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大学・研究所にある論文を検索できる 「C1 inhibitor mitigates peritoneal injury in zymosan-induced peritonitis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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C1 inhibitor mitigates peritoneal injury in zymosan-induced peritonitis

尾関, 俊和 名古屋大学

2022.01.27

概要

【緒言】
 腹膜透析(PD)療法を長期的に継続するためには、腹膜の障害とそれに伴う機能障害を解決する必要がある。腹膜障害の原因としては、生体適合性のないPD液(PDF)への暴露、腹膜のPDFへの長期暴露、PD関連腹膜炎などが挙げられる。特に真菌性腹膜炎を発症したPD患者の予後は悪く、致命的な合併症として被嚢性腹膜硬化症(EPS)を発症する危険性がある。
 補体系は自然免疫において重要な役割を果たしており、補体活性化システムは古典的に、微生物や病原性免疫複合体などの異物から宿主を守るために迅速に働く。しかし、ひとたび補体系が過剰に働くと、宿主の様々な組織に予期せぬ炎症が引き起こされることもある。補体系は、腹膜のホメオスタシスを維持することが報告されている。PDFに曝された腹膜では、補体経路の活性化と調節のバランスが変化し、この補体系の調節異常が、動物モデルやヒトにおいて、線維化を伴う腹膜傷害の誘発につながる可能性がある。
 PD関連腹膜炎における補体制御に関して、我々はこれまでに、酵母の細胞壁成分であるザイモザンが、ラットモデルにおいて、補体活性化を伴う重度かつ長期の腹膜傷害を誘発すること、また、補体系の調節障害がEPSの初期段階として腹膜内のフィブリン滲出の過剰な活性化を促進する可能性があることを報告してきた。ここ数十年で、いくつかの抗補体剤が臨床的に使用できるようになり、市販のC1阻害剤(C1-INH;C1エラスターゼ阻害剤、Berinert, CSL Behring, Marburg, Germany)が遺伝性血管性浮腫(HAE)の治療薬として承認されている。本研究では、ザイモザン/擦過性腹膜炎のラットモデルにおいて、C1-INHの腹膜傷害予防効果を調べた。

【方法】
 0日目にラットの腹膜を擦過した後、ザイモザン懸濁液を腹腔内に注射し、その後1から4日目にかけてザイモザンとPDFを連日注入しザイモザン/擦過性腹膜炎モデルを作成、5日目に腹膜組織を採取し評価した。C1-INH 25単位の1日1回腹腔内投与を行う群(第2群)および1日2回腹腔内投与を行う群(第3群)、等張食塩水のみを投与する群(第1群)に分け効果を検討した。

【結果】
 組織所見において、C1-INH投与群(第2群および第3群)では、腹膜の厚さが対照群(第1群)と比較して有意に減少した。腹膜における炎症細胞の浸潤を調べたところ、好中球とマクロファージ(CD68陽性細胞)は、C1-INH投与群(第2群および第3群)では、対照群(第1群)に比べて有意に減少していた(Fig1A-H)。マクロファージの浸潤を評価したところ、iNOS陽性のM1マクロファージは、C1-INH投与群(第2群および第3群)では、対照群(第1群)に比べて有意に抑制された(Fig1I-L)。一方、CD163陽性のM2マクロファージの数は、1群、2群、3群ともに変化がなかった(Fig1M-P)。
 腹膜中皮の損傷をHBME-1染色で評価したところ、腹膜の陽性領域には3群間で有意な差はみられなかったが、C1-INH投与群(第2群、第3群)では、対照群(第1群)と比較して、腹膜中皮細胞が維持される傾向にあった(Fig2A-E)。腹膜上のフィブリノゲンの沈着とPTAHによるフィブリン層の評価においては、C1-INH投与の第2群と第3群では第1群に比べて有意に抑制されていたが(Fig2F-O)、腹膜の線維化をMasson's trichromeとPicrosirius redの両染色法で評価したところ、群間で違いは認められなかった(Fig2P-Y)。
 腹膜における補体活性化産物について、C3の沈着は、C1-INHを投与した群(第2群および第3群)では、対照群(第1群)に比べて有意に減少した(Fig3K-O)。一方、C5b-9の沈着量は、第2群と第3群では第1群に比べて有意ではないものの減少傾向がみられた(Fig3P-T)。C1qとC4の沈着量は各群間で有意な差はなかったが、C4の沈着量は第2群と第3群で減少する傾向にあった(Fig3A-J)。

【考察】
 本研究では、臨床で利用可能な抗補体剤であるC1-INHが、C3やC5b-9などの補体活性化産物の沈着を防ぐことができ、また、腹膜におけるフィブリン層の形成やフィブリノゲンの沈着という点で、腹膜傷害を減弱させることを示した。
 ザイモザンは真菌の細胞成分であり、主にオルタナティブ経路(AP)を活性化し、C5転換酵素として作用する強力なザイモザン-C3bBb複合体を生成することで生物学的効果を誘発する。しかし、最近、ザイモザンによる補体の活性化は、APだけでなく、レクチン経路(LP)と古典経路(CP)の両方を介して影響を受けることが報告された。本研究では、モデルラットの腹膜における補体成分の染色では、C3の強い染色に加えてC4が弱く、C1qはなかった。このような観点から、ザイモザン/擦過性腹膜炎モデルでは、APによる傷害を中心に、LPによる傷害も含めて、腹膜損傷が起こっている可能性がある。C1-INHは、もともとはCPの補体制御剤として発見されたが、C1-INHはLPのマンノース結合レクチン(MBL)-MBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)複合体と直接作用することが報告され、また、MASPに関連したプロファクターDの活性化を抑制することでAPを制御する可能性があること、C3bと結合し、C3bがB因子と結合することを阻害することで、APを不活化することができると報告されている。これらの報告は、C1-INHが補体系の3つの経路のすべてを制御しうることを示唆している。さらに、C1-INHは、補体系とも関連している、キニン-カリクレイン、線溶系および凝固系を制御するとされており、C1-INHの抗線溶性作用と抗凝固作用の両方が、フィブリノゲンの沈着の減少とフィブリン層の改善に寄与している可能性がある。これらの理由から、C1-INHは腹膜炎に伴う腹膜傷害を予防し、フィブリン形成を抑制するとともにAP、CP、LPを抑制する可能性がある。

【結語】
 今回の結果は、C1-INHが補体系の抑制を介して腹膜傷害の進行を抑制する可能性を示唆している。今回使用したC1-INHは市販されており、近い将来、ヒト腹膜炎への応用が期待される。特に真菌性腹膜炎に伴う腹膜傷害を保護し、その結果、EPSへの進行を防ぐことが期待される。

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