リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「中大規模木造建築物に対応したストレストスキンパネル及びたすき掛け筋かい耐力壁に関する実験的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

中大規模木造建築物に対応したストレストスキンパネル及びたすき掛け筋かい耐力壁に関する実験的研究

玉澤, 基良 東京大学 DOI:10.15083/0002004942

2022.06.22

概要

第1章 序論 研究の背景と目的
中大規模木造建築物をより発展させるための課題として、それに対応した横架材の技術開発及び耐力壁の仕様の確立が挙げられる。中大規模木造建築物においては、講堂や集会室等の無柱の大空間の部屋が必ずと言ってよいほど存在する。そのため長スパンを架け渡す横架材の技術開発が急務となっている。また、断面が45mm×90mm以上の二つ割筋かい耐力壁については、階高3m未満の住宅程度であれば問題ないが、中大規模建築物では階高が3m以上となることが多く、その場合、建築基準法施行令第46条に定められた壁倍率相当の性能が得られないことが、既往の研究1)で報告されている。さらに、断面が90mm角のたすき掛け筋かいでは、階高3m以下であっても、平 12建告1460号の端部接合仕様では、施行令第46条に定められた壁倍率の性能が得られないことが、既往の研究2)で報告されている。

これらの課題を踏まえ、本研究では中大規模木造建築物における実用化を視野に入れ、住宅用プレカット工場において一般流通材を用いて加工出来、比較的低い材成で高い曲げ剛性が得られ、長スパンを架け渡すことが可能なストレストスキンパネル(以下SSP)(図1)及び階高の高い場合でも施行令46条に規定された壁倍率相当の性能を確保できる筋かい耐力壁(図2)の仕様について実験を基に確立し、広く一般に提案することを研究目的とした。

第2章 ストレストスキンパネル(SSP)の曲げ性能の検証
・構造用合板の単体引張試験
SSPの横架材としての性能は、フランジ材に使用する構造用合板の引張強度及び引張ヤング係数に大きく関わる。わが国で流通されている構造用合板の等級は2級がほとんどであるため、S SPのフランジ材は、構造用合板2級を使用することになる。2級の構造用合板においては、曲げ許容応力度および曲げヤング係数は規定されているが、引張許容応力度および引張ヤング係数は規定されていない。これらの値は合板の単板に使用される樹種により異なることが予想される。そこで構造用合板を樹種ごとに単体で引張試験を行い、引張許容応力度、引張ヤング係数を明らかにした。試験の結果、SSPのフランジ材として、ヤング係数が最も高く、引張強さも十分な試験体BSBSB(ベイマツとスギで構成された合板)及び引張強さが最も高い試験体HHHHH(ヒノキで構成された合板)の2種類を選定した。

・構造用合板の3枚接着重ね張り引張試験
本研究仕様のSSPのフランジ材は、構造用合板厚12mmを3枚接着重ね張りしたものとなる。長尺の構造用合板であっても長さは3m程度のものであるため、SSPのフランジ材とするには2枚以上のものを長手方向に並べることになる。そのため、合板の継目をずらして3枚接着重ね張りしても継目が存在するため実際の有効枚数は2枚となる。そこで、継目を考慮して3枚接着重ね張りした構造用合板の引張試験を行い、単体の引張強さと比較しその性能を明らかにした。

・SSPの実大曲げ試験
試験体は、構造用合板の単体引張試験の結果より以下の2種類とした。一つは、ベイマツとスギで構成された合板を3枚接着重ね張りしたものをフランジ材とし、ベイマツとスギで構成された対称異等級集成材をウェブ材とした試験体SSP_BSと、もう一つは、栃木県産ヒノキで構成された合板を3枚接着重ね張りしたものをフランジ材とし、栃木県産ヒノキとスギで構成された対称異等級集成材をウェブ材とした試験体SSP_HHの2種類である。これらについて接着剤の塗布方法をパラメータとしてSSPの実大曲げ試験を行い曲げ性能の検証を行った。3枚接着重ね張り試験で得られたフランジ合板の引張強さより、フランジの有効幅を菊池らの算定式3)を用いた、稲山の提案するSSPの断面性能の算定式4)による値に対し、実大曲げ試験の最大荷重は近い値を示していることから、稲山の提案する算定式4)は、SSPの断面性能を数値化する上において十分実用的であると考えられる。

また、構造用合板1級の長期許容引張応力度による最大荷重に対し、実大曲げ試験における最大荷重は、SSP_BSの場合、最も低い最大荷重を示したSSP_BS-2で約3.4倍、SSP_HHの場合約4.5であり、実用上十分な強度を有していることがわかった。

・SSPの曲げクリープ試験
SSPのような横架材では、クリープ現象はたわみ変形という形で現れる。SSPのスパンを長大なものとした場合、クリープの影響を受けたたわみ変形は、より大きくなり、実用上の支障が起こる恐れがある。そのため、クリープ曲げ試験を行うことでクリープ増大係数を求め、長期間の使用においても実用上の支障が起こらないことを確認する。試験体は実大曲げ試験における SSP_HHと同様、栃木県産ヒノキで構成された合板を3枚接着重ね張りしたものをフランジ材とし、栃木県産ヒノキとスギで構成された対称異等級集成材をウェブ材としたものとした。接着剤の塗布方法の違いをパラメータとし、SSP_HH-cre1は、接着剤をコテを用いて全面に塗り広げたものであり、SSP_HH-cre2は、接着剤をコテを用いずビード状のままウェブ等の軸材上のみに塗布したものである。試験は令和元年9月10日に開始し、同11月28日の79日間におけるクリープ増大係数は、試験体SSP_HH-cre1で1.42、SSP_HH-cre2で1.46である。試験は、令和元年12月13日現在も試験継続中である。クリープ増大係数において全面塗布のSSP_HH-cre1の方が低い値になること は予想されたが、接着剤の塗布方法を簡略化したSSP_HH-cre2をわずかに下回る程度であった。 クリープに対する断面性能として両試験体に大きな差はないと判断できる。クリープ試験の結果、 SSPの製作における接着剤の塗布方法を簡略化した試験体SSP_HHの仕様でも問題ないと考えられる。

第3章 たすき掛け筋かい耐力壁の面内せん断性能の検証
研究対象とする筋かい耐力壁は、断面が45mm×90mm以上の二つ割材および105mm角以上の柱同寸材をたすき掛けにしたものとした。二つ割筋かい耐力壁の試験は3期に分けて行った。1期目における試験体の高さは、筋かい耐力壁の幅高さ比の制限(H/L≦3.5)より決定される最大高さH=3.185mと施行令43条に規定された柱の有効細長比の制限値(λ=150)より決定される柱105mm角の場合の最大高さH=4.5mの2種類とし、それぞれ1段タイプと2段タイプのものとした。1期目では、平12建告1460号に則った筋かい耐力壁の面内せん断性能を確認することを目的として試験を行った。試験結果より建築基準法施行令46条の壁倍率に満たなかった試験体について、改良すべき点を見出して改良を施し、2期目の試験として壁高さ3.0mの1段タイプと壁高さ4.5mの2段タイプの試験を行った。さらに、3期目の試験として壁高さ3.0mの1段タイプについて、2期目の試験体で柱の内側に取り付けていたホールダウン金物を柱の外側に取り付けて試験を行い、施行令46条の壁倍率相当の性能を有することを確認し、またホールダウン金物の取付位置による面内せん断性能の違いについて検証した。

柱同寸筋かい耐力壁は、二つ割筋かい耐力壁の2期目及び3期目で使用した壁倍率2倍用の柱梁筋かい3点留めの側面取付フラットプレートタイプと同様のものを使用しその金物を柱同寸筋かいの両面に取り付け、面内せん断試験を行い施行令46条の壁倍率相当の性能を有することを確認した。

第4章 まとめ
SSPの実大曲げ試験及び曲げクリープ試験により、接着剤の塗布方法を簡略化した仕様であっても実用上問題ないことが確認できた。また、稲山の提案式4)は、SSPの断面性能を数値化する上において十分実用的であることを確認できた。

筋かい耐力壁の面内せん断試験により、階高3m程度であれば1段筋かいで、また階高4.5mでも2段筋かいとすれば、施行令46条の壁倍率を満たすことができる仕様を確認できた。以下にその仕様を示す。

① 壁高さ3.0mの二つ割及び柱同寸たすき掛け筋かい耐力壁の場合。
・壁高さ及び筋かいの段数:H≦3.0m、1段<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・柱の断面(樹種):105mm角(スギ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・土台の断面(樹種):105mm角(ヒノキ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・梁の断面(樹種):105mm×180mm(ベイマツ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・筋かいの断面(樹種):45mm×120mm(スプルース)<二つ割筋かい>
           :105mm×105mm(スギ)<柱同寸筋かい>
・筋かい金物:柱梁横架材の3点留め側面取付フラットプレートタイプ<二つ割筋かい>
      :柱梁横架材の3点留め側面取付フラットプレートタイプで柱同寸筋かいを挟むように両側面に取り付け<柱同寸筋かい>
・二つ割筋かいと間柱の交点:構造用ネジφ6mm×L100mm片面2本(両面計4本)
・柱同寸筋かい交差部:合い欠きの上、交点補強金物PL-4.5×70×400(SS400)を筋かいの両面に構造用ビス(φ6×75-18本/枚)を
           用いて取り付け
・ホールダウン金物取付位置:柱の外側<二つ割、柱同寸筋かい共通>

② 壁高さ 4.5mの二つ割及び柱同寸たすき掛け2段筋かい耐力壁の場合。
・壁高さ及び筋かいの段数:H≦4.5m、2段<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・柱の断面(樹種):120mm 角(スギ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・土台の断面(樹種):120mm 角(ヒノキ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・梁の断面(樹種):120mm×180mm(ベイマツ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・中間横架材の断面(樹種):120mm×180mm(スギ)<二つ割、柱同寸筋かい共通>
・筋かいの断面(樹種):45mm×90mm(スプルース)<二つ割筋かい >
           :120mm×120mm(スギ)<柱同寸筋かい>
・筋かい金物:柱梁横架材の 3 点留め側面取付フラットプレートタイプ<二つ割筋かい>                  
      :柱梁横架材の3点留め側面取付フラットプレートタイプで柱同寸筋かいを挟むように両側面に取り付け<柱同寸筋かい>
・二つ割筋かいと間柱の交点:構造用ネジφ6mm×L100mm 片面 2 本(両面計 4 本)
・柱同寸筋かい交差部:合い欠きの上、交点補強金物PL-4.5×70×400(SS400)を筋かいの両面に構造用ビス(φ6×75-18本/枚)を
           用いて取り付け
・柱脚金物:基礎直結・土台埋め込み型<二つ割、柱同寸筋かい共通>

これらの仕様を広く一般に提案することで、中大規模木造建築物のより一層の発展に貢献できるものと考える。

この論文で使われている画像

参考文献

1) 守屋嘉晃,林崎正伸,高橋仁,河合直人,槌本敬大「木造軸組耐力壁のせん断性能に与える壁高さ及び壁長さの影響確認実験 その 1 筋かい耐力壁」日本建築学会大会梗概集 2011,pp97-98

2) 鈴木圭,相馬智明,稲山正弘,安藤直人「90mm 角のたすき掛け筋かい壁の水平耐力についての研究」日本建築学会大会梗概集 2012,pp63-64

3) 菊池重昭,梶川久光,三津橋歩:面外方向曲げを受ける木質接着パネル構法の有効幅に関する研究,日本建築学会構造系論文集第 614 号,pp.77-84,2007.4

4) 稲山正弘:中大規模木造建築物の構造設計の手引き 改定版,彰国社,pp.70-71,2019.8

参考文献をもっと見る

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る