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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Raman microscopy-based analytical methods for intracellular localization of labeled fatty acids and physical properties of lipid environment」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Raman microscopy-based analytical methods for intracellular localization of labeled fatty acids and physical properties of lipid environment

植松, 真章 東京大学 DOI:10.15083/0002006923

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名

植松

真章

本研究は、これまで生化学的解析が中心であった脂質解析において、細胞レベルでの空
間情報という新しい評価軸を導入するため、ラマン顕微鏡および標識脂肪酸を用い、複数
種の細胞内標識脂肪酸の同時観測手法および細胞内脂質物性の解析技術開発を行ったもの
であり、下記の結果を得ている。
1.

標識のされ方が異なる脂肪酸の使用、および重複スペクトルをアンミキシングする
ためのソフトウェア開発を行うことで、複数種の標識脂肪酸を取り込んだ細胞より
得られたラマンスペクトルから、各成分を分離取得する解析系を構築した。標識の
され方が異なる脂肪酸はそれぞれ特異的なラマンスペクトルを示しており、その上
で重複してしまうスペクトルに対しては開発したソフトウェアを用いてアンミキシ
ングしている。また、アンミキシングを行った結果に対して検定を行い、シグナル
が弱いピクセルを排除していることから、細胞内における標識脂肪酸の相対量の空
間分布が正確に取得できていると示唆される。

2.

上記1で開発した解析系を用いて、複数種の脂肪酸の HeLa 細胞内における局在を
観察した結果、それらはどれも脂肪滴および ER と思われる非脂肪滴領域に同様に
分布した。さらに、不飽和度の高い脂肪酸ほど脂肪滴への集積度が高い傾向が見い
だされた。

3.

重水素標識パルミチン酸(C16:0[d31])のラマンスペクトルが周囲の脂質環境の物
性を反映することを示した。In vitro の実験において、C16:0(d31)のラマンスペクト
ルは周囲の脂質環境に応じて連続的に変化し、その変化は脂質の相(液相、固相)
と相関した。さらに、in silico でのラマンスペクトルシミュレーションの結果、脂
質流動性と強く相関することが知られている C16:0(d31)の gauche-trans 配座の変
化に応じて、in vitro で得られたラマンスペクトルの遷移が定性的に再現された。こ
れらの結果から、C16:0(d31)のラマンスペクトルが脂質物性の指標として利用可能
であることが示唆された。

4.

脂質物性の変化による C16:0(d31)のラマンスペクトル遷移を定量値へと変換して評
価することができる解析系を構築した。変換は、PC18:0(d0)および C16:0(d31)を二
分子含むリン脂質である PC16:0(d62)を、in vitro において様々な割合で混合した試
料から得られたラマンスペクトルを元に作成した参照スペクトルを中心に行われ
た。評価したい C16:0(d31)のラマンスペクトルに最も近い参照スペクトルを取得し

たのち、その参照スペクトルが得られた条件(PC18:1/PC16:0[d62]の混合比)にお
ける C16:0(d31)の gauche-trans 配座の割合を、分子動力学シミュレーションを用
いて算出した。
5.

上記3、4で開発した解析系を用いて、様々な脂肪酸処理による摂動を加えた
HeLa 細胞の脂質物性を、脂肪滴および非脂肪滴領域について解析した結果、脂肪
滴における脂質物性は処理条件に応じて大きく変化した一方、非脂肪滴領域におけ
る脂質物性は安定的に保たれていた。さらに、高濃度の C16:0 を含む培地で細胞を
培養し、細胞内の脂肪滴合成が阻害された条件下では、非脂肪滴領域の脂質物性は
流動性が低い方向に大きく変化した。これらの結果から、単に余剰な脂質を蓄積し
ておくだけではなく、脂質物性の緩衝材として働くという、脂肪滴の新たな機能が
示唆された。
以上、本論文では、既存の手法では正確に解析することが困難であった、複数種の標識

脂肪酸の細胞内局在の観測および細胞内脂質物性の解析手法を確立した。これは細胞内脂
質解析において新たな定量的な評価軸を提供するものであり、本研究ではこれらの手法を
用いて新たな生物学的現象を見出している。細胞内脂質輸送、および脂質物性に代表され
る細胞内脂質環境の制御機構の解明に大きく貢献するものと期待される。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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