リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「酸化カルシウム顆粒の水和膨張を利用した炭酸アパタイト完全連通多孔体ブロックの創製」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

酸化カルシウム顆粒の水和膨張を利用した炭酸アパタイト完全連通多孔体ブロックの創製

田中, 啓喬 TANAKA, Keisuke タナカ, ケイスケ 九州大学

2022.03.23

概要

骨無機質の主成分は炭酸基を4-8重量%含有した炭酸アパタイト(CO3Ap)である。溶解析出反応にて人工的に合成されたCO3Ap骨補填材は優れた骨伝導性および骨置換性を有しており、顆粒タイプのCO3Ap骨補填材が歯科領域で良好な成績を残している。一方で、大規模骨欠損再建に対しては顆粒タイプよりもブロックタイプの骨補填材の方が有用であることから、CO3Apブロックの開発が期待されている。CO3Apブロックは表面からのみ徐々に骨に置換されるため、迅速な骨置換には材料内部からも骨置換を促進することが重要となる。つまり、CO3Apブロックに三次元完全連通気孔を導入することが有効である。これまでの研究から、細胞、血管侵入を促進する直径50µm以上のマクロ気孔と液体浸透や細胞接着に関与する直径10µm以下のミクロ気孔がCO3Apブロックの骨置換制御に影響を与えると考えられる。先行研究では、α型リン酸三カルシウム(αTCP)三次元完全連通多孔体ブロックを前駆体としてCO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックが調製されているが、その骨形成、骨置換は緩慢であった。これは前駆体のαTCPが水とも反応した結果、骨置換されにくいカルシウム欠損型ハイドロキシアパタイトが競合して析出したためである。一方で、炭酸カルシウム(CaCO3)は溶解析出反応においてCO3Ap以外の安定相を析出しないことから、純粋なCO3Apブロックの前駆体として最適であると考えられる。そこで、本研究では酸化カルシウム(CaO)の水和膨張と炭酸化を利用して調製したCaCO3三次元完全連通多孔体ブロックを前駆体とし、CO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックを創製し、マクロ-ミクロ気孔の影響を検討することとした。

 まず、マクロ気孔がCO3Apブロックの骨形成、骨置換に与える影響について検討した。CaO顆粒を鋳型に充填して密閉した状態で25°C、100%湿潤化で二酸化炭素と7日間反応させると、顆粒が連結した粟おこし状のCaCO3ブロックが得られた。得られたCaCO3ブロックを80°Cの1mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液に28日間浸漬したところ、粉末X線回折(XRD)およびフーリエ赤外線分光法(FTIR)からCO3Apブロックへと組成変換されていることが確認できた。走査型電子顕微鏡(SEM)およびマイクロCTを用いて形態学的評価を行ったところ、得られたCO3Apブロックが三次元的に完全連通したマクロ気孔を有していることが確認された。また、顆粒の充填量を大きくするにつれてブロックの機械的強度は向上し、気孔率は減少することが確認できた。続いて、得られたCO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックと、対照群としてマクロ気孔を持たないCO3Ap緻密体ブロックを兎大腿骨に埋入し、4、8週後の骨形成、骨置換評価を行った。ヘマトキシリンエオシン(HE)染色切片からCO3Ap緻密体ブロックでは骨置換がブロック表面から徐々に進行していることが確認できた。一方で、CO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックでは埋入後、僅か4週後でブロック内部での骨形成が認められた。また、マクロ気孔内には骨芽細胞、破骨細胞、新生血管の侵入が確認され、マクロ気孔内での活発な骨リモデリングが示唆された。また、本手法により調製されたCO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックはαTCPを前駆体として調製したCO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックと比較して、早期に新しい骨に置換されることがわかった。これらの結果から酸化カルシウム顆粒の水和膨張を利用して調製した炭酸アパタイト三次元完全連通多孔体ブロックは早期の骨置換が可能であり、大規模骨欠損再建に有用なブロック骨補填材となる可能性が示唆された。

 次に、ミクロ気孔がCO3Apブロックの骨形成、骨置換に及ぼす影響を検討した。ミクロ気孔は結晶間の空隙であることから、CO3Apの調製温度を制御し、結晶成長を制御することでミクロ気孔サイズを制御できると考えた。しかし、CaO顆粒を100%湿潤下で水和膨張、炭酸化させて調製したCaCO3多孔体ブロックはカルサイトという安定相のCaCO3であり、溶解度が低いため、低温では炭酸アパタイトへと変換することはできなかった。そこで、我々は準安定相のCaCO3で、溶解度の高いバテライトを前駆体として用いることで、低温でのCO3Ap多孔体ブロックの調製が可能になると考えた。CaO顆粒を鋳型に充填して密閉した状態で10°Cで水蒸気に7日間曝露し、水和膨張させることで、粟おこし状の水酸化カルシウム多孔体ブロックを調製した。得られたブロックを4°C、90%メタノール下で二酸化炭素と7日間反応させたところ、水酸化カルシウム多孔体ブロックはバテライト多孔体ブロックに変換された。続いて、バテライト多孔体ブロックを37、60、80℃のリン酸水素二ナトリウム溶液に5日間浸漬したところ、XRDおよびFTIRからすべての温度でCO3Ap多孔体ブロックへと組成変換されていることが確認できた。SEM観察では調製温度が高くなるにつれて、CO3Ap結晶のサイズが大きくなっている傾向が見られた。水銀圧入法により気孔容積分析を行ったところ、CO3Ap多孔体ブロックのマクロ気孔には調製温度による差はなかったが、ミクロ気孔サイズは調製温度が高くなるにつれて大きくなっていることが確認できた。次に、異なるミクロ気孔を有するCO3Ap多孔体ブロックを兎大腿骨に埋入し、4、12週後のHE染色切片から骨形成、骨置換評価を行った。埋入4週後の時点で全てのCO3Ap多孔体ブロックのマクロ気孔内に骨芽細胞、破骨細胞、新生血管の侵入が確認され、活発な骨リモデリングが確認できた。また、埋入12週後では、ミクロ気孔量の増大に伴いCO3Ap多孔体ブロックが早期に骨置換されることが明らかになった。これらの結果より、溶解析出反応の調製温度制御がCO3Ap多孔体ブロックのミクロ気孔制御に有用であり、また、ミクロ気孔サイズが骨置換速度に影響を与えることが明らかになった。

 以上より、マクロ気孔とミクロ気孔がCO3Apブロックの骨置換制御に重要であることが明らかとなり、CaO顆粒の水和膨張を利用することでマクロな三次元完全連通気孔を有するCO3Apブロックの調製に成功し、また、調製温度を変えることでCO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックのミクロ気孔を制御できることを示した。CO3Ap三次元完全連通多孔体ブロックのマクロ気孔とミクロ気孔を制御することで、ブロックの骨置換速度を症例に合わせ最適化することが可能であり、より効果的な骨造成が行えることが期待される。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る