材とするグルード・イン・スティール・ロッドを用いた接合部のモーメント抵抗性能を調べた. 加えて, 力学解析により, この接合部の回転剛性および最大モーメントを理論的に計算することを試みた.

これらの積層材および接合部を実建築物に適用するためには, 建築物の構造解析および構造設計による構造利用の検討が必要である.本研究では, これらの積層材および接合部の力学解析結果を, 実建築物に適用した場合の弾性応力解析を実施し, 構造利用の検討を行った. 加えて, 構造利用の検討のため, 本研究では, これらの積層材にグルード・イン・スティール・ロッドを用いた接合部のせん断抵抗性能を調べた.

まず, 小径丸太から得られる正角材に, 大径丸太からの正角材やラミナを併せることで, 力学的な補強を施した集成梁材および集成柱材を開発し, これらの強度性能を実験的に検証した.積層材の試験体作成には,韓国産のⅰ )カラマツの小径丸太,ⅱ)カラマツおよびベイマツの大径丸太,ⅲ )カラマツおよびベイマツのラミナを供した.

上記の供試材を用いて, 積層梁試験体8タイプを用意した. 曲げ試験は実大材スケールの曲げ試験機を用いて三等分点四点曲げ試験を実施した. MOE を求めたところ,小径丸太から得られる正角材のみを用いた試験体では, 9.0 GPa となり, これは従来のラミナ積層による集成梁材の 10.7 GPa を下回った. 一方, 大径丸太からの正角材やラミナによって補強した試験体では,10.3~ 14.7 GPa となった.MOR に関すると,小径丸太からの正角材のみの試験体では 27.6 MPa であり, これは集成梁材の 51.7 MPa を大きく下回った.一方,大径丸太からの正角材やラミナによって補強した試験体では, 一部では 30.8 MPa と低い値を示したものの, その他は 39.2~ 48.8 MPa となり, 大きくは劣らない結果となった.

供試材を用いて, 積層柱試験体は8 タイプを用意した. 圧縮試験は実大材スケールの圧縮試験機を用いて試験を実施した. 集成柱の圧縮試験によれば, 小径丸太から得られる正角材のみを用いた試験体は2 タイプあり, 圧縮ヤング率はそれぞれ 9.4, 8.1 GPa であった. 一方, 大径丸太からの正角材やラミナによって補強した試験体では 10.5~ 16.5 GPa であり,十分な補強効果を確認することができた.また,比例限度強度と圧縮強度に関しても, 同傾向の補強効果を確認できた. Euler 式による圧縮限界応力を計算値は, いずれのタイプにおいても圧縮強度を大きく上回った. 特に柱の断面が大きくなるにつれて大きく外れる傾向を示した. Euler 式は細長比が小さくなる適用できないと言われている. Johnson 式による圧縮限界応力を計算したところ, この値は全てのタイプにおいて比例限度強度と圧縮強度の間に位置しており, したがって, 本研究で試作した集成柱材の限界応力は, Johnson 式による予測が可能であることが示された.

以上のように, 小径丸太から得られる正角材のみで構成される集成梁材および集成柱材の強度性能はそれほど高くなかったが, 大径丸太からの正角材やラミナによって補強を施すことにより, 強度性能の向上を確認することができた. また, 補強した試験体の特性値は, 構造用材料としての利用可能性が十分に伺えるものであった. このことから, 韓国で大量に産出される小径丸太を, 構造用材料として活用できることが示唆された.

次に, カラマツ小径丸太より得た正角材をエレメントに持つ積層材を用いて柱- 梁接合部を作成し,そのモーメント抵抗性能を調べた.積層梁材と積層柱材の接合には,グルード・イン・スティール・ロッドを採用した. グルード・イン・スティール・ロッドの接合には, 異形棒鋼を使用した. 異形棒鋼の積層梁材への埋め込み深さは 400 mm と 450 mm の2 種類とした. また, このときの接着剤の充填にはエポキシ樹脂接着剤を用い,E1 と E2 の2 種類とした.積層梁材への埋め込み深さと接着剤の種類を組み合わせることで, 4シリーズの接合部試験体を用意した. 接合部の力学試験を積層柱材上部を加力点として, アクチュエータから水平力を与えることで, 接合部にモーメントを作用させた.加力の折返しは,変形角 10 段階を設定し,各段階で3 回の正負載荷を繰返した. その後, 接合部が破壊するまで単調加力した.

力学試験によりモーメント- 変形角関係を調べた結果, 加力初期から破壊に至るまでほぼ線形の挙動が現れた.また,回転剛性は 879.2~ 965.6 kNm/rad,最大モーメントは 26.7~ 32.8 kNm となった. 接着剤の種類による性能差は見られたが, 異形棒鋼の埋め込み深さの違いによる性能差は, 今回の場合には見られなかった. また, 接合効率は 0.78~ 0.93 となり,今回の試験体の変形は集成柱材の曲げたわみが支配的であることがわかった. 破壊性状の観察によれば, 今回の試験体の破壊は積層柱材の曲げ破壊により決定されていた.

このような結果をもとに, 理論的な考察により線形解析を行なった. これは異形棒鋼のすべり特性と集成柱材の横圧縮特性から接合部の回転変形を求め, 加えて積層柱材の曲げ特性から柱材の曲げ変形を考慮することで, 接合部試験体の回転剛性と最大モーメントを計算するものである. これによる計算結果は実験結果と概ね良い一致を示した.したがって,提案した計算方法の妥当性を確認することができた.すなわち,今回の接合部試験体のモーメント抵抗性能は, 異形棒鋼のすべり特性と積層柱材の横圧縮特性, および曲げ特性で表現できることがわかった. この過程で計算された接合部での回転剛性は 3315.8~ 3834.2 kNm/rad であり, 積層柱材の曲げ性能を補強することで, 回転剛性を計算値に近づけることができる可能性が示唆された. このような接合部のモーメント抵抗性能を簡便に把握する方法として, ここで提示した解析法は有効であろと判断する.

最後に, カラマツ小径丸太を用いた積層材および接合部の力学解析結果を実建築物に適用して弾性応力解析を実施し, 構造利用の検討を行った. 構造利用検討には, 弾性応力解析プログラムである FAP-3 Ver.5 を用いて, 実建築物の応力解析と研究データの応力解析を比較した. CRP は実建築物の応力解析, CRPE 1 , CRPE 2 , CRPT は実建築物に小径丸太を用いた積層材の力学試験結果を適用した応力解析である. 解析モデルは柱と梁からなるラーメン構造であり,その接点は CRP,CRPE 1 では剛接合( 固定)を,CRPE 2 では接合部試験体の力学特性値の回転剛性を適用した.また,CRPT には接合部の理論値中接合部での回転剛性を適用した. 荷重ケースと部材荷重間の組合せ係数による等分布荷重を適用し, 自重計算を適用した.

すべての荷重ケースに応じた部材応力を求めた結果, カラマツ小径丸太を用いた積層材および接合部の力学的性能より低い値であり, 柱と梁からなるラーメン構造にこれらの積層材および接合部が使用可能であると判断される. 荷重ケースによる節点変位を比較した結果,柱と梁の接合部に剛接合を適用した CRPE 1 の節点変位が最も小さかったが,CRPE 2 ,CRPT の節点変位も,カラマツ小径丸太を用いた積層材および接合部の最大変位より低い値を示し, 本研究の結果を建築物に適用可能と判断する.

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る