湿式成形プロセス最適化に必要なスラリー特性の解明とその評価手法の開発に関する研究
概要
湿式成形プロセス最適化に必要なスラリー特性の解
明とその評価手法の開発に関する研究
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岩田 尚也
IWATA Naoya
Studies on elucidation of slurry property to
optimize the wet shaping processes and
development of slurry evaluation method
1-150
2021-03-24
32675甲第512号
2021-03-24
博士(理工学)
法政大学 (Hosei University)
http://doi.org/10.15002/00024125
法政大学審査学位論文
湿式成形プロセス最適化に必要な
スラリー特性の解明とその評価手法の開発
に関する研究
岩田
尚也
目次
第 1 章 序論 ................................................................................................................ 1
1.1 産業におけるスラリーの役割
1
1.2 スラリーを用いた材料製造プロセス
1
1.3 湿式成形プロセスにおけるスラリー設計・調製の重要性
3
1.3.1 粒子の溶媒への濡れ
3
1.3.2 機械的解砕
4
1.3.3 粒子分散の安定化
5
1.4 種々のスラリー評価手法とその利用例
1.4.1 原子間力顕微鏡を用いた表面間相互作用力測定
1.4.2 粒子径分布測定
1.4.3 流動特性評価
1.4.4 沈降試験
1.4.5 沈降静水圧測定
1.5 代表的な湿式成形方法
1.6 スラリー評価に基づいた成形体密度の予測
1.7 スラリー調製プロセスにおいて解決すべき課題
1.8 本論文の目的
9
9
10
11
13
14
15
18
19
20
1.9 本論文の構成
参考文献
21
24
第 2 章
スラリー調製におけるバインダーの添加が分散剤の最適添加量に
及ぼす影響 .................................................................................................. 35
2.1 緒言
35
2.2 実験方法
36
2.2.1 スラリー調製
36
2.2.2 スラリー評価
36
2.3 実験結果
38
2.4 考察
43
2.5 結言
参考文献
48
48
i
第 3 章
セラミックスシート成形体密度の的確な予測を可能とする
スラリー評価手法の検討 .......................................................................... 51
3.1 緒言
51
3.2 実験方法
52
3.2.1 スラリー調製
52
3.2.2 スラリー評価
53
3.2.3 シート成形
55
3.3 実験結果
55
3.3.1 スラリー評価
55
3.3.2 シート成形体充填率
60
3.4 考察
3.4.1 各種スラリー評価結果と成形体充填率の相関関係
3.4.2 沈降静水圧測定と流動特性評価の違い
3.5 結言
参考文献
62
62
66
69
70
第 4 章
成形・濃縮過程におけるスラリー中の分散媒の変化が成形体密度に
及ぼす影響 .................................................................................................. 73
4.1 緒言
73
4.2 実験方法
74
4.2.1 スラリー調製
4.2.2 スラリー評価
4.2.3 成形
4.3 実験結果
4.3.1 スラリー評価
4.3.2 各種成形体の充填率
4.4 考察
4.4.1 見かけ粘度と堆積層充填率の関係
4.4.2 スラリー特性と各種成形体充填率の関係
4.4.3 粒子構造体形成過程の違いと鋳込み成形体充填率予測手法の検討
4.5 結言
74
75
76
77
77
84
86
86
89
92
96
参考文献
97
ii
第 5 章
多孔質基材への塗布操作におけるサスペンション調製条件の
最適化 ........................................................................................................ 101
5.1 緒言
101
5.2 実験方法
102
5.2.1 サスペンション調製
102
5.2.2 サスペンション評価
103
5.2.3 コーティングおよびその特性評価
105
5.3 結果および考察
106
5.3.1 サスペンション評価
106
5.3.2 サスペンション特性とコーティング特性の関係
112
5.4 結言
参考文献
119
119
第 6 章
サスペンション中の粒子分散・凝集状態が溶射皮膜特性に及ぼす
影響 ............................................................................................................ 123
6.1 緒言
123
6.2 実験方法
124
6.2.1 サスペンション調製
124
6.2.2 サスペンション特性評価
124
6.2.3 成膜試験と皮膜特性評価
126
6.3 結果および考察
6.3.1 サスペンション特性評価
6.3.2 溶射皮膜特性評価
6.3.3 サスペンション評価結果と皮膜特性との関係
6.4 結言
参考文献
第 7 章
127
127
133
136
138
139
結論 ............................................................................................................ 141
本論文を構成する報文 .............................................................................................. 146
学会発表 .................................................................................................................... 147
謝辞
.................................................................................................................... 149
iii
第 1 章
第 1 章 序論
1.1 産業におけるスラリーの役割
ある液体中に固体粒子が分散・懸濁した流動体は,広義にはスラリーと呼ばれ,
その粒子濃度が低い場合にはサスペンション,高い場合には泥漿(でいしょう)
あるいはペースト,スラッジなどと呼ばれている.このスラリーは乾燥粉体に比
べてハンドリング性や粒子充填性が高いことから,微粉体を用いる際にはスラ
リー状にして扱うことが多い.そのため,粉体を原料とする製品・材料において
はそのほとんどの工業プロセスでスラリーが利用されている.例えば,セラミッ
クス[1, 2]や電池[3, 4],インク[5, 6],塗料[7, 8],研磨剤[9, 10],あるいは化粧品
[11, 12],食品[13, 14]など,広範にわたる分野においてスラリーを介した製品製
造が行われており,すでに多くの産業を支えている.これまでにも多数の分野に
わたって使われてきたスラリーであるが,その利用に対するニーズは今後もま
すます高まることが予想される.富士経済グループが行ったセラミックス材料
の世界市場調査においては,その市場規模は 2024 年にはおよそ 370 億ドルにま
で拡大する見込みとされており[15],また,同じく富士経済は自動車向け二次電
池の世界市場についてその市場規模は 2035 年に 19 兆 7000 億円にまで達すると
の見込みを発表している[16].セラミックス材料および電池の部材の多くはスラ
リーを介して製造されており,この二分野だけをみてもスラリーの持つ役割は
極めて大きいことがわかる.
1.2 スラリーを用いた材料製造プロセス
スラリーを用いた具体的な材料製造プロセスの一例として,セラミックスシ
ート成形プロセスの概要を Fig. 1-1 に示した.図のようなセラミックス材料の場
合では,まず原料粉末を適当な分散媒や添加剤と混合し,ボールミル等の分散処
理をすることでスラリーが調製される.調製したスラリーはドクターブレード
法やダイコート法などにより,キャリアフィルム等の基材上に一定の厚みにな
るよう塗工される.続いて,スラリー中の分散媒を除去するため乾燥機等を用い
て乾燥させ成形体(グリーンシート)を得たのち,焼成工程を経ることで最終製
品が得られる.
1
第 1 章
Fig. 1-1 Schematic diagram of ceramics manufacturing process through a tape casting.
粉末を原料とする製品においてはその内部構造,すなわち粒子配列が製品全
体の特性に及ぼす影響は大きく,この粒子充填構造を制御することで製品特性
の向上が図られている.例えば,セラミックス分野において Wang ら[17]は,新
規焼結助剤として ZrSi2–MgO を用いた Si3N4 セラミックスの緻密化を達成して
おり,このセラミックス部材は 113.91 W・(m・K)–1 と従来よりも高い熱伝導率を
持つことを示した.電池製造プロセスにおいては,Vogel ら[18]はリチウムイオ
ン二次電池電極の微構造がその交流インピーダンスに強く影響することを示し
ており,電極微構造の均質化の重要性を説明している.また,顔料コーティング
においては,Jӓrnstrӧm ら[19]はコーティング膜の表面粗さがその光沢に影響を及
ぼすことについて触れ,表面粗さ測定の重要性を示した.他方で,Löf ら[20]は
TiO2 粒子を含むサンスクリーン剤について,その塗布膜中の粒子構造体が塗布
面の不透明性および紫外線吸収効果に影響を及ぼすことを明らかにしている.
さらに,上記のような製品の熱的・電気的・光学的特性以外にも粒子充填層の内
部構造が影響する事例が存在する.例えば,成形体内部構造の不均質性は割れ欠
けなどの乾燥欠陥[21–23]や成形体の変形[24]を引き起こすため,結果的に歩留ま
りの低下と高コスト化を招いてしまう.広範な分野で用いられている粉体成形
プロセスではこれらの問題は分野を問わず共通の課題として認識されており,
製造工程の中で精密な微構造制御が求められている.特に,セラミックス部材に
おいてはこの問題は顕著であり,2016 年には国立研究開発法人科学技術振興機
構(JST: Japan Science and Technology Agency)の実施する研究成果最適展開支援
2
第 1 章
プログラム(A-STEP: Adaptable and Seamless Technology Transfer Program through
Target Driven)において,「セラミックスの高機能化と製造プロセス革新」のテ
ーマが採択されるなど,製造工程におけるそれぞれの課題の抜本的な解決によ
り,これまで以上の精密な微構造制御および製造プロセスの低コスト化・高信頼
性化を実現しようとする試みが行われている[25].
1.3 湿式成形プロセスにおけるスラリー設計・調製の重要性
スラリーから粒子構造体を形成するプロセス(=湿式成形プロセス)において,
その微構造を制御する重要な工程の一つがスラリーの設計・調製である.特に,
液中での粒子の分散・凝集状態は成形・乾燥後の粒子集合構造および製品特性に
著しい影響を与えるため,所望の製品を得るためには液中の粒子分散状態を高
度に制御する必要があり,スラリーの調製条件の最適化が湿式成形プロセスの
高度化のための重要課題であると広く認識されている[26–29].乾燥粉体をスラ
リー状にする過程では種々の分散処理が施されており,そのスラリー中の粒子
の分散過程は,
(1)粒子の溶媒への濡れ,
(2)機械的解砕,
(3)分散の安定
化の 3 つに分かれると考えられている[30].そこで本節では,粒子分散に及ぼす
各過程の効果を概説するとともに,既往の研究における具体的な検討事例を用
いてそれぞれの取り組みをまとめる.そのうえで,スラリー調製条件最適化の観
点から各過程における問題点を述べる.
1.3.1 粒子の溶媒への濡れ
分散媒中に粒子を分散させるためには,まず粒子が媒液に対してよく濡れる
必要がある[31–33].これにより,粒子同士の凝集力が低下するため,次の解砕工
程でより分散しやすくなる.この濡れ性を向上させるためには原料粉末に対し
てよく濡れる分散媒液を選択するか,あるいはその粒子に表面改質を施すこと
で濡れ性を改善するアプローチが挙げられる.例えば,Kawamura ら[32]は凝集
性の高いフュームドシリカ粒子に対し n-または t-ブチルアルコールを用いた表
面改質を行っており,その結果,水に対しての濡れ性改善が達成され,表面改質
前に比べて粒子が分散しやすくなったことを報告している.
このように,粒子を分散させるうえで濡れ性を向上させることは重要である
一方で,濡れはスラリー調製の第一段階であるためこの過程だけでは粒子が液
中で分散し安定化するかどうかはわからない.そのため,後工程である機械的解
砕・分散安定化のそれぞれの最適化が必要となる.
3
第 1 章
1.3.2 機械的解砕
解砕過程では様々な分散機が使われている.例えば,ボールミルやビーズミル
などの媒体撹拌ミルや,メディアを用いないロールミルやディスパー,ホモジナ
イザーなど多くの分散機が利用されており,場合によっては一つのスラリーを
調製するのに複数種の分散機が使われることもある.
上記の分散機を用いた分散過程において,スラリー中の粒子凝集体はせん断
力や圧縮力を受けることで解砕が進行することが知られており,既往の研究で
は種々の分散機の運転条件が粒子分散状態に及ぼす影響について調査を行って
いる.例えば,運転時間[34],撹拌・解砕媒体の種類[35],分散機の種類[36, 37]
について検討がなされるなど,粒子分散状態は多数の因子に影響を受けるため
にそれぞれの条件を最適化しなければならない.具体的な検討例としては,
Yoden ら[35]はナノサイズの水系シリカスラリーに対しビーズミルを用いた解砕
を行い,そのビーズ径や操作条件がシリカ粒子の分散挙動に及ぼす影響につい
て調査をした.その結果,ビーズ径が 50 µm である場合にナノシリカ粒子が最
もよく分散し,高い解砕効果を得ている.一方で,ビーズ径が 100 または 300 µm
まで大きくなると解砕と同時に粉砕の効果も表れるため,粒子表面の活性なサ
イトが生成することに伴い凝集粒子の形成(逆粉砕効果)が起こることを報告し
た(Fig. 1-2).
先に述べたように,解砕工程ではその分散機の種類や運転条件が多く,その最
適化は容易ではない.近年では,離散要素法(DEM: Discrete Element Method)を
用いたシミュレーションにより媒体撹拌ミルにおけるボールやビーズの挙動を
解析し,その解砕効率を検討した例がいくつか行われている[38–40]ものの,複
雑な実スラリーを予測できるまでには至っていないのが現状である.そのため,
各条件で実際に調製したスラリーが分散しているかどうかをスラリー評価によ
って確認し,粉砕条件とスラリー特性の関係を明らかにすることで最適化がな
されるものと期待されているが,後述するようにスラリー評価そのものが十分
に検討されていないためにまずはスラリー評価法を確立する必要があると考え
られる.
4
第 1 章
Fig. 1-2 Schematic diagram of deflocculation mechanism of nanometer-size particles
dispersed by various size beads. (A): 20 µm beads, (B): 50 µm beads, (C): 100 and 300
µm beads[35].
1.3.3 粒子分散の安定化
粒子分散の安定化は,粒子分散状態の制御を考えるうえで最も重要な因子で
ある.これを達成するためにはまず粒子間に働く力を理解することが重要であ
り,本項では水系スラリーで特に有効性が示されている DLVO 理論(DerjaguinLandau-Verwey-Overbeek theory)と高分子吸着により生じる力について概説した
のち,それらを用いて分散状態制御に取り組んだ事例をまとめる.
(i) 電気二重層形成により生じる力と DLVO 理論
一般に,水中の粒子は正または負に帯電し,これに伴って電気二重層が形成さ
れる.電気二重層を持つ 2 粒子が近づいたとき,局所的なイオン濃度の上昇が
起こるためこれを緩和する方向に浸透圧が生じ,その結果,粒子間には反発力
(静電反発力と呼ばれる)が働くことになる.一方で,物質によらない普遍的な
引力である van der Waals 力も働くため,2 粒子間には常に反発力と引力が同時
に作用する.ロシアの Derjaguin と Landau,オランダの Verwey と Overbeek のグ
ループはそれぞれ,このような帯電する 2 粒子間の全相互作用ポテンシャルエ
ネルギーが Eq. (1-1)で示したような,静電反発ポテンシャルエネルギー 𝑉R (J)
と van der Waals ポテンシャルエネルギー 𝑉A (J)の和で与えられると結論付けた.
これは DLVO 理論と呼ばれ,粒子の分散・凝集を理解する上で広く利用されて
きた.
5
第 1 章
(1-1)
𝑉 = 𝑉R + 𝑉A
𝑉R = 𝜋𝑥𝜀0 𝜀r 𝜓𝜁2 ln[1 + exp(−𝜅ℎ)]
(1-2)
1⁄2
𝑒 2 𝑁A ∑ 103 𝐶i 𝑍i2
𝜅=(
)
𝜀0 𝜀r 𝑘𝑇
𝑉A = −𝐴
𝑥
24ℎ
(1-3)
ここで,𝑥 (m)は粒子径,𝜀0 (F・m–1)は真空中の誘電率,𝜀r (–)は媒液中の比誘電
率,𝜓𝜁 (V)は粒子のゼータ電位,ℎ (m)は粒子表面間距離,𝑒 (C)は電気素量,𝑁A
(mol–1)はアボガドロ定数,𝐶i (mol・L–1),𝑍i (–)はイオン i の濃度および価数,𝑘
(J・K–1)はボルツマン定数,𝑇 (K)はスラリーの絶対温度,𝐴 (J)はハマカー定数を
表している.
この全相互作用ポテンシャルと粒子間距離の関係を示したポテンシャルエネ
ルギー曲線は,スラリーの条件により様々に変化することがわかっており,その
一例を Fig. 1-3 に示した.図は,原点に固定された粒子表面に対して距離 ℎのと
ころにある粒子が持つ全相互作用ポテンシャルエネルギーを示しており,ポテ
ンシャル勾配が正の時,粒子間には引力が働き,ポテンシャル勾配が負の時,粒
子間には反発力が働くことを意味している.スラリーの安定性という観点では,
ポテンシャルの極大値(ポテンシャル障壁:𝑉max )を指標とする場合が多く,一
般的には 20 𝑘𝑇以上あると分散性が良いとされている[41].
この DLVO 理論は水系で比較的粒子濃度が低く,かつ添加剤が pH 調整剤等
の単純な化合物である場合にスラリーの分散状態をよく表すことができるとさ
れており[42–44],これに基づいた粒子分散状態の考察が行われてきた.一方で,
実際の材料製造プロセスでは種々の有機溶剤を分散媒とした非水系スラリーも
多く,このスラリーのほとんどの場合では液中粒子が帯電しないために DLVO
理論では粒子間相互作用を計算できなくなる.また,水系であっても添加剤が複
数種にわたって使用される場合が多く,これらすべてを考慮に入れることは困
難である.次項に示すように,粒子に高分子界面活性剤が吸着した際の粒子間相
互作用ポテンシャルの計算も提案されているもののその実用性は低く,現状で
はすべてのスラリーの粒子分散状態を完全に予測することはできていない.
6
第 1 章
Fig. 1-3 An example of potential curve calculated by the DLVO theory.
(ii) 高分子吸着により生じる力
高分子界面活性剤は種々の要因で液中の粒子に吸着し,分散効果をもたらす.
この分散機構については,高分子の立体障害(立体反発)に加え,界面活性剤が
電解質である場合には,高分子吸着層の重なりまたはイオン濃度の上昇を緩和
するための浸透圧に起因した静電反発力がある.しかしながら,この高分子界面
活性剤の添加量が少ない場合には,一つの高分子が複数粒子の空いている吸着
サイトに吸着が可能となるため,結果として粒子を架橋し凝集させてしまうこ
ともある.また,添加量が多い場合には液中での高分子濃度が上昇することに起
因する枯渇相互作用[45–47]や塩析効果[48]によって粒子が凝集することも確認
されている.したがって,所望の粒子分散状態を作るうえで高分子界面活性剤の
添加量を最適化することが必要である.
高分子界面活性剤が飽和吸着した場合については Fischer がその相互作用ポテ
ンシャルを提案しており,次式で求めることができるとしている[49].
4
ℎ 3
ℎ
𝑉M = 𝜋𝑘𝑇𝐵𝐶P2 (𝛿 − ) ( 𝑥 + 2𝛿 + )
3
2 2
2
(1-4)
ここで,𝐵 (m3・mol・kg–2)は吸着した高分子鎖/溶媒間の第二ビリアル係数,𝐶P
(m–3)は吸着層中のセグメント密度,𝛿 (m)は吸着層厚さを表している.
本式を用いれば,高分子界面活性剤が飽和吸着した際の粒子間相互作用ポテン
7
第 1 章
シャルが求められるものの,多様な高分子界面活性剤や溶媒に対してその吸着
層厚さ・第二ビリアル係数といった情報は簡単に得ることができない.また,同
じ高分子吸着量であってもその吸着形態は様々である[50–52]ことを考慮すると,
本式を実スラリーに対して適用することは困難である.
Fig. 1-4 Change of particle dispersion state by addition of dispersant; (a) insufficient, (b)
suitable, (c) excessive amount of dispersant. ...