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大学・研究所にある論文を検索できる 「Pseudo-sawtooth pattern on amplitude-integrated electroencephalography in neonatal hypoxic–ischemic encephalopathy」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Pseudo-sawtooth pattern on amplitude-integrated electroencephalography in neonatal hypoxic–ischemic encephalopathy

Tanaka, Masaharu 田中, 雅大 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
新生児低酸素性虚血性脳症(Hypoxic–Ischemic Encephalopathy: HIE)は出生時の脳への血流遮断により脳神経細胞が低酸素および低血糖に陥ることで引き起こされる脳障害で、新生児発作のハイリスクであるだけでなく脳性麻痺・てんかん・精神運動発達障害等の恒久的な脳障害へ発展しうる重篤な疾患である。 amplitude-integrated electroencephalography (aEEG) は通常脳波にフィルタをかけ 2~15Hz の周波数成分を抽出した後に基準線で折り返し、頂点をなだらかに結び最後に時間軸を圧縮することで得られるトレンドであり、新生児発作の有無と脳障害の程度を簡便に評価できる脳機能モニタリングツールとして新生児および成人の集中治療分野において広く使用されている。一般的に aEEG の背景活動は、正常から最重度の脳機能障害に向かって、 Continuous Normal Voltage (CNV)、Discontinuous Normal Voltage (DNV)、Burst Suppression (BS)、Continuous Low Voltage (CLV)、Flat Trace (FT) の 5 つのパターンに分類され、生後 72 時間までの背景活動の変化が HIE の神経発達予後予測に有用であるとの複数の報告がなされている。また、aEEG 上で波形の上縁と下縁の上昇は新生児発作を表し、その上昇が繰り返し見られる鋸歯状(sawtooth)パターンは頻回の発作を表すとされる。我々は HIE の新生児において aEEG において鋸歯状パターンを示すものの通常脳波では発作時脳波所見を示さない新しい背景活動パターンを発見した。そのパターンを pseudo-sawtooth パターン(PST パターン)と名付け、その臨床的意義を検討することを本研究の目的とした。

【対象と方法】
2012 年 1 月から 2017 年 12 月に HIE と診断され低体温療法を受けた新生児 46 例を対象とした。aEEG 上で鋸歯状の波形を示すが、通常脳波では発作時変化を認めないパターンを PST パターンと定義し(図 1)、aEEG と通常脳波を後方視的に評価しその経時的変化と新生児期の頭部 MRI 所見、12 から 18 か月時点での神経発達予後との関連を検討した。また、生後 12、24、48 時間での aEEG の背景活動パターンと予後との関連を評価した。頭部 MRI の評価は National Institute of Child Health and Human Development (NICHD) の分類を用い、神経発達予後の評価は発達遅滞、脳性麻痺、てんかんの有無で評価した。発達指数は新版 K 式発達検査を用いて評価し 70 未満を発達遅滞、35 未満を重度発達遅滞とした。脳性麻痺の評価は粗大運動機能分類システム(Gross Motor Function classification system: GMFCS)を用い、GMFCS スコア 1、2 を脳性麻痺、3 以上を重度脳性麻痺とした。

【結果】
対象 46 例の平均在胎週数(±SD)は 39.7±1.4 週、平均出生体重(±SD)は 2,996 ±399g、男児が 27 例(59%)であった(表 1)。46 例中 37 例で、12-18 か月で神経学的評価を施行できた。

PST パターンは 46 例中 6 例(13%)に、出生時の脳ダメージからの回復期に一過性に見られた。また、46 例は aEEG の背景活動の変化により 3 群に分けられ、出生から 48 時間の時点においても最重度の FT パターンを示した群(グループ A; 3 例)、経過中に PST パターンが見られた群(グループ B; 3 例)、PST パターンを示さず背景活動の改善が見られた群(グループ C;37 例)とした。グループ A の 3 例は全例頭部 MRIにおいて NICHD 分類 2B 以上の重度脳障害が見られ、生後 12-18 か月時点で重度発達遅滞、重度脳性麻痺を認めた。そのうち 1 例は 15 か月時に呼吸器感染により死亡した。グループ B の 6 例は全例新生児期の頭部 MRI に異常所見を認め、6 例中 3 例が重度発達遅滞、重度脳性麻痺であり、1 例で軽度の発達遅滞、1 例で軽度の脳性麻痺を認めた。うち 1 名は生後 23 か月で呼吸器感染により死亡した。グループ C の 37 例のうち 25 例(68%)は新生児期の MRI で異常所見を示さず、12-18 か月時点での神経発達評価を行えた 29 例は全例予後良好であった(図 2)。

FT/CLV/PST を異常と定義すると、FT/CLV/PST/BS を異常とした時と比較し、生後 12、24、48 時間での aEEG 背景脳波異常の新生児期の MRI 異常、12 から 18 か月時点での神経発達予後不良に対する陽性的中率、陰性的中率は生後 12 時間から高値であった (表2)。

【考察】
従来、aEEG における鋸歯状パターンは頻回の発作を表すと広く認識されてきた。しかし、今回我々が報告した PST パターンは、発作ではなく、脳虚血によるダメージからの回復過程において一過性に見られる脳機能の強い抑制を示すパターンであった。 PST パターンの神経生理学的な機序は現時点では明らかではないが、仮説として、ATP枯渇による局所の神経細胞の周期的な活動に伴う興奮性/抑制性バランスの破綻や、障害された皮質の代わりに皮質下のリズム活動が投射していることが考えうる。

一般的に、HIE 児における aEEG の背景活動の変化は脳障害の重症度と相関し、生後数日の背景活動の変化はその後の神経発達予後と関連するとされている。近年の報告では、生後 24 時間から 36 時間での背景活動と比較し、48 時間から 72 時間での背景活動の方が神経発達予後予測に有用であると報告されており、その原因として低体温療法の効果が考えられている。本研究においても、生後 24 時間までの背景活動が BS パターンを呈していても予後良好な児があるため、BS パターンは生後早期の予後予測に必ずしも有用ではないことが示された。一方、PST パターンは脳障害の回復過程において生後約 24 時間以内に BS パターンに先行してみられるパターンであることから、生後早期の予後予測に有用な所見と考えられた。

本研究の長所は、全例統一したプロトコールを用いて低体温療法を施行した点、また多チャンネルの aEEG と通常脳波を用いて詳細な脳評価を行った点にある。一方で短所は、単一施設での比較的小数例の検討であったことである。今後は、多施設での評価や基礎研究を含めた病態の解明に向けての更なる検討が必要である。

【結語】
PST パターンは過去に報告のない脳機能の抑制を示す背景脳波活動であり、予後予測にも有用なパターンであると考えられた。また、PST パターンは aEEG 上で新生児発作を示す鋸歯状パターンと酷似するため、このパターンの存在を認識することは、不必要な治療を避けるためにも重要である。

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