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青葉アルデヒドを利用したGABA高含有緑茶製造方法の検討および生理的メカニズムの解明

内田 一臣 東京農業大学

2022.09.01

概要

GABA(γアミノ酪酸)は血圧降下作用があり,人体の脳や脊髄などの中枢神経系において,主に抑制的な働きを持つ神経伝達物質として機能していることが知られている。GABA含量が多いギャバロン茶は睡眠を助けることが報告されており,ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスにおける大脳皮質のアポトーシスやオートファジーを緩和することが知られている。チャは開発途上国でも重要な換金作物の一つであり,簡易な方法でGABA含量の高い機能性チャを製造できれば,経済的にも資するところが大きいものと考えられる。
 これまでにチャのGABA含量を高めるために様々な方法が開発され,例えば,嫌気処理と好気処理の繰り返し,赤外線処理,マイクロ波処理,グルタミン酸ナトリウム溶液への浸漬処理などが有効であることが知られているが,一方でGABA含有量が高いギャバロン茶は半発酵茶に近くカテキン含量が低くなることなどが報告されている。本研究では,品質を低下させずに,安価かつ簡易な方法で,GABA含有量の多い緑茶を製造する方法について検討を行った。さらに,メタボローム解析およびトランスクリプトーム解析によってGABA蓄積のメカニズムについて検討を行った。

1. 青葉アルデヒドがチャの緑葉中GABA含量に及ぼす影響
 収穫した茶葉を異なる濃度(1,10,100ppm)および処理時間(1時間,3時間,6時間)で青葉アルデヒドに曝露し,茶葉のGABA含有量に与える影響を調査した。その結果,10ppm以上の濃度で3時間以上処理することにより,GABA含量を約8〜10倍に高めることができることが明らかになった。

2. 密封低温条件下における青葉アルデヒド処理がチャの緑葉中GABA含量に及ぼす影響
 簡易かつ大量製造を可能とするために,収穫直後の茶葉を大量に袋内に投入し,その後,対応量の青葉アルデヒドに曝露し,GABA含量の消長について検討した。結果,GABAの含量は増加せず,密封低温条件下における製造は好適ではないことが明らかとなった。褐変を防止するため低温条件下で処理を行ったが,酵素の活性が阻害され,GABAの生成が促進されなかったものと推察された。

3. 通風乾燥中における青葉アルデヒド処理がチャの緑葉中GABA含量に及ぼす影響
 密閉低温条件下でGABA生成が促進されなかったことから,採取直後の茶葉を大量に通風乾燥しながら青葉アルデヒドに曝露する製造方法を検討した。その結果,GABA含量を10倍近く増加させることができ,簡易かつ安全な方法において,大量の緑茶葉を処理する製造方法を見出すことができた。

4. 青葉アルデヒド処理で製造したGABA高含有な緑茶の香り成分の解析
 GABAが高含有となる好適な条件で製造した緑茶について,GC-MSおよびGC-Oにより香り成分の解析をおこなった。その結果,アルデヒド,エステルやケトン,酸が検出され,香調として豆臭(C9やC10のアルデヒド由来)の上に,熟したイチゴ感が香る通常の緑茶に近い雰囲気を醸すことが明らかとなった。青葉アルデヒド処理で製造することで,ギャバロン茶のような敬遠される匂いは発生せず,マイナス面での懸念が小さいことが確認された。

5. 青葉アルデヒド処理によるGABA含量向上メカニズムの解析
 青葉アルデヒド処理により製造した茶葉のメタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を行った。その結果,GABAの他に,αケトグルタル酸,ピルビン酸およびアラニン含量が増加し,グルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸が減少することが明らかとなり,グルタミン酸デカルボキシラーゼが活性化し,GABAトランスアミナーゼが不活性化することによりGABA生成が促進されることが明らかになった。

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