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アルミニウム合金とマグネシウム合金の 異材摩擦攪拌接合に関する研究

朝長 直也 富山大学

2020.03.31

概要

近年,省エネルギー観点から,輸送機器を中心とした構造物の軽量化が進められており,鉄を主成分とした材料から,アルミニウム合金を中心とした非鉄金属への転換が行われている.また,さらなる軽量化を実現する為に,実用金属の中で比重が最小のマグネシウム合金の活用が求められている.

他方,接合継手に目を向けると,適材適所,高機能化,多機能化および低コスト化の観点から複数の材料を組み合わせて,製造する“マルチマテリアル技術”が必要とされている.これらを実現する為には,信頼性の高い異種金属材料接合技術の確立が必須である.

アルミニウム合金やマグネシウム合金の異材溶融溶接は,両者の間で脆い金属間化合物が生成する.そのため,信頼性のある継手を得難く,両合金の異材溶接技術の確立には解決すべき課題を有している.こうした中,異種材料接合技術の一つである摩擦攪拌接合(FSW)が注目されており,工業的な適用が検討されている.本接合法は,ツールと母材の摩擦熱により発生させた塑性流動を用いて接合する固相接合である.この塑性流動の最適制御こそが,異材接合技術の確立に繋がると考えられる.しかし,異材接合の場合,変形特性の異なる材料の塑性流動を取り扱うことから,両者の間で協調的な攪拌を起こすことが難しく,これが欠陥形成に影響を及ぼしている.そこで,塑性流動に関する,「材料特性」「材料配置」「ツール回転数や接合速度などの接合条件」「ツール形状」の因子に着目した.これらの因子が塑性流動に与える影響を調査し,塑性流動を制御することができれば,欠陥形成を抑制することができると考えた.本研究では,単に健全な溶接継手を形成する条件を見出すのではなく,これらの仮説を検証することで,欠陥形成に与える影響を調査し,FSW を用いた異材接合における基本指針を提起することを目的とした.

本論文は第1章から第6章までの構成である.
第1章は,序論であり,摩擦攪拌接合の理論や特徴に示し,本研究を行う意義等を述べた.

第2章では,材料配置,接合速度および接合ツール回転数が与える影響について,A5083アルミニウム合金,AZ31 マグネシウム合金を用いて調べた.材料配置については,AS 側に A5083 を配置し接合を行うことで効果的な結果を得た.また,攪拌のされやすさはツール回転数に影響を受け,攪拌部の形成は接合速度の影響を受けていることが明らかになった.さらに,異材接合における材料配置と接合条件は,高温領域における材料の機械的特性,流動能を考慮する必要があると結論付けた.

第3章では,形状が異なる複数の接合ツールを作製し,ツール形状が塑性流動にどのような影響を及ぼすのかを作動流体を用いた可視化実験ならびに摩擦攪拌点接合法を実際の金属である,A6061-T6 アルミニウム合金に適用して,ツール形状の影響を調べた.
その結果,可視化実験において,ダブルスパイラルツールは,シングルスパイラルツールに比べ,下方向の攪拌力増大効果が認められた.また,摩擦攪拌点接合において,ダブルスパイラルツールは,シングルスパイラルツールに比べ,攪拌部最大幅で 0.7mm(113%UP),試料下部で 0.5mm(119%UP)の攪拌領域の拡大効果が認められた.

第4章では,第3章で効果的な結果が得られたダブルスパイラル形状の接合ツールを用いて,A6061-T6 アルミニウム合金,A5083 アルミニウム合金および AZ31 マグネシウム合金を用いて摩擦攪拌接合を行い,接合性,継手組織を検討した結果を述べた.

A6061 同士の同種材料の接合においては,ダブルスパイラルツールはシングルスパイラルツールに比べ,ルートフロー抑制に効果がある条件を見出すことができた.一方,条件によってはバリ等が発生しやすく,ダブルスパイラルツールの攪拌力の優位性は認められたものの,全条件範囲において,ダブルスパイラルツールによる,ルートフロー抑制効果を認めることができなかった.ダブルスパイラルツールによる,ルートフロー抑制効果をより広範囲の条件で成功する為には,軟化し,上方へ金属の流動がなされることにより生じるバリを抑制する為の,ショルダーの最適化が必要であると推察される.

異種材料の接合においては,ダブルスパイラルツールはシングルスパイラルツールに比べ,攪拌量が増し,ボイドを含まない明瞭なオニオンリングが形成される傾向にあった.入熱量がほぼ変わらない状況で攪拌量が増大されることは,異材摩擦攪拌接合プロセスの低温化に効果的に,寄与するものである.

第5章では,第4章で得られた,接合継手について,引張試験片を採取し,シングルスパイラルツールとダブルスパイラルツールが,機械的強度に与える影響について検討した結果について述べた.ダブルスパイラルツールを用いると,材料同士がより広範囲にわたって協調的な攪拌作用を受けて攪拌部組織が形成され,その結果として継手強度の増加に効果があると考えられる.ダブルスパイラルツールは,攪拌量増加を促す塑性流動の促進をもたらし,欠陥形成の抑制と攪拌領域の拡大につながる.すなわち,ダブルスパイラルツールは異種材料の接合に効果的である.

第6章では,本実験で得られた実験結果について,総括を行っている.

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参考文献

第1章 参考文献

1-1)小原久:自動車燃費規制の動向と軽量化に貢献するマグネシウムの諸特性,軽金属溶接,Vol.55 No.4(2017)

1-2)Alcoa : Alcoa Automotive Sheet Metal Bulletin International Aluminum Conference p3(2015)

1-3)(一社)溶接学会・(一社)日本溶接協会:溶接・接合技術総論,産報出版(2015)

1-4)朝長直也他:デジタルインバータ制御式パルスミグ溶接機を用いたアルミニウム合金の溶接(第2報)-溶接施工条件の検討-,軽金属溶接,Vol.51 No.1(2013)

1-5)中田一博:マルチマテリアル時代の接合技術-異種材料接合を用いたものづくり-,産報出版(2016)

1-6)廣瀬明夫:異材接合の現状と課題,溶接学会誌,Vol.87 No.1(2018)

1-7)中央労働防止協会:アーク溶接等作業の安全,(2015)

1-8)柴柳敏哉:摩擦攪拌接合の接合機構「塑性流動ならびに高温変形の観点から」,NACHI TECHNICAL REPORT,Vol.35A1 May(2019)

1-9)柴柳敏哉:摩擦攪拌接合の材料組織学的描像 軽金属 57 巻 9 号 p416~423 (2007)

1-10)(一社)溶接学会編:摩擦攪拌接合-FSW のすべて,産報出版(2006)

1-11)時末光 篠田剛 熊谷正樹:FSW(摩擦攪拌接合)の基礎と応用(2005)

1-12) 佐藤裕:摩擦攪拌接合に対する材料学的アプローチ まてりあ 第 55 巻 第 2 号 p53~58 (2016)

1-13) 日本工業規格:JIS Z 3083(アルミニウム合金およびマグネシウム合金の摩擦かくはん接合部のルートフローの超音波探傷試験方法),(一財)日本規格協会,(2018)

1-14)Luis Trueba Jr. Georgina Heredia, Daniel Rybicki, Lucie B. Johannes:Effect of tool shoulder features on defects and tensile properties offriction stir welded aluminum 6061-T6 271~277(2015)

1-15)K.Elangovan V.Balasubramanian M.Valliappan:Influences of tool pin profile and axial force on the formation of friction stir processing zone in AA6061 aluminium alloy ,Int J Adv Manuf Technol p285~295(2008)

1-16)加藤数良:マグネシウム合金の FSW 特性,軽金属溶接,Vol.55 No.3(2017)

第2章 参考文献

2-1) 大塚正久・堀内良:Al-Mg 合金の高温における延性低下,日本金属学会誌第 48 巻第 7 号(1984)688-693.

2-2)行武栄太郎:茨城県における摩擦撹拌接合への取り組み―摩擦撹拌接合技術における難燃性マグネシウム合金接合特性評価―,一般社団法人摩擦撹拌接合技術協会平成 29年度第3回研究会研究発表資料(2018)

2-3)(一社)溶接学会編:摩擦攪拌接合-FSW のすべて,産報出版(2006)

2-4) 丸山公一,中島英治:高温強度の材料科学,内田老鶴圃 (1997)

2-5)K.Colligan: welding journal (1999), 229-237

第3章 参考文献

3-1)Takashi Nakamura,Toshiyuki Obikawa,Itaru Nishizaki,Masatoshi Enomoto,Zhenglong Fang : Friction Stir Welding of Non-Heat-Treatable-High-Strength Alloy 5083-O,Metals 2018,8,208

第4章 参考文献

4-1) 藤本光生 古賀信次 阿部奈津美 佐藤裕 粉川博之 : 摩擦攪拌点接合で得られたアルミニウム合金継手における塑性流動に関する検討 溶接学会誌 第 26 巻 第 1 号 p67~ 73(2008)

第5章 参考文献

5-1)水野政夫,蓑田和之,阪口章:アルミニウムとその合金の溶接,産報出版(1979)

5-2)大塚正久・堀内良:Al-Mg 合金の高温における延性低下,日本金属学会誌第 48 巻第 7 号(1984)688-693.

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