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大学・研究所にある論文を検索できる 「膵癌における腹腔洗浄液を用いたリキッドバイオプシーの臨床的有用性の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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膵癌における腹腔洗浄液を用いたリキッドバイオプシーの臨床的有用性の検討

千葉 和治 東北大学

2021.03.25

概要

背景:膵癌は予後不良な癌である.その原因として,早期発見の困難性や術後の高率な転移が挙げられる.膵癌に対する集学的治療成績の向上には正確な病期分類に基づいた治療戦略が必須であるが,特に腹膜転移は画像上診断が困難である.本研究では,膵癌症例の腹腔洗浄細胞液中腫瘍由来DNAを検出し,腹腔内微小転移の検出や腹膜再発の予測,治療標的候補の検索を目的としたリキッドバイオプシーの臨床的有用性を検証した.

 方法:2018年4月から2020年5月までの期間に,膵癌症例149例から腹腔洗浄液を採取し,腹膜転移陽性(P1),肝転移陽性(H1),腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)の有無を検索した.再発症例や低品質例を除外した132例(188サンプル)を対象に,腫瘍由来DNAであるKRAS遺伝子変異をDroplet-digital PCR(ddPCR)を用いて検出し,変異アレル頻度が1.0%以上のサンプルは次世代シークエンス(NGS)を用いて膵癌関連遺伝子変異を検索した.また対応ある血液を用い,腹腔洗浄液中腫瘍由来DNAの陽性率およびアレル頻度を,腹腔内転移所見や腫瘍マーカーとの関連性で比較した.さらに,腹腔洗浄液中の腫瘍由来DNAの再発・予後との関連を生存解析を行い解析した.

 結果:対象の腹腔洗浄液188サンプル中,25サンプル(13.3%)からKRAS遺伝子変異が検出された.NGSを行った14例では全例からKRAS遺伝子変異が検出され,12例(85.7%)では腹腔内転移所見を認め,8例(66.7%)ではKRAS遺伝子変異の他に膵癌関連遺伝子変異(TP53,SMAD4,CDKN2A,GNAS)も検出された.腹腔洗浄液の腫瘍マーカーは血中と比較して,腹腔内転移所見とより強い関連を認め,高値例は腹腔洗浄液中腫瘍由来DNAの陽性率が高かった.腹腔洗浄液中の腫瘍由来DNAの陽性率は,P1症例で81.8%と血中よりも有意に高率であり(P<0.001),アレル頻度はP1やCY1の所見に伴って血中より高値を示した(P0CY1,P=0.084.P1CY1,P=0.031).同一症例(n=3)のNGSの解析では,2例で腹腔洗浄液と血中から同一のバリアントを有するKRAS遺伝子変異とTP53変異が検出され,1例ではTP53遺伝子変異が血中のみで検出された.前治療歴のない55例を対象に予後因子解析を行うと,腹腔洗浄液中の腫瘍由来DNAが独立した予後不良因子であった(HR3.607,95%CI1.165–11.164,P=0.029).

 考察:閉鎖空間である腹腔内から採取した洗浄液中には腫瘍由来DNAが濃縮されており,特にP1/CY1陽性膵癌では血中より高率に検出された.腹腔洗浄液中の腫瘍マーカーは腫瘍由来DNAを含むサンプルを選択・抽出できる可能性が示唆された.NGS解析では腹腔洗浄液からKRAS遺伝子をはじめとする複数の膵癌関連遺伝子変異が検出可能であり,一部は血中と異なる変異パターンを示したことから,転移部位別,つまり腹膜転移に特異的なゲノム異常を検出できる可能性が示唆された.

 結語:本研究は切除を企図した膵癌症例に対して腹腔洗浄液を用いたリキッドバイオプシー行い,ゲノム解析の有用性を示した初めての報告であり,将来的な腹膜転移に特化した個別化・精密化医療という新たな集学的治療戦略の臨床実装へ向けた橋渡しとなりうるものであり,臨床的有用性,応用性を強く示唆するものである.

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