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大学・研究所にある論文を検索できる 「触媒制御による化学およびエナンチオ選択的水酸基シリル化に関する研究:立体障害に依らない反応制御」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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触媒制御による化学およびエナンチオ選択的水酸基シリル化に関する研究:立体障害に依らない反応制御

橋本, 悠 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23833

2022.03.23

概要

水酸基のシリル基は多段階合成に欠かせない保護法として、有機合成化学における基盤反応の一つである。これは、シリル基の嵩高さを利用し立体的環境を識別した特定の水酸基への選択的シリル基導入や、他の保護基と区別した選択的脱保護が可能なためである。一方、複数の水酸基共存下で、本来反応性の低い水酸基へのシリル基の選択的導入は未開拓分野である。これは、シリル基の選択的導入法開発が立体障害に基づいて進展してきたことに由来する。一方、所属研究室では4-ピロリジノピリジン(PPY)を母骨格とする分子認識型求核触媒を開発し、基質本来の反応性に依存しない触媒制御型位置選択的アシル化を報告してきた。著者は、この触媒による分子認識戦略をシリル化に展開することで、立体障害に依らない未踏領域の選択性制御を目指し研究を行った。

 第二章では、無保護ピラノシド類の位置選択的シリル化に取り組んだ。糖は分子内に多数の水酸基を有し、その修飾位置によって多様性に富む化合物群であるため、糖鎖の効率的精密合成を志向し、水酸基の位置選択的官能基化法が盛んに研究されている。シリル基は糖の保護基としても汎用されるが、糖の第一級水酸基存在下、第二級水酸基選択的シリル化を達成した例は皆無である。実際に、水酸基シリル化の汎用触媒であるDMAP存在下、無保護グルコピラノシドのシリル化を行うと、完全な選択性で6位第一級水酸基のシリル化が進行する。一方、分子認識型PPY触媒を用いる系では、6位第一級水酸基に優先して、3位第二級水酸基の化学選択的シリル化が進行することを見出した。本法は、無保護グルコピラノシドから一段階で3位モノシリル化体を主生成物として得た初の例である。

 第三、四章では分子夾雑系における基質選択的反応を志向して、反応性の類似した第一級アルコールのシリル化による識別に取り組んだ。様々な炭素鎖長を有する1,n-アミノアルコール誘導体のシリル化における相対反応速度を比較した。その結果、DMAP触媒反応では炭素鎖長が長くなるにつれて反応性が増大する傾向が見られた一方で、分子認識型PPY触媒による反応では1,5-アミノアルコール誘導体が顕著に高い反応性を示した。前者の結果は水酸基近傍の立体障害を反映した基質依存型の選択性であるのに対し、後者の結果はアミノアルコール誘導体の鎖長識別(官能基間距離識別)を伴った触媒制御型の選択性であると考えられる。一方、1,5-アミノアルコール誘導体と類似の炭素鎖長を持つ種々の5位置換-1-ペンタノール誘導体との競争的シリル化を行ったところ、分子認識型PPY触媒下では前者が後者に比べて7-31倍の速度でシリル化されることが分かった。この結果は、本触媒が反応性水酸基から遠隔位の官能基を識別して、加速的シリル化を進行させることを示している。

 第五章では、分子認識型PPY触媒を用い、σ-対称ジオールのシリル化による不斉非対称化に取り組んだ。1,3-、1,5-、1,7-、および、1,9-ジオール誘導体の不斉非対称化を検討した結果、1,7-ジオール誘導体を基質とした場合に特異的に高い効率(95%ee)で反応が進行した。これは、第三章で示したアミノアルコール誘導体の鎖長識別シリル化に呼応する結果であり、分子認識型PPY触媒の官能基間距離認識を伴った高度な遠隔位不斉識別能を示している。一方、既知法ではジオール類のシリル化による不斉非対称化は水酸基間の距離が短い程有利で、1,3-ジオール類が高度な不斉識別を起こせる限界であり、本法とは好対照を成す。これは従来法が立体障害を基軸とした反応制御に基づく不斉誘導によるものであるのに対し、本法が触媒による精密分子認識に由来するためと考えている。

 高度な触媒制御型化学およびエナンチオ選択的シリル化を達成した。これらは本触媒による、反応点水酸基から遠隔位にある官能基の精密識別に基づくものであり、従来法の立体障害に依存した反応制御とは一線を画する手法を提示した。

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