Kinematics of bicruciate and posterior stabilized total knee arthroplasty during deep knee flexion and stair climbing
概要
〔目的(Purpose)〕
両十字靭帯安定型Bicruciate stabilized(BCS)人工膝関節全置換術Total knee arthroplasty(TKA)は両十字靭帯機能をポストカム機構で代償し、正常膝の動態を再現するように開発された。本研究の目的は生体内でこのポストカム機構が有効に機能しているかを評価することである。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
対象は2011年から2015年に当科でTKAを施行し、術後X線透視検査が可能であった症例のうち、JOURNEY II BCS (Smith and Nephew社)使用の17膝(BCS群)と比較対象として、BCS群と適応と手技が同等であるLEGION PS(Smith and Nephew社)使用の12膝(PS群)である。当教室で開発された2D3Dレジストレーション法を用いて、X線透視装置下にスクワット動作と階段昇降動作の解析を行った。評価項目は、コンポーネント間屈曲角度、脛骨コンポーネントに対する大腿骨コンポーネント最近接点前後位置、大腿骨外旋角度、ポストカム接触と患者立脚型評価として2011Knee Society Score (KSS)を用いた。スクワット動作において、BCS群とPS群で最小•最大屈曲角度に統計学的な差は認めなかった。全可動域においてBCS群の内側がPS群の内側より前方に位置していた。外側前後位置はBCS、PSともに屈曲とともに後方へ移動した。大腿骨外旋角度はBCS群がPS群より最小屈曲角度から100度まで有意に大きかったが、屈曲に伴う回旋量に差はなかった。ポストカム機構の前方接触はBCS群の方がPS群に比べ高頻度に認めた。後方接触については両群で全例に認めた。階段昇降動作においても同様に、BCS群の内側はPS群の内側より前方に位置し、外側前後位置は差は認めなかった。大腿骨外旋角度もBCS群がPS群と比較し、有意に大きかった。ポストカム前方接触は降段においてBCSで高頻度に認めた。2011KSSでは2群間に有意差は認めなかった。
〔総括(Conclusion)〕
BCSにおけるポストカム前方接触はスクワット動作や階段昇降動作において全例に認めるわけではないが、PSとは異なる動態を示した。これは、ポストカム機構以外に関節面形状などの他の因子が関与している可能性が示唆された。