窒素の無機化・有機化・硝化
概要
窒素の無機化・有機化・硝化
著者
雑誌名
巻
号
ページ
発行年
URL
谷 昌幸
ニューカントリー
67
5
58-59
2020-05
http://id.nii.ac.jp/1588/00004639/
中 で の 形 態 に つ いて 説明 し
前 回は 窒 素 の 役 割 や 土 の
に 変 化するこ とを無機 化と
素 で あ る ア ン モ ニア 態 窒 素
の微 生 物 に よ っ て 無 機 態 窒
素の比 率である。
有機 物に 含まれる 炭 素と窒
に よる 分 解 の しやす さと、
り 、 窒 素 の 無 機 化 や 有機 化
て 利用 しに くい有機 物であ
性 で あ れば 、 微生 物 に と っ
が起こりにくい。
た 。窒 素 は土の 中 で 微生 物
H
有機
進め ば 、土の中 から 無機 態
増 える の に 対 し 、 有機 化 が
が 吸 収で き る 無 機 態 窒 素 が
る。無 機 化 が 進め ば 、 作 物
が 生 じ て い る よ う に見 え
い れ ば 、見 掛 け 上 は 無 機 化
機 化が 有機 化より 優 先して
り 、 そ の バ ラ ン スの 中 で 無
有機 化 は 同 時 に 起 こ っ て お
土の中で窒素の無機 化と
土の中 に 存 在す る 有機 態
ンな ど は難分 解 性 であ る 。
る の に 対 し 、 脂質 や リ グ ニ
粉は微生 物に 易分 解 性 で あ
な 有 機 物 の 中 で 、 糖や で ん
物遺 体に 含まれる さまざ ま
で も 説 明 し た が 、 例え ば 植
決ま る 。2017 年 5月 号
しにくいか
(
難
分 解 性 )で
す い か ( 易 分 解 性 )、 分 解
が 微生 物に とっ て 分 解 しや
れ ば 、微生 物はど ち ら も 余
イ スの 比 率 が ち ょう ど 良 け
カ レー が 窒 素 。カ レ! と ラ
考え る と 、 ラ イ ス が 炭 素 、
の で あ る 。 カ レー ラ イ スで
素 は「 おかず 」 の よう な も
物 の 炭 素 は 「 ご は ん 」、 窒
土の 微生 物に とっ て 有機
は C/ N ( シ l エ ヌ ) 比 と
含 ま れ る 炭素 と 窒 素 の 比 率
な 影 響を 与 える 。 有 機 物 に
違いが有機 物の分 解 に 大き
無 機 化進 めば 作 物 が
吸収 可能 な無 機 態 増 加
中に酸素が十分にある環 境
畑や 草 地 の よ う に 、 土 の
つ の イ オンに は大き な 違い
い無機 態窒素だ が、こ の2
ず れ も 吸 収し て 利 用 し や す
態窒素と硝 酸態窒素は、 い
に 変 化する際、水素イオン
ニウ ム イ オ ン が 硝 酸 イ オ ン
ま た 、 硝 化に より ア ンモ
き 起 こ す 可 能性 が あ る 。
に 流れ込み、水質 汚染を引
う と 、 雨が 降 っ て 硝 酸 態 窒
播で 早 め に 肥 料 を ま い ち ゃ
窒 素 が 入っ て いる から 、 直
て ん菜 用 の 肥 料 に は 硝 酸 態
て い る んだ よ ね 。 で も さ 、
んな て ん菜 用 の 肥 料 を 使 っ
ンを 引き 付 け
おり 、 陽 イ オ
電 ) を 帯び て
の電 気(負荷
面に マ イ ナ ス
を 知 り 、 必 要以 上 の 窒 素 を
変 化 が 士 の 中 で 起 とる こ と
は 、 こ の よう な 窒 素 の 形 態
窒 素 で も あ る。 大切 な の
作 物 が 吸 収し や す い 無 機 態
自然 の 摂 理、 硝 酸 イ オ ン は
が 生 き て い く た め に 必 要な
う ?」
思う んだ け ど 、 先 生 ど う 思
わ っ て 吸 える よ う に な る と
こ り始めて 硝 酸 態窒素に 変
ち ょう ど 硝 酸 化成 作 用 も 起
菜 が 生 育 を 始 め る頃 に 、
「 おっ しゃる通 りです」
とができ る。
て 保 持するこ
と し か答 え よ う が な い ほ
ど 、 完壁 な 説 明 で あ る 。 窒
施 肥 す る の を 避 け 、 家畜 糞
尿を 施 用 した場合 に は窒素
素の形態変化を知ること
つまり、アン
モ ニウ ム イ オ
施 肥を減ら すこ とである。
ある。
図
つ た め に 必 要不 可 欠な の で
は 、 作 物 が 必 要な 窒 素 を 適
ンは陽 イ オン
な ので負荷電
切 に 与 えて 最 適 な 生 育 を 保
に 保 持される
十 勝 地域のとあ る生 産者
直播 てん菜 の肥 料は
てん菜 用より 小麦 用?
のに 対し、硝
酸 イ オンは陰
58
2020.5
ー
呼 ぶ 。 簡単 に 言 えば
物が無機 物に 変 化す る
炭素 と窒 素 の比 率 、
か
分解 しや す さに影 響
土に 入れ る 有機 物が 易分
窒素が減っ て 作 物が窒素を
窒 素 を 含 む 物 質 で 比べ る
す こ と な く 食べ る 。 ラ イ ス
(
窒
素 )の ち ょう ど 良
このライス
で は、 土 の 中 の 微 生 物 に
が あ り 、 ア ン モ ニウ ム イ オ
( 山口) が 生 じ る 。 そ の た
素 が 流 れ ち ゃ っ て 、 結 果的
いやあ、 最近 にな っ て
「
て しまい、 そ の ラ イ スを 食
よ っ て ア ン モ ニア 態 窒 素 が
ン は プ ラ ス の 電 気 を 帯び た
め 、 土の酸 性 化を 引き 起 こ
る んだ よ ね 。 だ っ た ら さ 、
に 窒素が途中で足 りな くな
て ん菜 の 直 播 を や っ て る 生
べ るために 土の中に あ っ た
硝 酸態窒素 に 変 化する。こ
陽 イ オン、 硝 酸 イ オンはマ
す こ と に な る(図 2 )
。水
小麦 用 の ア ン モ ニア 態 窒 素
産 者 が 増 えて る け ど さ 、 み
カ レ l( 窒 素 ) が 微 生 物 に
の変 化を 硝 酸化成 作 用 (硝
イ ナ ス の 電 気 を 帯び た 陰 イ
あ たかも 硝 化や硝 酸イ オン
質 汚染や酸性化と聞くと、
最 終 的 に は 地 下水 や 河 川水
取り 込ま れ て 有機 化され る
化 ) と 呼 ぶ ( 図 2 )。 硝 化
オンで あ る 。
溶 け た ま ま 下層 へ移 動し 、
(
。
1下 )
図
は ア ン モ ニア 酸 化 細 菌 と 亜
が 入っ た肥料 を ま いて おけ
作 物 に と っ て ア ン モ ニア
つ ま り C/ N比 が 低 い 易
硝 酸 酸 化 細 菌と い う2種類
が 悪 い よ う に 聞 こ える か も
起 こ して い る に す ぎな い 。
分 解 性 有機 物を 土に 入れた
う に、 土の中に 含まれる粘
ばさ、 地温 が 上が っ て て ん
酸性化
水質汚染
い と ラ イ ス( 炭 素 ) が 余 っ
場合 に は 、無機 態 窒 素 を 放
の 細 菌 に よ っ て生 じ る。 細
しれ な い が 、 硝 化は微生 物
”
アンモニア態窒素 ー→硝 酸態窒素 白
.
N0 3 NH 4+
硝化
水素イオン
H+
ω年 3月 号で 説明 し た よ
出する ので窒素肥料 として
土鉱 物や腐 植 物質 はその表
一一一...Jllll
ニュ ー カントリ
に よっ て さま ざ ま な 形 態 に
変 化 し て お り 、 そ の 形 態変
と が 無 機 化 で あ る。 反 対
有機 態 窒 素 を 含 む 代 表的
微 生物 が利 用しや す い
有 機 物 は 易 分解 性
化が 作 物に よる 窒素 の 吸 収
に 、無機 態窒素であ る ア ン
な 物 質 が タ ン パ ク質 や ア ミ
こ
は も ち ろ ん 、 農業 を 取 り 巻
モ ニア 態 窒 素 や 硝 酸 態 窒 素
N
く 周 辺 の 環 境に も 大 き な 影
吸 収で き な く な る 。 そ の た
と 、 タ ン パ ク質 は 易 分 解 性
が 少な く カ レー が 多 過ぎ れ
解 性 であ る 場合 、そ れ に 含
め無機 化と有機 化のいずれ
で 、 腐 植 物質 は難分 解 性 で
ば カ レー が 余る し 、 ラ イ ス
ノ酸 で あ る 。 有 機 態 窒 素 が
も 作 物の生 育 に 大き く影 響
あ る 。 ま た 、 家畜 糞 尿 や 生
が 多 過ぎて カ レー が 少な け
が 土の 中 の 微生 物に 取り 込
を 及ぼ す こ と に な る 。
堆肥 な ど は タ ン パ ク 質 や 尿
れ ば ラ イ スが 余 る 。
響 を 及 ぼ す 。 今 回は 土 の 中
土の 中 の 微生 物に よる 窒
素が含まれるため易分解性
レI
ま れ る 炭素 と 窒 素 の 比 率 の
素 の 無 機 化 と 有機 化 は 、 土
だ が 、 堆肥 は 発 酵 中 に タ ン
土の 中 の 微生 物に 利 用 され
の 温 度や凶 な ど さま ざ ま な
パ ク 質 が 使 わ れ 、 発 酵後 は
い 比 率 が C / N比 叩 1m
ま れ 、 有機 態 窒素 に 変 化す
要因 に 影 響を 受 け て 変 化 す
腐 植 物質 が多 く含まれる た
で、 ラ イ スが カ レー より 多
に あ る窒素の無機 化、 有機
る が 、 特に 大 き な 影 響を 及
め難分 解性であ る。 難分解
と て ん菜 の 直 播 栽 培 圃 場 を
る こ とを 有機 化と呼 ぶ 。
有機物に含まれる窒素
ぼ す の は 、 有機 物の 微生 物
イオンなので保持されな
見 に 行っ た 時の 話 で あ る 。
化 、硝 酸 化成 作 用 ( 硝 化)
( 有機 態 窒素)が、土の中
ン モ ニウ ム イ オ ン を 硝 酸 イ
い 。そ の 結 果、 作 物 に 吸 収
生 産 者 が とう 語 っ た 。
る かどう かは、まず有機 物
比 が高 い場合 に は、土の 中
オ ン に 変 える こ と で エ ネル
されなかった硝酸イオン
に つ いて 詳 しく解 説す る 。
い と 同 却以 上 、 ラ イ ス が カ
に あ っ た窒 素 が 微生 物に 取
ギー を つ く り 出し て おり 、
は 、降水があ る と土の水に
呼ばれる。
レー よ り 少な い と 同 日以 下
り込まれるので、むしろ 窒
生 き る た め に 必 要な 反 応を
(
炭
素)とカ
と な る 。 C/ N 比 が 低 い と
素が不足 することに な る。
まさゆき
硝 酸 イ オ ン は降 水 で
水 質汚 染起 こす 恐れ
昌幸
たに
菌は 、 酸 素 が あ る 状 態 で ア
吸収/人吸収
上 )。 一方 、 C / N 比 が 高
帯広畜産大学
グロ ー バルアグロメディシン
研究センタ ー 教授
NI
�I::う
(C/N 比三 24)
無機化
:�:c:c う N
有機化
の 効 果 が 高 く 、 逆 に C/ N
た窒素が放 出される ( 図 1
まい、 土の中に 無機 化され
カ レl( 窒 素 )が 余っ て し
土の中での形態変化を知ることは適切な施肥に不可欠
C-C-C-C 、
C-C-C-CすNI 窒素の取り込
み
C-C-C-C-C-C-C-N
C-C-C C /
I陣=N
C-C-C-C-C-C-C-C E弓
C-C C C-C-C-C-C-C
窒素が少ない有機物
窒素の放出
(C/N 比= 6)
=キN N
N-C-C-C-C-C-C-C-N
C-C-C-C-C-C-C-C-N==今
C-C-C-C-C-C-C-C-C-N
江口う N
窒素が多い有機物
2020.5
ー
ニュ ー カントリ
59
1995年筑波大学大学院農学研究科
修了。 博士(農学)。 同年帯広畜
産大学畜産学部助手、 2003年同大
助教授、 15年から現職。 1968年大
阪市生まれ。 ...