Adoption and Diffusion of New Rice Technologies in Tanzania : Prospects and Challenges
概要
審
査
氏
の
結
名
果
の
マゲジ
要
旨
ユスタデュース
フランシス
サブサハラ・アフリカにおいてコメの需要は増大しており、コメはもっとも
重要な主食の地位を占めている。サブサハラ・アフリカ諸国では、コメ生産性
の向上を目的に、稲作技術を改善する取り組みが様々に行われてきた。しかし、
技術の普及はいまだ低いレベルにとどまっている。その理由として、稲作の資
金需要に応じた融資の欠如、コメ栽培の訓練機会の不足、稲作繁忙期における
労働力の不足などが先行研究により指摘されてきた。では、そうした制約が解
消されれば、農民は稲作技術を改善し、コメの生産性が向上するのであろうか。
本研究は、この問いについて、小口融資制度と機械化の観点から、回答を試み
たものである。
第一章では研究の背景と目的についてまとめ、続く第二章で、研究の対象と
したタンザニアの農業セクターの概況およびコメの生産と消費のトレンドにつ
いて述べた。第三章では、タンザニアにおいて今まで普及が図られてきた稲作
技術として、改良品種、化学肥料、改善栽培技術(畦の構築、圃場の均平化、
正条植えなど)を取り上げ、家計レベルのデータを使って採用状況を記述して
いる。これらの稲作技術の採用は 2009 年から 2018 年のおよそ 10 年間で徐々
に拡大していること、採用率は灌漑水田では高いものの、タンザニアで大半を
占める天水田では低い水準にとどまっていることを明らかにした。
第四章では、ランダム化比較試験(RCT)により、小口融資制度が灌漑稲作
に従事する農民の技術採用とコメ生産性に及ぼす効果を検証した。無作為に選
んだ農民に融資を受ける機会を提供し(融資を利用するかどうかは各農民が決
定)、機会の提供の効果(Intention-to-treat effect)および機会提供の結果、融
資を利用したことの効果(Local average treatment effect)をそれぞれ計測し
た。その結果、小口融資制度は、稲作技術の採用、稲作の単収や利潤、農家の
所得のいずれにも有意な効果は見いだせなかった。その理由を解明する目的で、
灌漑用水および技術普及サービスへのアクセスの良否に基づいて農家を 2 つの
グループに分け、分析を行った。その結果、灌漑用水と技術普及サービスを利
用しやすい農民は、融資を利用しなくても、推奨レベルに近い比較的大量の化
学肥料を使っていることが判明した。そのため、融資を受けても、化学肥料の
使用量は増えなかった。他方、灌漑用水や普及サービスを利用しにくい農民は、
通常ではあまり多くの化学肥料を使用しないが、融資を利用して化学肥料の投
入を大幅に増やした。にもかかわらず、コメの単収や利潤は増えていない。つ
まり、小口融資制度の効果が見いだせないのは、化学肥料の収量増加効果が低
いことが理由の一つである可能性がある。
第五章では、機械化が耕作地の拡大、土地の生産性、労働生産性に与える影
響について考察した。タンザニアの 2 つの地域で収集した、10 年間、3 時点の
家計レベルのパネルデータを使用し、水田の耕起における四輪トラクターと耕
運機の使用に焦点を当てた。多項ロジットモデルにより機械化選択の内生性を
考慮した分析の結果、四輪トラクターの使用は稲作面積と労働生産性の増加と
正の相関があること、また、耕運機の使用は化学肥料、殺虫剤および除草剤の
投入、水田の単収、および労働生産性と正の相関があることが判明した。さら
に機械の選択と灌漑水田の交差項を用いることにより、灌漑水田において、四
輪トラクターの使用は当該圃場での高い利潤や所得と相関し、耕運機の使用は
当該圃場における高いコメ生産量や生産額と相関することを示した。
以上の研究は、小口金融制度や機械化は、稲作における制約を解消すること
を示した。しかし、それらが稲作技術の改善やコメ生産性の向上に及ぼす効果
は限定的であり、灌漑などの稲作環境の整備が大幅なコメ生産性の向上に不可
欠であることを明らかにした。
これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、
審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。
見本
審
査
の
結
果
の
要
旨
氏
名
本郷 太郎
↑
(※履歴書の記載と同じにしてください。)
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、
審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。
※「文書ファイル(Word 等で作成したもの)」及び「PDF ファイル」を提出し
てください。